【国際人権先例・CCPR】2003/No.1201 スリランカ

Ekanayake  v  Sri Lanka

通報日

非許容決定日

文書発行日

通報番号

10/04/2003

03/11/2006

23/11/06

1201/2003

全文

http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/(Symbol)/5bfdb0fe63e04476c125723a005049ce?Opendocument

手続上の論点 

国内的救済(OP2条、OP5条2項(b)

実体上の論点

平等原則(26条)

通報者の主張

通報者は裁判官で、98年タムブッテガマの終身判事と地方裁判所副裁判官に任命された。国家司法委員会(JSC)から、反対派リーダーの出席する会議からスピーカーを撤去する命令を受けるが、命令は政治的に大統領を支持するJSCメンバーの意向によるものと考え、従わなかった。そのために、コロンボの副判事に転任を命じられた。20004月、通報者は担当する裁判を中断するよう最高裁判長から命じられたが、被告が最高裁判長の友人であったからと思われたため、命令に従わなかった。

コロンボに転任するとき、通報者には住居が与えられず、住宅手当も支給されないという差別待遇を受け、やむなく片道3時間半かかるラトマラナに住んだ。20005月、通報者は通勤の負担から肉体的精神的に疲労し、コロンボからの転任を希望した。62JSCに出頭し最高裁判長と面会した際、「精神的に破綻」していて司法業務の継続が困難と判断され、同日辞表を提出するよう申し渡されたが、拒否した。その3日後、精神的苦痛から体調不良をきたし、欠勤することにした通報者は、予備判事に代行を委託し、医師から「神経系疾患」の診断を受け、2週間の治療休暇をとり、17日復職した。

28日、通報者はJSCから解雇を申し渡された。理由は、予め休暇の手続きをとらなかった、「継続的神経系疾患」がある、以前命令に従わなかった、司法業務に不適格である、というものだった。その後、通報者はメディアに曝され、また殺人の脅迫を受けたり、何者かによって夜間住居を探索されたりしたため、1年半、逃亡を余儀なくされた。警察に告訴しなかったのは、さらに事態が悪化し、司法当局が抑圧に出るだろうと考えたからであった。

JSC、スリランカ人権委員会、大統領に申立て、内務大臣、警視総監にも手紙を書いたが、いずれからも回答がなかった。JSCは政治的に独立しておらず、国内法に定める医療審議会の審査もないまま、彼を放逐するため診断書をねつ造した。さらに、人権委員会委員長は大統領の支持者である。また控訴裁判所、最高裁判所は最高裁判長の影響下にあるため、効果的に機能していないので、裁判に訴えることをしなかった。可能な限りの国内的救済措置は取った。自由権規約26条に定める「平等な法の保護」を受ける権利を奪われた。

 

 

 

当事国の主張

国内的救済を尽くしていないので、受理不可能と考える。裁判所に何の申し立てもしていない。憲法107-117条に定める通り、司法は独立したものであり、裁判官やJSCが政治的影響を受けることはない。通報者は、人権委員会委員長が大統領の政治的支持者であり、最高裁判長が下級裁判官を支配していると主張するが、事実ではない。彼の解雇に関する決定は最高裁判長ひとりによるものでなく、JSCによるものである。

 通報者は試用期間中にあり、解雇に至るまでに、地位濫用による土地略取、担当裁判所における個人的な敵対者の刑法手続き、事情聴取の遅延などの問題があった。これらのうちの2件は、現職の最高裁判長が就任する以前に起きている。また、ラトマラガからコロンボまでは1時間たらずであり、転勤の希望は予定されていたJSCの査定を攪乱する目的と考えられる。またどの任地にも赴くという当初の誓約に反している。

 通報者の解雇というJSCの決定は公平で合理的で正当なものである。JSCとの面会のとき彼は不安定であり、任務遂行は不可能と判断された。200065日に業務報告をせず、翌日「神経系疾患」であるという診断書をファックスしただけであった。これらの理由と過去の行状を合わせ考慮し、JSCは解雇した。JSC規則13に、「委員会は、試用期間中の裁判官を、理由を提起することなく、随時解雇することができる。」とある。賃貸手当が拒否されたのは、コロンボ市内またはコロンボ治安判事裁判所の管轄内に住む規定に反するからである。

委員会の決定

通報者は国内裁判所に一度も申し立てをしておらず、国内的救済措置を尽くしているとはいえない。彼は裁判所が政治から独立していないので、申し立てをしなかったと述べるが、すべての控訴裁判所と最高裁判所の裁判官が最高裁判官の影響下にあり、公平な裁判をしないであろう、という点については、十分具体的に示されているといえない。よって、受理不可能である。