【メディア】12月17日毎日新聞 <AV出演強要は人権侵害>

「AV出演強要は人権侵害」毎日新聞にて以下の記事が出ていますのでご覧下さい。20161217%e6%af%8e%e6%97%a5

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 アダルトビデオ(AV)への出演を強要されたという相談が、相次いで人権団体に寄せられている。路上でスカウトされた学生らが、度重なる説得で洗脳され、「契約書にサインした自分が悪い」と自分を責め続けるのだという。

 ●相談件数年々増え

 性被害者を支援するNPO法人ライトハウスとPAPS(ポルノ被害と性暴力を考える会)に寄せられたAV出演関連の相談は2014年29件、15年83件、今年は1~11月で148件。プロダクションと契約したがやめたい▽だまされて出演させられた▽(出演した)AVを削除してほしい--などの訴えだ。

現在ユーチューバーとして活動するくるみんアロマさん(26)は明治学院大4年だった10年冬、新宿で「グラビアができる子を探している」とスカウトされた。音楽活動へのあこがれを話すと、芸能プロダクションの「社長」に紹介された。契約書のようなものにサインしたが、AVについての記述はなくコピーも渡されなかった。

 その後、大手出版社でグラビアの面接があり、相談もなく社長が「ヌードもできます」と紹介、採用が決まった。大手という安心感があり、社長に「音楽をやるには近道」と言われヌード撮影に応じた。

 ●囲まれ説得数カ月

 大学を卒業したくるみんさんは、夢にかけるために企業の内定を断った。仕事があまり来ず不安が募った約半年後、事務所からAV出演を打診されたという。拒否感があったが、何度も事務所に呼び出され「社長」やスカウトに説得された。「絡みがあるものをやった方が売れる」「グラビアよりAV女優の方がトップ」。多い時は7~8人の男性に囲まれた。説得は数カ月にわたり10回以上続く。打ち合わせ後は2週間ほど連絡が取れなくなり、また呼び出される繰り返し。「今思えば洗脳だが、やるしかないと思い込まされた」と悔やむ。

 事前にできないことを書かされたが、撮影ではそれも強要された。泣き出すと、スタッフに「(自分たちも)家族がいる。どうしてくれるの」「こんなに時間がかかるのはあんただけだ」と責められたという。撮影は朝から深夜に及び、心身共にボロボロに。「もう自分はこれ以外できない」と心理的に追い詰められ3カ月後に2本目に出演。「自分が悪い」と責め続け親にも相談できなかった。

 しばらくするとスカウトから「社長が(売り上げを)持ち逃げした」と聞かされた。報酬はほとんど得ていない。今年、支援団体の協力を得て2作品の販売は停止できたが、インターネット上に広がった画像は消えない。

 フリーアナウンサーの松本圭世さん(27)も名古屋大在学中に被害に遭った。街で「バラエティーのような番組の撮影」とだまされて車に乗せられ、奇妙な形のあめをなめる様子を撮影された。「使わないで」と伝えたが数年後、AVに使われていることが発覚。地元テレビ局の3番組全てを降板させられた。

 被害公表後は「被害者面するな」「だまされた方が悪い」と言われさらに傷ついた。「本人の意思で出る人は尊重するが、だましたり人を傷つけたりするやり方はおかしい。振り込め詐欺だと犯人が悪いとされるのに、性的なトラブルは『だまされた方が悪い』となるのは疑問」と話す。

 ●自分を責め自殺も

 支援団体への相談では、街でモデルとしてスカウトされる▽最初はAVと伝えられず徐々に説得されたり、撮影直前に言われたりする▽複数の男に囲まれ契約書にサインさせられる--などの事例が多い。未成年だと法定代理人が同意していない契約は取り消せるため、前から接触して20歳の誕生日後に契約させるケースも目立つという。

 PAPS世話人でソーシャルワーカーの宮本節子さんは「社会経験が乏しい若い人が狙われる。うつ状態になったり結婚生活に支障が出たりする人もおり、精神的な救済をどうするかも課題だ」と話す。これまで相談者2人が自殺したといい、「一人で悩まないで」と呼びかけている。

 ●被害救済法整備を

 この問題を巡っては、AV出演を拒否した20代女性が所属プロダクションに違約金約2400万円を請求された訴訟で、昨年9月、東京地裁が「本人の意思に反した出演は許されない」と請求を棄却した。女性は18歳の時、契約書に署名。契約解除を申し出ると違約金を請求された。人権団体「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」は今年3月、被害防止・救済のための法規制を求める調査報告書を公表。6月にはAV出演のため所属モデルを派遣したとして芸能プロダクションの元社長ら3人が労働者派遣法違反容疑で警視庁に逮捕された。HRNは8月、AV業界団体の知的財産振興協会に強要防止に向けた第三者機関の設置などを求めた。

 HRN事務局長の伊藤和子弁護士は、AVプロダクションや制作会社には監督官庁がなく風営法も適用されないため、違法行為が野放しになっていると指摘する。「出演強制は女性への暴力で人権侵害。被害を防止救済するための法整備が早急に必要」と訴える。「誘われてもついて行かず、どんな会社かウェブサイトで調べることも必要。強要されたらすぐ逃げてほしい」と話す。意に反していたことが証明できれば出演ビデオの販売を停止できる場合もある。無料通信アプリ「LINE(ライン)」やメールのやりとりは証拠になるので保存することを勧めている。【上東麻子】


 ●逮捕受け業界団体が改善策

 AVを制作するメーカーなど約240社が加盟するNPO法人・知的財産振興協会(IPPA)は6月、プロダクション元社長らの逮捕を受け、「業界全体の健全化に向け早急な改善を促す」との声明を発表した。HRNとも協議を進め、7月には販売・レンタル店や配信サイト運営者に対し、IPPA関連の3審査機関がチェックしていない作品を取り扱わないよう文書で求めた。

 IPPAは海賊版流通を防ぐため11年に設立された業界団体で、AV制作者全体に占める加盟社のシェアは「7割ほど」(業界関係者)とされる。現在は▽出演者とプロダクションで交わす契約書の統一▽第三者委員会の設置▽相談窓口開設▽作品の流通期間制限--などを協議し、「来春ごろからの運用を目指している」(事務局)という。

AV出演強要や性被害の相談窓口

 ▽NPO法人ライトハウス

電話0120・879・871(月~金10~19時、匿名可)

メール soudan@lhj.jp、LINE LH214(ID)

 ▽PAPS(ポルノ被害と性暴力を考える会)

電話050・3177・5432 メールpaps@paps-jp.org

 ▽よりそいホットライン

岩手、宮城、福島県からは電話0120・279・226

その他の都道府県からは電話0120・279・338

 (いずれも24時間)

ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20161217/ddm/013/040/009000c#csidxeb75eff79bf6d158e5f995d7eb9ba0e
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