イラク:市民死傷者と何千もの国内避難民を出しているアンバール州における無差別攻撃の迅速な中止を求める
1.
東京を拠点とする国際人権NGO ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、イラクのラマーディーとファルージャにおいて膨大な数の市民死者を出している紛争の激化に対し深刻な懸念を表明する。2013年12月28日のスンニ派議員Ahmed al-Alwani氏の逮捕以降、イラク・アンバル州における戦闘は急速に激化している[1]。複数の目撃者によると、イラク政府は2014年1月1日のアルカイダ戦闘員によるものとされる攻撃への対応として、上記2つの町に治安部隊を設置した。イラク治安部隊はラマーディーとファルージャを包囲し、市民に対する防護措置なしに住宅密集地域において重迫撃砲による無差別攻撃を実行した。
2.
激しい攻撃により、市民を含む多数の人々が殺害された。被害地の地元目撃者はHRNに対し、イラク軍隊は無差別に砲撃、空爆を行っていたと証言した。
ファルージャ総合病院は、2013年12月30日から2014年1月13日までに、子どもや女性を含む死傷者25人と負傷者160人を確認した。しかしこれは氷山の一角とみられ、総計死亡率は不明である。人権団体アンバル・ピースは、2014年1月11日までにラマーディーとファルージャにおいて死傷者370人が出たと推定している。Mohammed Ali議長によると、子ども21人と女性13人を含む73人が死亡し[2]、297人が負傷(うち89人が重傷)した[3]。ファルージャの死傷者は主に一般市民であったとされている。地元病院は犠牲者の大多数が紛争中の迫撃砲からの榴散弾により負傷、死亡したと主張している[4]。
HRNがインタビューを行った地元目撃者によるとラマーディーの町のみで数百人の死亡者が出ているようであったが、正確な犠牲者の数を特定するためには独立調査が必要不可欠である。ラマーディーの医大付属病院の医療スタッフによると、病院の遺体安置室には未だ100名が安置されている。さらに1月13日、迫撃砲がファルージャ総合病院の敷地内に着弾し、少なくとも市民1人が重傷を負った。地元目撃者は、その迫撃弾はイラク軍隊により砲撃されたものであったと私たちに証言した。1月4日には、ファルージャで迫撃砲が民家を攻撃し3人が死亡した。地元目撃者たちはHRNに対し、イラク軍隊は無差別に砲撃、空爆を行っていたと証言した。
3.
さらに、膨大な数の人々が攻撃を恐れアンバル州郊外に避難した。国連と国内避難民・難民問題担当省は情報収集を行い、1月14日に国内避難民数は13,824人になると報告した[5]。しかし、この数は不安定な情勢の為今後増加すると見られている。他の情報ソースは25,000人というさらに多い数を報告している[6]。紛争地域の戦闘激化によって人道支援が難航しており、被災者への援助の配送が困難になっている。1月8日水曜日、イラク担当国連特別報告者 Nickolay
Mladenov氏は「ファルージャの状況は特に厳しく、食糧や水、救命医薬品の貯蓄が不足し始めている。」と述べた[7]。アンバル地域に救援物資を輸送するアクセスが限られており、緊急救援物資が引き返さなければならないと、国際連合イラク支援ミッション長官 Eliana Nabaa氏は述べた[8]。
4.
HRNは、当該紛争におけるイラク政府軍隊による市民への無差別攻撃に、断固として反対する。特に、病院に対する迫撃砲の使用は明白なジュネーブ条約違反である。これらの攻撃は国際人権法と国際人道法の両法に違反する。イラク政府は市民の生命を保護し、市民の所有財産やイラク憲法に基づくイラク市民の権利への侵害を減少させる責任がある。
HRNは、アルカイダ戦闘員が最近の紛争に関与しており、イラク政府が当該紛争を「対テロ戦争」としてみなしていると認識している。しかし、「対テロ戦争」は市民や病院への攻撃や、居住地域等における無差別攻撃の激化の正当化にはなりえない。政府は何よりも優先して市民を保護する責任を負う。
5.
Nouri al-Maliki首相はアメリカに対し、イラク軍隊に一連の兵器を供給するよう要請した[9]。イラク外交筋によると、ロシアはすでにOm al-Qasr港から機関砲24門と装甲兵員輸送車32台といった装備を輸送した[10]。HRNは、外国による兵器供給が無実の市民への重大な人権侵害を悪化させると考え、深刻な懸念を表明する。
6.
したがって、HRNはイラク政府に対し以下を要請する。
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市民に対する攻撃を迅速に中止し、市民の生命に対する権利を保護すること。
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紛争激化を差し控えること。
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人権法や人道法に対する重大違反を調査し、責任者を起訴すること。
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国際団体と協力し、支援を必要とする人々に人道支援が届くよう調整すること。
また、HRNはすべての紛争関係者に対し以下を要請する。
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国際人権法と国際人道法に反するあらゆる行為を差し控えること。
HRNは他国に対し以下を要請する。
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さらなる重大な人権侵害の発生を防ぐため、継続中の紛争に関わる全ての関係者にいかなる軍事的援助や兵器供給も行わないこと。
HRNは国連に対し以下を要請する。
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人権侵害状況調査の為、紛争地域に独立調査委員会をただちに派遣すること。
[1]http://www.ncciraq.org/en/index.php?option=com_k2&view=item&id=3543:un-situation-report-anbar-humanitarian-crisis&Itemid=339&acm=2648_69
[2]http://en.aswataliraq.info/(S(rka5i3escg4xxhejezicfo55))/Default1.aspx?page=article_page&id=155107&l=1
[3]http://en.aswataliraq.info/(S(rka5i3escg4xxhejezicfo55))/Default1.aspx?page=article_page&id=155107&l=1
[5]http://www.ncciraq.org/en/index.php?option=com_k2&view=item&id=3543:un-situation-report-anbar-humanitarian-crisis&Itemid=339&acm=2648_69
[7]http://www.uniraq.org/index.php?option=com_k2&view=item&id=1528:the-united-nations-engages-in-assisting-the-population-of-anbar-province&Itemid=605&lang=en