【イベント報告】2019年5月10日「活動説明会」

5月10日(金)にヒューマンライツ・ナウの「活動説明会」を行いました。参加いただいた皆様におきましては、お忙しい中お越しいただき厚く御礼申し上げます。

 

このイベントではHRNの活動内容の詳細を皆様と共有するとともに、トークセッションとして弊団体の会員やボランティア、職員がHRNにおいてどのような業務に携わっているのかもお伝えしました。

 

説明内容

説明会は参加者の皆様と会員・ボランティア・職員を交えての自己紹介で、和やかに始まりました。まずは今年3月に公開した活動紹介ビデオを上映しました(活動紹介ビデオのページはこちら)。この動画ではHRN活動の3本の柱である「事実調査」「アドボカシー」「エンパワメント」に触れ、最近の「ビジネスと人権」や「女性の権利」、「いじめ」等の分野での活動を活動中の写真と共に紹介しています。

 

事務局長・伊藤和子による活動紹介

紹介動画にて活動の概要を参加者の方に理解していただいた後、事務局長の伊藤和子より団体立ち上げから現在の活動に関して報告を行いました。

HRNは2006年に日本初の国際人権NGO団体として、国際人権法に基づいて世界の人権問題をなくすことを目的に発足しました。以降、アジアの人権団体への協力呼びかけの実施や、2012年に国連NGOとなるなど、社会に変化を与えうるNGOとして成長してきました。

 

3本の柱:事実調査・アドボカシー・エンパワメント

続いて、伊藤はHRN活動の3本の柱である「事実調査」「アドボカシー」「エンパワメント」について具体例を交えながら報告しました。

一つ目の柱、事実調査の必要性は人権侵害が発生する状況に関係しています。人権侵害が継続して発生しまうのは、「誰にも知られない、誰からも注目されない」ことが原因であり、HRNでは被害にあった人に寄り添うため、現地調査を行い、人権侵害を可視化することに努めています。

二つ目の柱、アドボカシーとは人権問題を解決するために必要な政府や国連、企業の行動を促すための提言・啓蒙活動を指しています。特に国連NGOとしてニューヨークとジュネーブにオフィスを設置し、国連のすべての会合に出席して議論に参加することで、その目的を達成しようとしています。

三つ目の柱、エンパワメントではミャンマーでの人権教育を例として提示しました。学校に行くことのできない人々は人権という概念を知らず、自らの権利を侵害されているという認識もできないという現状があります。このような状況を改善するために、ミャンマーの少数民族の村で世界人権宣言の条文を一つずつ読み上げ、その権利が守られているかを現地の人と考えるという人権教育を行っています。このような教育を通じて、若い世代のリーダーが勉強を続け、差別と差別から起こる紛争を止めようと行動するきっかけとなる活動をしていきたいとHRNは考えています。

 

ビジネスと人権

千人以上の死者と千人以上の負傷者を出した、2013年のバングラデシュでの縫製工場倒壊事故に関する事実調査を行いました。労働問題でこれだけの死傷者が出ることは珍しく、当時はバングラデシュという国の問題かと思われていました。しかし、実際にはファストファッションブランドが安価な労働力を求めた結果の事故であり、女性や児童の労働力が搾取されている実態が明らかになりました。

これは日本にとっても、無関係な問題ではありません。HRNはユニクロの下請け工場への潜入調査を4か月行い、有害物質に汚染された労働環境や酷暑の中での長時間労働など、その劣悪な環境を報告しました(本報告書のページはこちら)。この報告書は大きく報道され、ついにはユニクロに事態改善への行動を取らせることに成功しました。この事例から、グローバルなサプライチェーンの中で一定のプレゼンスを持つ日本の中で活動を行うことで、海外の人々の生活を向上させることができるのだという実感になったと伊藤は話しました。

 

女性の人権

2013年頃から、AV出演強要被害の相談が寄せられるようになりました。意に反する性行為を強要し、ネットにそれを公開し続けることは「ただの個別の人権侵害ではなく、政府が対策を打つべき問題であると感じた」と伊藤は言います。この思いに基づき、HRNは調査を行い、2016年に報告書を提出しました(本報告書のページはこちら)。これは多くの報道機関で取り上げられ、良い反響を呼びましたが、同時にAV関係団体からのバッシングを受けるという事態も招きました。これに対して立ち上がったのは、実際に被害にあった女性たちでした。HRNが起こした行動の波を止めてはならないと、自らの辛い体験を公表した女性たちの行動が功を奏し、2017年3月には各省庁の局長級会合でAV出演強要に関して政府が対策を打つ運びとなりました。HRNは法律を作っていく上でのロビー活動を今後も継続していきます。

