【共同声明】 市民社会グループは、4月に公表された原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書:「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」の改訂

2014年10月24日
国連総会69会期第4委員会の委員各位
UNSCEAR委員各位
国連総会メンバー各位
市民社会グループは、4月に公表された原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書:「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」の改訂を要求する。
2011年の福島災害により、国連による電離放射線の悪影響の監視が、世界的に最重要な問題となった。監視の目的と基準は、健康と福祉への人権の保護と促進であるべきで、これは、人工電離放射線への被ばくが可能な限り存在しない環境をも含む。われわれ下記署名者は、UNSCEAR報告書[i]の科学的結論、そして報告書から除外された科学的証拠を、第4委員会が批判的に調査することを要請する。
国際核戦争防止医師会議(IPPNW)の、社会的責任を果たす医師団(米国支部:PSR)とIPPNWドイツ支部を含む19ヶ国支部の医師らは、UNSCEAR報告書の批判文書[ii]を作成・発行・公表し、UNSCEARによって使われた仮定とデータ、そしてそれから帰結した解釈と結論に疑問を呈した。この批判文書は、UNSCEARが福島災害による健康影響をどのように系統的に過小評価し、軽視したかを論証している。
われわれは、UNSCEAR委員会メンバーらが、福島原子力大惨事に関する広範で複雑なデータの評価にかなりの努力を費やしたことには感謝する。しかしながら、現在も将来も「識別可能な影響がない」というUNSCEARの結論は、常識に反し、かつUNSCEARの信頼性を台無しにするものである。批判文書は、UNSCEAR報告書そのものに基づくと、福島放射能フォールアウトにより、日本で、約1000件の甲状腺癌症例、および4,300−16,800件のその他の癌症例の過剰発生が予期されると記している。これらの癌を経験する個人、その家族とコミュニティー、そしてその他の放射線誘発性疾患に罹患する個人にとっては、それは非常に識別可能な影響である。
この大惨事は、すでに収束した単一の事象ではなく、いまだ展開中で終わりが見えない事象である。放射性物質は生物圏に漏れ続け、汚染地域に住む人々は、汚染された食物や水の摂取と汚染された空気の吸入により、電離放射線に被ばくし続けている。さらに、福島由来の健康影響のほとんどは、何十年も何世代も先まで現れない。ゆえに、今手元にあるUNSCEAR報告書は、福島健康影響の予備的あるいは初期評価とみなされるべきである。この評価のモニタリングを継続して改善し、アップデートして行くことが、これから長期間必要となる。UNSCEAR2014年報告書は、終わりではなく、始まりなのである。
われわれは、UNSCEAR報告書に関して、第4委員会に下記の2つの行動を要請する:
1)批判文書で挙げられた留意事項を考慮し、批判文書に基づいた改訂がなされるように、UNSCEARに報告書を返すこと。そして、UNSCEARが、委員会の委員構成を広げ、原子力活動に批判的な科学者らを、十分な資格を持った委員として迎え入れること
2)また、UNSCEARの一義的な科学ミッションが、公衆衛生、そして最も脆弱な人々の健康への権利の促進および保護であることを確保するために、 1955年のUNSCEAR設立時に設定された権限を見直す新決議を可決するようにと、第4委員会が国連総会に強く要請することを要求する。現在と将来の世代と環境への、短期的および長期的な電離放射線の影響に対処するためには、予防原則が用いられるべきである。同様に予防原則は、原子力災害後の被ばく、浄化と除染の規制や活動の決定、個人の被ばくリスクを最小限に抑え、かつ軽減するための教育的対策の決定、そして汚染サイトの長期的モニタリングを定める際にも用いられるべきである。UNSCEAR委員会のメンバーらがその専門知識を世界コミュニティーの命と健康を守るために十分活用することを可能にするためには、新たな国連権限が必須である。
Physicians for Social Responsibility, USA
International Physicians for the Prevention of Nuclear War – Germany, Germany
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
Peace Boat – US, USA
虹とみどりの会
緑ふくしま
反原発労働者行動実行委員会
風下の会 福島
福島県自然保護協会
国際環境NGO FoEジャパン
全石油昭和シェル労働組合
「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク
原発災害情報センター
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
脱原発の日実行委員会
脱原発福島ネットワーク
ハイロアクション福島
原発いらない福島の女
福島原発30キロ圏ひとの会
福島につながり続ける新潟避難の会
手をつなぐ3.11信州
子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク
放射線被ばくを学習する会
高木学校
AEEFG – Association de l’Education Environnementale pour les Futures Generations, Tunisia
NGO of “Ecolife”, Azerbaijan
Women in Europe for a Common Future International, Netherlands
Women in Europe for a Common Future, Germany
Women in Europe for a Common Future, France
Irish Doctors’ Environmental Association (IDEA), Ireland
Nuclear Information and Resource Service, USA
Nuclear Age Peace Foundation, USA
Nuclear Age Peace Foundation, New York, USA
Nukewatch/The Progressive Foundation, USA
Nuclear Watch New Mexico, USA
Georgia WAND – Women’s Actions for New Directions, USA
Physicians for Social Responsibility – Kansas City, USA
Gray Panthers, USA
Center for Safe Energy, USA
Nuclear Energy Information Service, USA
[i]UNSCEAR report “Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 Great East-Japan Earthquake and tsunami” at: http://www.unscear.org/docs/reports/2013/13-85418_Report_2013_Annex_A.pdf
(先行和訳:「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」 http://www.unscear.org/docs/reports/2013/14-02678_Report_2013_MainText_JP.pdf)
[ii]Critical Analysis of the UNSCEAR Report “Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 Great East-Japan Earthquake and tsunami: www.fukushima-disaster.de/information-in-english/maximum-credible-accident.html (公式和訳: UNSCEAR報告書「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」の批判的分析http://fukushimavoice2.blogspot.com/2014_06_01_archive.html)