国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは2018年9月10日からスイス・ジュネーブで開催される第39会期人権理事会に向けて「イスラエルとパレスチナ占領地においての暴行の深刻化に深い懸念を表明する」という声明を提出しました。
PDFの原文(英語)はこちらよりダウンロードできます。また、下記に声明の翻訳文をご覧になれます。
東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウはパレスチナ占領地のガザ地区とイスラエルの間にてイスラエル国防軍によるパレスチナ市民の殺害、そしてハマスによるロケットがイスラエル南部のコミュニティーに向けて撃たれていることを含む暴力行為が近日深刻化していることに対して深い懸念を表明する。
イスラエル当局は国際人権法や国際人道法を遵守する義務のもと直ちにパレスチナ人の抗議者にむけての過度な武力行使を終えるべきである。またイスラエル当局は過度な武力行使に責任を負い、被害者へ救済を施し、これから起こるかもしれない過度な武力行使を阻止しなければない。
ガザの政治指導者はイスラエルの市民にむけての戦闘をやめ、エジプトと国際連合によって仲介された持続性のある停戦協定にむけて促進していかなくてはならない。
1.2018年3月より「帰還の大行進」とも期間が重なったことにより、100人以上のパレスチナ人がガザ地区とイスラエルの境界線における分離壁で殺されている。
2018年3月30日より在イスラエルアメリカ大使館のエルサレムへの移転と長く続いているガザ封鎖に対して、パレスチナ人はパレスチナ難民とその子孫が今はイスラエルとなってしまった故郷に帰還する権利を求め抗議を続けている。
パレスチナのデモ参加者は甚だしく不相応な武力行使をイスラエル国防軍によりうけ、結果的に100人以上のパレスチナ人が死亡、1000人以上が負傷した。[1] 5月14日には15人中10人の国際連合安全保障理事会が国際連合事務総長へ公式書簡を書き、大使館の移転は2016年国際連合安全保障理事会決議に反していること、そしてアメリが国際連合安全保障理事会の「独立した透明性のある調査」を求める声明を採択することを阻止したことについて懸念をしめしました。[2]
2018年の8月においても戦闘は続いておりハマスは数十個のロケットと迫撃砲イスラエル南部に発射している。[3]
イスラエルの報復的空爆はガザ地区のハマスを狙い、8月8日に亡くなった妊婦と生後18ヶ月の幼児を含む幾人ものパレスチナの市民の犠牲者をだしている。[4]
2.イスラエル国防軍による過度な武力行使とイスラエルの空爆による市民の犠牲
抗議開始に先立ち、「イスラエルの官僚は、ルールに基づいてガザの分離壁に危害を加える人に対して、分離壁の300メートル(985フット)以内に近づいた人を含み(その後100メートルに短縮された[5])、実弾を撃つことができると発言」した。[6] イスラエル国防軍の広報担当者は、無差別にパレスチナの人に砲火をしているイスラエルは犠牲者の数を減らすことに失敗している、と明言した。[7]
イスラエルによる報復的な空爆はハマスに加え、ガザ地区の文化センターを含むパレスチナ市民も標的にしている。[8] 8月10日金曜日にはガザ地区の防護壁では新しい武力衝突が報告された。政府保健省によると医者を含む2人のパレスチナ人が死亡し、307人が負傷した。[9]
3.国際的基準からの逸脱
パレスチナ人のデモ参加者に対するイスラエル国防軍兵士による不相応な殺傷力の高い武器の使用が、もし検証されたならば、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)における、生命に対する固有の権利、平和的集会の権利、結社の自由についての権利そして表現の権利への遵守の義務[10]にイスラエルは違反することになる。暴力行為に対して国連人権高等弁務官は「パレスチナ人の生命に対する固有の権利、彼らの身体の安全に対する権利そして集会、表現の自由の権利は遵守され守られなければならない」と表明した。[11]
さらに、法執行委員による強制力及び武器の使用についての国連基本原則により抗議者に取り締まりを行う際には「非暴力的な方法」を優先するべきであり、そして銃器の使用が不可避な場合でも法執行官は「犯罪行為の重大性と達成すべき合法的な目的に均衝のとれた行動をとり[12]」そして「その使用による損害や負傷を最小限に抑える[13]」必要がある。[14]
報告によると、限られた殺傷力のない武器の使用(境界のフェンスを切ったり、パチンコを使用し石をなげたり、燃えたタイヤをおくったり、燃えたたこを送ったりなど)をしながらガザの分離壁に近づくデモ参加者への対応としてイスラエル国防軍は銃器や殺傷力の高い武器の使用は不相応である。そして国連基本原則に違反している。5月18日には国連人権高等弁務官が「占領軍の法外的な軍事力の使用による殺人は『故意の殺人』になり戦時における文民の保護に関するジュネーヴ第四条約の147条に矛盾している。」と表明した。[15]
4.責任の追求
パレスチナ占領地の人権状況に関する特別報告者であるマイケル・リンクは大部分の非武装なデモ参加者への過度な武力行使に対して非難を行い、過度な武力行使を命令又は許容した人々にたいして『真の責任』を呼びかけた。[16]
そのために、2018年5月18日の人権理事会では、投票をおこない、「独立した調査委員会」を設置しパレスチナの抗議者に対する「軍事的な攻撃」に関して調査を行うとした。[17]
国際刑事裁判所の検察官はさらに2018年4月8日に「軍を遮蔽するために文民の存在を盾にして使用している事同様に、ガザ地区で起こっている文民への攻撃は国際刑事裁判所ローマ規定において有罪になる。」と表明した。[18]
5.勧告
