【参加報告】NY:人権高等弁務官事務所(OHCHR)主催「人権問題で国連に携わる人々に対する脅迫と報復~最良の対応は?」

人権高等弁務官事務所(OHCHR)主催

「人権問題で国連に携わる人々に対する脅迫と報復~最良の対応は?」

(Intimidation and reprisals against those engaging with the UN on human rights – How best to respond?) の報告

 

スピーカー

  • 国連人権担当事務次長補アンドリュー・ギルモア氏

(Mr. Andrew Gilmour, UN Assistant Secretary-General for Human Rights)

 

  • 国連事務総長室政治・平和維持活動・人道・人権部ベン・マジェコドゥンミ氏

(Mr. Ben Majekodunmi, (UN Political, Peacekeeping, Humanitarian and Human Rights Unit, -Executive Office of the Secretary-General)

 

  • 障害者に関する国連特別報告者&国連人権委員会特別手続調整委員会議長カタリナ・デバンダス・アギラー氏 (Ms. Catalina Devandas Aguilar, UN Special Rapporteur on persons with disabilities and Chair of the Coordination Committee of Special Procedures)

 

NY国連本部事務局で10月27日、国連機関の職員、政府国連代表、市民団体からの代表者が集まり、OHCHRによる表題の討論会が開かれました。人権を守るために活動する市民団体や個人活動家への政府による弾圧は、今日世界22か国で報告されています。民主主義国家として確立し国際人権条約を批准している国々でも、人権擁護・保護のために声を上げる活動家らへの暴力・嫌がらせ・強制失踪、暗殺など政府や企業によるは弾圧は後が絶えません。

前国連人権担当事務長の意思を受け継いで人権活動家に対する脅迫と報復の改善・防止に取り組んでいるギルモア氏は、そのような現状は「グロテスクな社会現象」以外の何ものでもなく、国連機関や市民団体との連携を強めていく必要性を語りました。また、国連の3つの柱 (平和と安全、開発、人権) の中でも「人権」は特に重要であることを訴えました。世界中の人権問題の現状調査・改善に向けて活動するギルモア氏が「最悪なケース」とするのは、政府がOHCHRとの会見を拒否する場合です。国訪問や調査への協力への拒否もこのパターンに含まれます。氏はまた、今年9月のジュネーブでの人権理事会へ渡航拒否され出席できなかった人権市民団体や活動家、国連安保理が南スーダン入りした際に国連ビル内へのアクセスを拒否された人権活動家、エジプトで強制失踪被害者のための団体を起ち上げ自らも強制失踪で消えていった活動家などの話を例に挙げ、事態の重大さをアピールしました。アクションの一環として、9月の人権理事会開催中には「人権活動家に対する脅迫と報復」に関するサイドイベントを行い、この先も継続的に実施していく方向でいると語りました。

これに関して、会場に同席していた司法外・即決・恣意的刑の執行に関する国連特別報告者のアニエス・カラマード氏は、「人権理事会に来れなかった人々がいた時点で、人権理事会開催中にミーティングが開かれるべきではないでしょうか」とコメントしました。

次にマジェコドゥンミ氏が、市民団体の活動の重要さについて語りました。ハイチ、ネパール、その他の駐在・訪問先の国々で出会った多様性に富む市民団体や人権活動家らにはとても心を動かされ、そのような人々の人権を守るための勇気と献身の結合こそが、人権を真のものにすると氏は述べました。また、UPRに始まる人権理事会の制度において、人権侵害の被害者や一般市民の声が含まれていなければ、制度の価値は失われているも同然、と述べました。そして国連3つの柱の解釈次第では、NYからも人権に関するアドボカシーを展開することが可能なのでは、と意見しました。

アギラー氏は、人権問題で国連に携わる人々に対する脅迫と報復に関して、まず必要なのは(特別手続の)調整を確実にすること、そしてディスカッションだと言います。人権活動家に対する報復のケースのほとんどが、特別手続を通して明るみに出ます。被害報告を受けた側として難しいのは、被害者やその家族らの命がかかっているという現実だ、と氏は話しました。また調整側はどう対応し被害を防止していくか、と考えるときに重要な点は、国連に携わる活動家への攻撃は国連システム自体への攻撃であるということを理解することだと言います。問題解決に向けて、国連特別報告者(強制失踪、拷問、その他)にアドバイスを求めることも少なくないと言います。ジュネーブについては、脅迫と報復の被害者は何名か、などの定量的な分析が一般的で、どの分野の特別報告者がどんな脅迫や報復を受けているか、などの質的な分析が欠けていることを指摘しつつ、集められた情報をどう批判的に分析するかの課題は残る、と語りました。NYについては、今年の第三委員会では四名の任務保持者がプレゼンテーションを行っているが、もっとシステム化したやり方で行われるべきだと述べました。

質疑応答では、NYベースの市民団体から、NY第三委員会における市民社会スペースの縮小への懸念、武装可能な政府が市民団体や個人を恐れる心理は何か、UPR以外にOHCHRが市民団体をサポートできるメカニズムはないのか、などのコメントや質問がスピーカーとの間で交わされました。

今回のようなOHCHRと市民団体との会合は、NYでは定期的に行われます。国連における人権団体や活動家の保護、市民社会スペースの確保などのテーマにこれからも注目し、随時報告していきたいと思います。