1 東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は,香港における表現の自由・集会の自由を巡る人権状況を憂慮し、香港政府に対して,デモや集会に参加する市民に対する不当な介入を行わないよう強く求める。
2 現在,香港では,2017年に行われる香港行政長官選挙を巡って,中国全国人民代表大会(全人代)が立候補者に資格制限を課すと決定したことに対し,資格制限の撤廃を求める多くの市民がデモや集会,座り込みなどを行って抗議の意思を示している。
報道によると,これら香港市民による抗議活動は,非暴力の方針のもとに行われている。一方,香港政府は,2014年9月29日にデモに参加する市民に対して催涙弾を発射したり,香港政府庁舎前で座り込みをしていた大勢の市民を「違法な集会に参加した罪」などの疑いで逮捕するなどして,デモ鎮圧のために強行的な方法を用いた。
3 HRNは,デモ参加者に対するこのような香港政府の対応を憂慮する。
香港では,1997年にイギリスから中国に返還された際に「一国二制度」がとられ,高度な自治が認められている。そして,中国返還時に制定された香港の「憲法」である香港特別行政区基本法第27条は,香港市民の言論の自由,集会の自由,デモに参加する自由を保障し,同28条では不当な逮捕の禁止を定めている。
前述したデモ参加者に対する香港政府の強行的な対応は,香港特別行政区基本法で定められた上記人権保障規定に反するものである。同時に、確立された国際人権基準から逸脱するものだと言わざるをえない。
報道によれば近日中に事態収拾に向けた香港政府とデモ参加者の対話が予定されているが、あくまで集会・表現の自由を尊重したうえで、平和的な解決がはかられるべきである。
4 私たちHRNは,香港政府に対し,以下のことを求める。
⑴ デモ参加者の表現の自由,集会の自由,デモに参加する自由を尊重するとともに,平和的に行われているデモに対して,暴力的または強行的な手段を用いてその排除を行わないこと。
⑵ デモ参加者の人身の自由を尊重するとともに,デモに参加したことを理由に逮捕された者全員を速やかに釈放すること。
⑶ デモ参加者との直接対話を重ね、多くの市民から支持を受けられる公正な制度のもと,行政長官選挙を行うこと。
以 上