ヒューマンライツ・ナウはパレスチナの人々に対する甚だしい人権侵害とイスラエル当局のガザ-イスラエル境界間にて抗議者への過度に殺傷力の高い武器による返報、また、イスラエル南部の文民コミュニティーへのガザ政治的指導者の過度な戦闘に対してに深刻な懸念を表明する。
ヒューマンライツ・ナウはイスラエル政府に以下の内容を勧告する
- パレスチナのデモ参加差による抗議者にたいして基本的な生命に対する権利や平和的抗議の権利に尊重しすること
- パレスチナの抗議者の死亡または負傷などの事件への独立した効果的な調査を実施し、過度な武力行使においては責任のあるものに法の裁きを受けさせること
- 人権理事会の調査委員会と2018年3月30日からの国際人権法違反の容疑に対して全面的に協力すること
- 効果的に調査をし、切迫していない個人に対して殺傷力の高い武力の使用を許容するルールを廃止すること
- パレスチナ人に対する国際刑事法、国際人権、そして国際人道法すべての違反をやめ、将来の違反に対する予防を行うこと
ヒューマンライツ・ナウのガザ地区、西岸地区のパレスチナ政治指導者へ勧告
- 特にガザ地区から南部イスラエルへのロケットを撃つなどのイスラエルの文民コミュニティーに対する戦闘をやめること
- エジプトと国連による仲介のもとおこなわれるイスラエルとの持続的な停戦に向けての会話を促進する
ヒューマンライツ・ナウはさらに国際社会に以下の要請を行う
- 特にイスラエル国防軍によるパレスチナ人への人権侵害に対しての公正への努力や説明への支援
- 国際法に則ったパレスチナの政治的解決に対して積極的に行動すること
ヒューマンライツ・ナウは国際刑事裁判所の検察官に以下の要請を行う
- パレスチナにおける国際法の深刻な違反の容疑に関して公式の公開調査を行う。
[1]Michelle Nichols, “Two-thirds of U.N. Security Council upset by non-implementation of Mideast resolution”, 15 May 2018, Reuters, https://www.reuters.com/article/us-israel-palestinians-un/two-thirds-of-u-n-security-council-upset-by-non-implementation-of-mideast-resolution-idUSKCN1IG05B; Chris Baynes, “US ‘blocks UN motion’ calling for investigation into Israeli killing of Gaza protesters”, The Independent, 15 May 2018,
[2] Michelle Nichols, “Two-thirds of U.N. Security Council upset by non-implementation of Mideast resolution”, 15 May 2018, Reuters, https://www.reuters.com/article/us-israel-palestinians-un/two-thirds-of-u-n-security-council-upset-by-non-implementation-of-mideast-resolution-idUSKCN1IG05B; Chris Baynes, “US ‘blocks UN motion’ calling for investigation into Israeli killing of Gaza protesters”, The Independent, 15 May 2018, CPU
[3]United Nations Special Coordinator for the Middle East Peace Process, “Statement on the situation in Gaza”, 9 August 2018. https://unsco.unmissions.org/sites/default/files/statement_by_un_special_coordinator_mladenov_-_9_august_2018.pdf
EU Spokesperson for Foreign Affairs and Security Policy/European Neighbourhood Policy and Enlargement Negotiations, “Statement on the latest escalation of violence between Gaza and Israel”, 10 August 2018. https://eeas.europa.eu/headquarters/headquarters-homepage_en/49322/Statement%20on%20the%20latest%20escalation%20of%20violence%20between%20Gaza%20and%20Israel
[4]Aljazeera, “Israel pounds Gaza, killing a pregnant woman and her child”, 9 August. https://www.aljazeera.com/news/2018/08/israel-pounds-gaza-killing-pregnant-woman-child-180809031129429.html
[5]BBC, “Did Israel use excessive force at Gaza protests?”, 17 May 2018, http://www.bbc.com/news/world-middle-east-44124556.
