【声明】香港国家安全法施行後の香港での人権侵害に終止符を打たなければならない

2020/11/30

ヒューマンライツ・ナウ（HRN）とサウンズ・オブ・ザ・サイレンセズ（SOS）は香港の現在の人権状況について共同声明を作成致しました。

全文は以下をご覧ください。

またこのリンクからPDFファイルで声明をダウンロードすることも可能です：【声明】香港国家安全法施行後の香港での人権侵害に終止符を打たなければならない

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香港国家安全法施行後の香港での人権侵害に終止符を打たなければならない

２０２０年11月30日

東京を拠点とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ（HRN[1]）と香港の弁護士と法学、その他の学部の生徒からなる非営利組織サウンズ・オブ・ザ・サイレンセズ（SOS[2]）は、2020年6月30日に中国の全国人民代表大会常務委員会（NPCSC）で香港国家安全法（NSL）が可決されて以来、香港で人権侵害が行われていることに抗議する[3]。制定以来、香港当局はNSLを適用して、民主化抗議デモ、平和的な集会、教育活動、個人・団体の政治活動を処罰してきた。香港警察は抗議者に対して過剰な有形力を行使し、表現・集会・結社の自由、政治に参加する権利、恣意的な逮捕や虐待を受けない権利など、香港基本法[4]や香港に適用される市民的及び政治的権利に関する国際規約（自由権規約）を含む国際人権法で保障された香港人の権利、並びに中国国内での人権侵害については慣習国際法で保障されている権利を直接攻撃してきた。NSLの制定以降の主な権利侵害には以下が含まれる。

  1. 虐待を受けない権利（自由権規約第７条）及び集会の権利（同第21条）
    • 警察の行為の不処罰。2019年の一連の抗議行動で使用された暴力や過剰な有形力に対して、責任を問われた警察官は一人もいない。香港高等裁判所は11月19日、「警察に対する苦情のための独立したメカニズムの提供」を怠ったことで、香港政府が基本法に違反したと判断した[5]にもかかわらず、様々な権利侵害の主張を受けている警察官は未だに処罰されていない。
  1. 集会の権利（自由権規約第21条・世界人権宣言第20条）、公正な裁判及び刑罰の権利（自由権規約第14条・世界人権宣言第11条）、及び恣意的逮捕を受けない権利（自由権規約第9条（1）・世界人権宣言第9条）
    • 勾留された12人の抗議者。香港の民主化デモ抗議者12人が8月23日、中国領海を通って逃亡しようとして中国で拘束されたが、いずれも2019年の親民主化デモとの関連が疑われている[6]。それ以来、彼らは外部との接触ができない状態で拘束されており、家族や弁護士、医師との面会を禁じられている[7]。
  1. 政治に参加する権利（自由権規約第25条）、結社の自由についての権利（ICCPR第22条）、及び政治的表現の自由についての権利（自由権規約第19条）
    • 4人の親民主主義議員が議員資格剥奪。11月11日、中国のNPCSCは、香港政府が「独立を公表もしくは支持する」、「外国の干渉を求める」、又は「国家安全保障を危険にさらすその他の活動」を行う議員の資格を剥奪する決議を採択した。議員のアルビン・ヨン、デニス・クォック、クオック・カキ、ケネス・レオンはその後、香港政府の決定により議員資格を失った[8]。
    • 12人の親民主主義候補者が立候補者資格剥奪。香港の次期立法委員会選挙に立候補した12人の候補者は、7月に出馬する資格を失った[9]。
    • 公聴会の取消。SOSが出席する予定であった、香港における自由権規約遵守についてNGOが意見を述べるための憲法問題パネルの公聴会は、上記の辞職後、新型コロナウィルスからの保護に関する公聴会の数日前の11月16日に中止された[10]。
  1. 政府外における表現と結社の自由、及びび恣意的逮捕を受けない権利（該当する場合）
    • 新聞社オーナーの逮捕。親民主主義新聞「アップルデイリー」のオーナーであるジミー・ライ氏は8月10日、NSLに基づく「外国勢力との共謀」の疑いで逮捕された[11]。
    • 元学生リーダーの逮捕。学生主体のグループ「スチューデントローカリズム」の元リーダーであるトニー・チョン氏は7月29日、NSL第20条と21条に基づく活動を行ったとして、他の3人のメンバーと共に逮捕された[12]。
    • 3人の民主化運動家の起訴。アグネス・チョウ、ジョシュア・ウォン、アイヴァン・ラムが、昨年6月に警察本部を包囲する逃亡犯条例に反対する抗議行動への若者たちの参加を扇動したなどとして、違法集会に扇動した罪などの容疑で有罪判決を言い渡された[13]。11月23日に開かれた裁判後、3人はそのまま収監された。
    • 教育に対する政治的検閲。11月26日、教育局長は、「教養」という科目名が新しい名前に改名されること、教材の検閲が必要であること、及び、教員は教室が監視されることを受け入れなければならないことを発表した[14]。

