*関連記事:世界の人権は今>【世界の人権・フィリピン】2007/01/31 フィリピン大統領は特別調査委員会報告書をふまえ対策を指示 http://hrn.or.jp/world/cat43/20070131/
1月28日付フィリピン各紙によれば、フィリピンにおける一連の超法規的殺害問題を調査する調査委員会(通称メロ委員会)は、1月22日に調査を終了し、このほど委員会の調査報告書をアロヨ大統領に正式に提出した。報告書には、これらの殺害事件に国軍が直接、間接に関与している事実が確認されているという。同調査委員会の委員であるプエブロス司教が、27日のカトリック司教協議会の記念行事でのインタビューに答えて明らかにしたものである。
プエブロス司教によれば、報告書には、以下のような結論が記載されている。
1 左翼活動家、ジャーナリスト等に対する政治的殺害について、複数のケースについては国軍の犯行と認められる。
2 そのほか政治家の私兵による報復や左派グループの犯行も認められる。
3 少佐以上の国軍幹部は部下の指導権限があることから、国軍関係者が政治的殺害に より有罪となった場合にはその上官の刑事責任をも問うべきであり、また大統領は、左翼活動家やジャーナリストに対する者だけでなくあらゆる形態の殺害を止めるための声明を発表すべきである。
プエブロス司教は、インタビューにおいて、軍、政治家の私兵、左翼グループの犯行のいずれがもっとも多いのか、いかなるケースが国軍の犯行と認められるのか、国軍で具体的に関与した者は誰かなどの報告書の詳細については明らかにしなかった。
また、プエブロス司教は、インタビューの中で、(政治的殺害への関与が指摘されている)パルパラン元将軍に対する調査についてふれ、同将軍は彼の任地における政治的殺害の記録を示しても左派勢力によるねつ造であるとか、左派勢力をおびえさせるのに利用しただけだなどと主張するなど、無責任な言動を繰り返したと指摘した。また、メロ委員会の調査対象となった将軍が調査に対して、政治的殺害への関与を否定していることについて、将軍たちは自らの責任がないと言うだけでは不十分であって、殺害の犯人について十分な調査をすべき責任がある、にも関わらず彼らは何らの調査をしようともしていない、と指摘した。
同報告書は未だ一般には公開されていない。
*メロ委員会
2006年8月21日に、左翼活動家、ジャーナリスト、公務員に対する殺害事件について調査をするべく行政命令157号によって設立された委員会。委員は、議長の元最高裁判事のメロ氏のほか、プエブロス司教、国家捜査局(NBI)長官、国家主席検事、弁護士、フィリピン大学評議員からなる。
(参考) フィリピンスター紙 http://www.philstar.com/
マニラブリテン紙、デイリートリビューン紙ほか