【国際人権先例・CCPR】2004/No.1321、1322 大韓民国

Yoon and Choi   v Republic of Korea

通報日

見解採択日

文書発行日

通報番号

18/10/2004

03/11/2006

23/01/2007

No.1321-1322 /2004

 全文

http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/(Symbol)/26a8e9722d0cdadac1257279004c1b4e?Opendocument

手続上の論点

 

実体上の論点

思想・良心及び宗教の自由(18)

通報者の主張

 2名の通報者はエホバの証人の信者であるが、それぞれ0102年に、宗教上の信念と良心に従い兵役を拒否したことにより、韓国の兵役法(Military Service Act) 88(1)に従って逮捕、起訴され、東ソウル地方裁判所で懲役1年半の有罪判決を受けた。両名は保釈されたものの、上告した同裁判所第一刑事部(First Criminal Division)、さらに最高裁判所も一審判決を支持した。04年には憲法裁判所も「(韓国の)憲法19条に定める良心の自由は、兵役拒否を認めるものでない。憲法に兵役拒否を具体的に認めた条文はない。兵役法88条は憲法19条に定める権利を侵害していない。」との判断を示した。このあと、300件ほどの同様の裁判が急速に進行し、04年末までに1100人が投獄された。

  通報者は、韓国に強制的兵役に代わる市民的役務の制度がなく、兵役拒否した者が刑事犯として起訴され懲役を科せられるのは規約181項違反であると主張する。さらに規約委員会一般的意見No.22(93)にも、兵役拒否の権利が18条から派生するとある、と述べた。

当事国の主張

 規約18条には、必要であれば良心の表明に制限を科すことができるとある。韓国憲法37(2)では、「国防、法秩序、公共の福祉のためには、法によって市民の権利は制限される。」と定めている。よって、憲法19条の定める良心の自由を根拠に兵役拒否はできない。内的に良心を形成し保持する自由は制限されないが、兵役拒否によってそれを表明することは、治安や法秩序を脅かす恐れがあるとき制限され得る。韓国は、北朝鮮と敵対関係にあるという地政的条件のもと、全国民徴兵制度を取っており、国民が平等に義務を果たすことに重要な意味がある。例外を認めることは、社会的統一を揺るがし、兵役制度の根本を不安定にさせ、国防に悪影響を与える。代替役務制度の導入は、現在の国防の状況においても国民的理解においても、それを可能にする段階にない。兵役拒否を処罰するのは、国防の重要性、兵役負担の平等性、また代替役務制度が不在であることから、183項を侵害していない。尚、代替役務制度導入については、政府に行動計画が提出され(061)、前向きに検討されている。

委員会の見解

規約18条によれば、強制的兵役は宗教的信念に照らして道徳的倫理的に許されないという考えが、尊重されるべきである。(尚、規約8条の強制労働についての条項は、「兵役を除いて」という条件があるので関係しない。)一般的意見No.22にもあるように、兵役拒否の権利は18条から派生し、信仰や信念の自由を守るために、認められる。

 韓国の国防上の状況、公共の安全と社会の統合を守るという目的は理解されるし、代替役務制度導入について検討していることも認められる。しかし、通報者の権利が18条で守られ兵役拒否を認めた場合、いかなる不都合(disadvantage)があるのか、具体的に示されていないし、重大な影響があると判断されない。良心、信念、その表明を十分に認めてこそ、多元的価値を保持する、社会的統合や公正に貢献するものである。全国民徴兵制度を劣化させないまま、代替役務制度を持つことは理論的にも実際上も可能である。それをせずに、通報者を有罪としたことは、規約181項に違反する。従って、規約23項に従って、当事国は補償を含む実効的な救済を通報者に与え、同様の侵害を繰り返さない義務を負う。