女性の人権を守ろうとする運動として、近年大きな注目浴びたのが#Metooです。ハリウッドで始まったこの運動は世界中で大きなムーブメントを起こし、多くの女性が自らの性被害を告白ましたが、日本では声をあげた人が責められるという世界とは真逆の結果となりました。実名で性被害を公表した伊藤詩織氏は特に大きなバッシングを受け、日本から出ていかざるを得ない状況に陥りました。HRNは#Metoo に関連するイベントを東京(シンポジウムのページはこちら)やニューヨーク(NYイベントのページはこちら)で開催してきました。現在、HRNでは#Metooを法律改正に繋げていくため、Voice Up JapanとSpringと共同で、性犯罪における刑法改正を求める署名キャンペーンを始めました。(Changeのページはこちら)

 

ヘイトスピーチ

HRNではヘイトスピーチに関する日本初の報告書を作成しました。大阪グループの弁護士が主体となって作成したこの報告書は2016年のヘイトスピーチ解消法へ繋がりました。

この活動では報告書だけでなく、メッセージボードを掲げた人々の写真でモザイク画を作成することも行いました(報告のページはこちら)。伊藤はヘイトスピーチの被害にあっている人を孤立させないということが大事だと言い、このような活動で寄り添っていくことが必要であるとしました。

 

「NGOには世界を変える力がある」

弱い人たちが声を上げられないことが、人権侵害が終わらない原因であるとHRNは考えています。そのため、声を上げやすい環境を作ること、そして声を上げた人を守ることを大事にしています。それは東京事務所での活動だけでなく、ニューヨーク事務所でも世界で続く紛争によって傷つけられる弱い人を守るために、国連安保理へ武器規制や民間人保護の国際的規制の設立を呼び掛けています。

「誰も声を上げなければ、最も弱い人たちが犠牲になっていく」この状況を変えていくために、NGOは市民が団結して声を上げるため尽力せねばならず、HRNも人権NGOとして活動していきます。

 

トークセッション

会員、ボランティア、職員がそれぞれのHRNの活動に対する想いやその業務内容を報告しました。

 

馬場龍行氏(会員:弁護士・震災プロジェクトリーダー)

馬場氏は東日本大震災後の被災地で法律相談を行う「震災プロジェクト」のリーダーをされています。このプロジェクトは震災後1か月の4月に現地入りして始まり、現在も続いている活動です。被災地で法律相談を行うことが主となるプロジェクトですが、被災者の方々にとっては「相談をする場」自体が貴重だという声があったことに馬場氏は言及し、このプロジェクトの被災地への貢献を報告されました。

 

福地正恵氏(プロボノ兼ボランティア:グラフィックデザイナー)

プロボノ活動としては本職のグラフィックデザイナーとしての技術をHRNの印刷物作成に提供してくださっています。ボランティアとしての参加も長く、チャリティランの企画や運営も担っています。

 

山口悠佳(職員)

カンボジアでの青年海外協力隊としての活動で人権問題とそれを取り巻く環境に問題意識を持ち、NGOという立場から人権問題解決に貢献したいとの思いからHRNに勤務しています。

 

ディスカッション

最後に、参加者の皆様同士で「今日の話を聞いて感じたこと」を話し合っていただきました。その中から、いくつかご紹介します。

 

「#Metoo やヘイトスピーチなど、良いと思う人と悪いと思う人が両方いるような、『両面』を持つ事象は考えることが難しいと感じていた。今回の報告を聞いて、実際に現地へ行って話を聞くというのが、こういった問題を考える一助になるのだと知った。」

 

「人権問題というと難しいイメージがあり、どうしても遠い世界の話だと思ってしまうが、身構えすぎず身近な問題として人権をこれから考えていきたい。」

 

「日本のNPO・NGOはあまり活発ではないと聞き、実際のところを知らないので今回の報告会に参加した。実際に社会や制度を変えてきた実績を見て、すごいなと思った。」