[6]BBC, “Did Israel use excessive force at Gaza protests?”, 17 May 2018, http://www.bbc.com/news/world-middle-east-44124556.
[7]Uri Blau, “Top IDF Spokesperson Tells U.S. Jews: Israel Failed to Minimize Gaza Casualties, Hamas Won PR War by Knockout”, 17 May 2018, https://www.haaretz.com/middle-east-news/palestinians/.premium-hamas-won-pr-war-we-failed-on-gaza-causalities-admits-israeli-spokesperson-1.6094562.
[8]CNN, “Ceasefire reported after more than 24 hours of hostilities between Israel and Hamas”, 9 August 2018. https://edition.cnn.com/2018/08/09/middleeast/israel-gaza-intl/index.html
[9]Haaretz, “Two Palestinians Killed, 307 Wounded’ in Border Protests After Gaza Escalation”, August 10 2018. https://www.haaretz.com/israel-news/hamas-calls-on-gazans-to-join-border-protests-after-gaza-escalation-1.6364600
[10]UN General Assembly, International Covenant on Civil and Political Rights, Art. 6, 21 and 22, 16 December 1966, United Nations, Treaty Series, vol. 999, p. 171. http://www.ohchr.org/Documents/ProfessionalInterest/ccpr.pdf
[11] @UNHumanRights, 18 May 2018, https://twitter.com/UNHumanRights/status/997394882137346048.
[12] 翻訳の引用元:https://www.hrw.org/ja/news/2013/08/01/250728
[13]翻訳の引用元:https://www.hrw.org/ja/news/2013/08/01/250728
[14]Basic Principles on the Use of Force and Firearms by Law Enforcement Officials, 7 September 1990, Art. 4 and 5. http://www.ohchr.org/Documents/ProfessionalInterest/firearms.pdf
[15]OHCHR, “Special Session of the Human Rights Council on the deteriorating human rights situation in the Occupied Palestinian Territory, including East Jerusalem – Statement by UN High Commissioner for Human Rights Zeid Ra’ad Al Hussein”, 18 May 2018, http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=23100&LangID=E;
International Committee of the Red Cross (ICRC), Geneva Convention Relative to the Protection of Civilian Persons in Time of War (Fourth Geneva Convention), 12 August 1949, 75 UNTS 287, Art. 147, https://ihl-databases.icrc.org/ihl/385ec082b509e76c41256739003e636d/6756482d86146898c125641e004aa3c5.
[16]OHCHR, “UN human rights expert condemns horrific violence in Gaza”, 15 May 2018, http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=23087&LangID=E
[17]HRC Resolution S-28/1, “Violations of international law in the context of large-scale civilian protests in the Occupied Palestinian Territory, including East Jerusalem”, A/HRC/RES/S-28/1, 18 May 2018, http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/SpecialSession/Session28/A_HRC_RES_S-28_1.docx.
[18]ICC, “Statement of the Prosecutor of the International Criminal Court, Fatou Bensouda, regarding the worsening situation in Gaza”, 8 April 2018, https://www.icc-cpi.int/Pages/item.aspx?name=180408-otp-stat