HRNとSOSはこれらの人権侵害に抗議し、香港政府が自由権規約と基本法の下での義務を尊重することを確保するための措置を講じるよう、すべての関係当局に要請する。

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[1] HRNの連絡先：info@hrn.or.jp, ウェブサイト： http://hrn.or.jp。

[2] SOSのウェブサイト：https://www.facebook.com/soundsofthesilenced/。

[3] “The Law of the People’s Republic of China on Safeguarding National Security in the Hong Kong Special Administrative Region”, 30 Jun. 2020, https://www.gld.gov.hk/egazette/pdf/20202448e/egn2020244872.pdf.

[4] “The Basic Law of the Hong Kong Special Administrative Region of the People’s Republic of China”, July 2020, https://www.basiclaw.gov.hk/en/basiclawtext/images/basiclaw_full_text_en.pdf.

[5] Davidson, “Hong Kong breached bill of rights over police scrutiny, court rules”, The Guardian, 19 Nov. 2020, https://www.theguardian.com/world/2020/nov/19/hong-kong-breached-bill-of-rights-over-police-scrutiny-court-rules.

[6] Pang & Pomfret, “Families of detained Hong Kong dozen protest on island near Chinese prison”, The Independent, 22 Nov. 2020, https://www.independent.co.uk/news/world/hong-kong-dozen-protest-chinese-prison-b1759560.html.

[7] この事件は、世界人権宣言で明示された中国の慣習国際法上の人権義務との整合性の問題を生じる。

Pang & Pomfret, “Families of detained Hong Kong dozen protest on island near Chinese prison”, The Independent, 22 Nov. 2020, https://www.independent.co.uk/news/world/hong-kong-dozen-protest-chinese-prison-b1759560.html.

[8] Kuo and Davidson, “Hong Kong opposition lawmakers all quit after four members ousted”, The Guardian, 12 Nov. 2020, https://www.theguardian.com/world/2020/nov/11/china-pro-democracy-hong-kong-lawmakers-opposition-oust.

[9] Griffiths, “Joshua Wong among multiple Hong Kong pro-democracy candidates disqualified from upcoming election”, CNN, Jul. 30th 2020, https://edition.cnn.com/2020/07/30/asia/hong-kong-election-disqualified-intl-hnk/index.html.

[10] “Legislative Council of the Hong Kong Special Administrative Region – Panel on Constitutional Affairs (Meetings)”, https://Legco.gov.hk, https://www.legco.gov.hk/yr20-21/english/panels/ca/general/ca2021.htm.

[11] “Jimmy Lai: Arrested Hong Kong tycoon tells protesters to be ‘careful'”, BBC, 12 Aug. 2020, https://www.bbc.com/news/world-asia-china-53748285.

[12] Ramzy and Yu, “Hong Kong Police Arrest Activist Said to Seek U.S. Asylum”, The New York Times, 27 Oct. 2020, https://www.nytimes.com/2020/10/27/world/asia/hong-kong-asylum-arrest.html.

[13] Ramzy and May, “Joshua Wong Pleads Guilty Over 2019 Hong Kong Protest”, NY Times, 23 Nov. 2020, https://www.nytimes.com/2020/11/23/world/asia/joshua-wong-agnes-chow-hong-kong.html.

[14] Wong, “Concern groups urge Hong Kong Education Bureau to stop textbook ‘censorship’”, Hong Kong Free Press, 23 Aug. 2020, https://hongkongfp.com/2020/08/23/concern-groups-urge-hong-kong-education-bureau-to-stop-textbook-censorship/.