Kamal Quereshi v Denmark |
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通報日 |
見解採択日 |
文書発行日 |
通報番号 |
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11/12/2003 |
09/032005 |
10/03/2005 |
No.33/2003 |
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全文 |
http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/MasterFrameView/7de05b5d0fbd62e9c1256fc5005087f9?Opendocument |
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手続上の論点 |
国内的な救済措置を尽くしたか(14条7項(a)) |
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実体上の論点 |
締約国の差別撤廃義務(2条1項(d))、人種的優越主義に基づく差別・扇動の禁止(4条)、人種差別に対する救済(6条) |
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通報者の主張 |
2001年、極右政党である進歩党党員数名が、国内のイスラム教徒追放を呼びかけるファクシミリをマスコミに送ったり、地方新聞にコーランは異教徒の抹殺を求めているとの広告を載せ、また党の年次大会においても、前党首を含む党員6名がイスラム教徒排斥を煽る演説を行った。 通報者は、デンマーク国籍で社会主義人民党に属する現職の国会議員であるが、この総会の様子を知り、the Documentation and Advisory Centre on Racial Discrimination(DRC=訳者注:デンマークで人種差別被害者の救済を行う団体)に、それまでの発言者、および発言を許した党の執行委員を提訴するよう求めた。同年DRCは地元警察に、進歩党員の発言は、人種・種族的・宗教的出身を理由として人々の集団を威嚇、侮辱、貶めてはならないとする国内刑法に違反するものであるとして、一連の議員を党自体とあわせて刑事告発した。 2003年警察は、訴えのうち数ケースについて司法行政に関する法に照らし告訴取下が相当である等の提言をつけ地方検察庁に送致した。地検の検察官は捜査のうえ検事総長に勧告を送付したところ、結局送致された6件中4件の告訴が取下げられた。DRCは、うち2件につき取下げを不当として不服申立をおこなったが、法務省はDRCは当事者適格を有しないとして申立を受理しなかった(なお告訴された件については罰金刑が確定)。一方、法人には当該刑法規定が適用されないため、党に対する訴えは却下された。DRCはあわせて党執行委員の責任を問うたが、執行委員であることだけで他者の発言への刑法上の関与があったとは言えないとして告発は認められなかった。 通報者の主張は以下のとおり。 1) 締約国は、問題となった人種差別事件を調査するために効果的な手段を講じる積極的義務を果たしていない。司法機関が実際に人種差別的発言を行った者を訴追しないことは6条に違反し、検察官が一連の発言が刑法上の犯罪にあたらないと判断したことは2条1項(d)違反となる。 2) 法務省が、通報者らは不服申立の当事者適格を有しないと決定したことで、検察が事件を取り下げたことは2条1項とともに6条の違反にあたる。 3) 私人訴追を提起しても、検察庁・法務省が却下するであろうから意味がない。民事上の責任に関しては人種差別自体を理由に賠償請求は生じないとする高裁の判例がある。訴訟当事者としての地位がないと判断された以上、憲法上の救済を求めることもできない。 なお本件に関連しては、以前にも通報がなされている(No.27/2002参照)。 |
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当事国の主張 |
1) 許容性について ・ 通報者らは、検察の決定のうち1件に不服申立をしただけなので、他のケースについては国内的救済を尽くしていないことになる。 ・ 裁判の場で、憲法を用いて行政決定の内容の合法性を問うことはできない。 ・ 人種差別等に関する条項でなくとも、No.25/2002で委員会も認めているように、個人の尊厳を保護する条項を用いた私人訴追が可能である。 2) 本案について ・ 警察および検察は人種差別行為の有無を決定するにあたり、相当な注意と迅速さを持って適切な調査を行っており、これは効果的な措置を講じるという国家の義務に十分見合うものである。 ・ 取り下げた個々の件についても、条約が求める、慎重で適切な調査が行われている。 ・ 一連の発言にあったguest worker(外国人労働者)は刑法の当該規定にいうところの「人々の集団」にはあたらない(高裁判例同旨)。 |
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委員会の見解 |
1)許容性について ・ 通報は、通報者らが不服申立をしたケースだけに限られているから、委員会が他に申立を行わなかったことを問題にする必要はない。 ・ 締約国は通報者が私人訴追を行うべきであるとするが、発言は完全な公の場で行われており、まさに条約上、刑法上の人種差別等に関する当該条項にあたるケースである。したがって、この条項による提訴が不成功であった後、別途、私人訴追を求めることは不当である。 ・ 通報者はほぼ2年に渡って多層の行政決定を受けてきたのであるから、さらに裁判所での救済を迫ることは、14条7項(a)の不当に遅延する場合となる。 ・ 許容性に関する締約国からの異議はこれ以上ないので、本件は受理可能とする。 2) 本案について 委員会は条約違反に当たる事実は認められないとしつつも、以下の意見を付した。 ・ 締約国のこれまでの見解はともかく一般的な基準として、外国人を条約が対象とする人々の集団にあたらないとすることはできない。 ・ 締約国当局は、党大会での問題の発言を判断するにあたって不適切な結論に達しており、刑法違反となる人種差別行為をしていないと結論付けることはできない。通報者は人種差別行為に対する効果的救済の権利を奪われない。 委員会は、締約国に対して、①外国人に対する憎悪に満ちた性質の発言、特にそのような発言が政治家によってなされた際の深刻さ、②非市民に対する差別に関する委員会の一般的勧告30、について注意を喚起する。 |
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