【イベント報告】10月15日(月)#MeTooを法律に「刑法改正、セクハラ禁止整備をどう進めるか」

2017年10月に始まった#MeTooから一周年が経過しました。ヒューマンライツ・ナウでは10月15日にトークイベント、「#MeTooを法律に」を開催いたしました。

セクハラに関する企業の意識が大きく変化した米国、新しいYes Means Yesの刑法・性犯罪規定を実現したスウェーデンなど性被害をめぐる法制度やカルチャーが大きく変わった一年でした。ヒューマンライツ・ナウは、2017年以降、欧米や韓国、台湾等も含めた10カ国の性犯罪に関する法整備を研究し、調査結果を踏まえて日本の性犯罪規定に対する提言を発表しました。本イベントでは、調査報告・提言書の内容を報告、サバイバーやこの問題に取り組んできた方々とともに今後の法制度の改正に向けて議論を進めました。

【ヒューマンライツ・ナウ提言発表:雪田樹理氏(弁護士 HRN理事)】
ヒューマンライツ・ナウが各国のレイプ・セクハラの法制について調査研究した内容と政府に望む政策提言を発表、説明しました。HRN理事の雪田弁護士による日本の性犯罪法の問題や暴行脅迫の要件を満たさないと立件されないこと、暴行脅迫要件の撤廃、同意がない性行為はすべて犯罪とすすべきことなど。支援体制の強化、ワンストップ支援センターを病院に併設、病院との連携の必要性を重視しました。警察への提言、性暴力の被害申告に対し、訴追の意思の有無にかかわらず、直ちに医療機関と連携し、DNA検査などの証拠採用が行える体制の構築など、性犯罪専門のユニットを作ることについて話しました。

報告書の本文はこちらから確認してください。

【スウェーデン大使館より、レイプに関する新法の報告:スヴェン・オストベリ氏(参事官・政務)】
スウェーデン大使館から参事官の報告が行われました。今年の7月1日から、スウエーデンではセックスは自発的でなければいけないという新しい法律ができました。新法は同意の原則に基づき自発的な同意のない性行為を犯罪とし、性犯罪被害者救済機関を設置、被害者を国が継続的に支援することも含まれています。

しかし、スウェーデンの法律評議会やスウェーデン弁護士会のような重要な機関が新しい法律を批判している部分もあるそうです。しかし、弁護士会は、新法は、スウェーデンが国として自発的ではない性行為を受け入れないという強いシグナルを社会に送っていることが明らかなのでそれはとても良いことだ、と述べているそうです。

スウェーデンでは「Yes means yes」の考え方に基づいた新しい性犯罪法が成立したが、女性の運動の力が大きかったためだと口にしました。本当の変化をもたらすためには、法律は社会全体に広がらなければいけなく、男性と少年の責任を明確にする必要もあるとオストベリ氏は言いました。

【事例報告:大藪順子氏×小川たまか氏】

― ジャーナリスト大藪順子さんのお話(アメリカ) ―
米ボストングローブ紙、カトリック教会での性的虐待が、全米を揺る大ニュースになりました。ボストン・グローブは一人一人の犯罪者を取り上げても何も変わらないことに気づき、システムの改正が必要だとアナウンスしました。

2016年に大藪氏は日本に帰り、実名で性犯罪被害を受けたことを語ったらとてもびっくりされ、日本はまだ法律が敷かれていないことに気づきました。米国で性犯罪被害を受け、被害者が助けを求める前に、支援する側が手を差し伸べる体制ができていることを知りました。アメリカはパブリック・ヘルスの問題、経済対策として、性暴力支援を行っています。一つの性犯罪事件は被害者や加害者だけの問題ではなく、その家族や、社会を壊してしまことを国は理解していると述べました。

日本の子供の目線からカルチャーを変えていく必要があると大藪氏は強く思っています。例えば、日本では、自衛隊募集のポスターや、観光振興の海女さんまでが、性的描写の対象になっていますが、これは子供たちにどのようなメッセージを送っているのか考えて欲しいと述べました。誰のためにこのイメージが作られているのか、日本のカルチャーで育ってくる子供達のことを常に考える必要があると語りました。

― フリーライター小川たまかさんのお話(イギリス)―
小川氏は一般社団法人Springスタッフとして、イギリスを視察し経験を語ってくれました。「凍りつきは自然な反応 (#IJustFroze)」、抵抗できずレイプされることはとても自然な反応というポスターが貼られているのをみて、9割以上の日本人には日本では暴行脅迫要件があることすら知らないことに比べたそうです。

英国の場合は同意があったかどうかを争点(51%ルール)、日本では暴行・脅迫があったかどうかが争点とされ、英国は起訴のハードルと有罪率も低く、日本は不起訴になるケースが非常に多いです。日本は性被害が訴えづらい社会で、性被害がなかったことにされてしまいがちなのを変える必要があると訴えました。

小川氏は日本で取材をしてると、女性に「私は性暴力にあったことがない」と、自分とは関係ないと思っている日本人女性が多く、日本人はチカンが性暴力だと認識していないためだと口にしました。フランスのメディアの人から取材を受けた時に、彼女は色々な紛争地域の女性の取材をしてきたけれど、日本人の女性を取材して私は初めて泣きましたと聞いてびっくりしたことを語りました。日本は安全なイメージがあるためこそ、問題の訴えの難しさがあり、自分でなかったことにしてしまう人が多すぎると悲しみを述べました。

【パネルディスカッション:大藪順子氏×小川たまか氏×後藤弘子氏x寺町東子氏x伊藤和子氏(弁護士 HRN事務局長)】

コメントと質問に対しての答えの一部を紹介させていただきます。

大藪氏:助けを求めるのは被害者の権利であることを教えていかなければならないです。ディスカッションは小さい頃から始めるべきだと思います。米国では病院からでも、警察からでも、支援体制に入れるようになっていて、病院でも証拠採取できる体制になっています。被害者のエンパワメントが必要で、被害者第一(victim first)で対応することが非常に大切です。

小川氏:警察の対応を市民が評価する「食べログ」のようなサイトがあってもいいのではないでしょうか?

後藤弘子:権利を勝ち取るためには戦わなければいけません。日本ではまだ、性犯罪被害を受けた女性の声が社会に届かれていません。「すべての女性は性犯罪の被害者」と言ったら、「私たちと言わないで」と言われることが少なくはなく、そのような人たちを変えていかなければいけないと思います。すべての性行為は不同意だ、と前提として考える社会を作っていきたいです。

寺町東子:被害が存在することを経済化していく必要があります。イギリスでは性被害者の通報を増やすためのさまざまな取り組みがあり、一人一人の被害者に合わせた支援体制があります。警察に通報するかどうかなど、その被害者のニーズに合わせた対応、サポート、フォローアップがありその結果として、通報率も上がっています。日本では、世の中の変化の後ろに法律はついて行くので、世の中の考えを変えていく必要があります。

伊藤和子:国の労働政策審議会で、セクハラを犯罪とする法の可能性が検討されているが、経営側の代表しかおらずやる気がないと思います!韓国では一連のMeToo法が出来ました。地位を利用してセクハラをすることに対して厳しく処罰すという法律です。私は男性にも頑張ってほしいと思います。性犯罪に関するHRNの報告書、意見書を広めていただきたいです。セクハラ禁止を韓国に習って、日本も禁止を実現しましょう。