カンボジアでは所有権が明確とされていない土地は国有地とされるが、現実には、ポル
ポト政権後、国有地に多くの住民たちが住み続けている状況にある。国の登記手続が遅滞
しているため、非常に多くの住民が、長年住み続けてきた土地について正当な権利を明ら
かにすることができず、土地の権利に関して脆弱な立場に置かれている。
そして近年、こうした土地について、居住、耕作をする住民の存在を無視し、国土の非常
に大きな割合の土地が経済コンセッション、社会的コンセッションとして私企業に政府に
より貸与され、コンセッションを得た私企業が軍・警察・一部の地元有力者の力を借りて
強制立ち退きを敢行しているという問題が生じている。
東京を本拠とする人権団体ヒューマンライツ・ナウは、2012年6月、土地紛争をめぐる人
権侵害に関して事実調査ミッションをカンボジアに派遣した。以下の画像・映像はその記録である。
◆スライドショー 各写真はこちら
◆プノンペン・ボレイケイラ地区
○カンボジアの土地をめぐる人権状況を如実に表す地域の一つがプノンペン・ボレイケイ
ラ地区である。2003年6月、フン・セン首相は、大手建設会社ファン・イメックス社にボレイケイラの約4.6クタールの土地の社会的土地コンセッションを許可した。ファン・イメックス社は政府との間で、商業発展の目的で追加の2.6ヘクタールを取得する見返りとして、住民のため10棟のアパートを建設するという契約を交わした。しかし、2010年4月、8棟のみのアパートを建設をしたファン・イメックス社は資金不足を理由として、残り2棟の建設を見送ってしまった。
○このためボレイケイラに残り、第9、第10のアパートへの転居を待っていた約378世
帯の住民は2012年1月3日、100人以上の警察官、憲兵などによって強制的に家を追わ
れてしまい、その際には200以上の家が破壊された。住民への無差別攻撃がなされ、武力
衝突が起きた。抗議をした住民が逮捕され、そのうちプレイ・サー刑務所に送られた者も
いた。
○その後も警察と住民との衝突は続き、2012年1月11日、平和的抗議活動を市役所前で行っていた住民のうち22人の女性と6人の子供が逮捕され、2月2日にも抗議運動をしていた女性6人が逮捕されたという。
○立ち退きを強いられた住民は二つの離れた居住地に立ち退いたが、電気・公衆衛生・飲
み水・病院・学校へのアクセスがなく就労の機会もない。
HRNはこの住民らに現状をインタビューした。住民の劣悪な住環境、権利を侵害された怒
りについての住民の訴えを報告する。
○カンボジアの土地をめぐる人権状況を如実に表す地域の一つがプノンペン・ボレイケイ
ラ地区である。2003年6月、フン・セン首相は、大手建設会社ファン・イメックス社にボレイケイラの約4.6クタールの土地の社会的土地コンセッションを許可した。ファン・イメックス社は政府との間で、商業発展の目的で追加の2.6ヘクタールを取得する見返りとして、住民のため10棟のアパートを建設するという契約を交わした。しかし、2010年4月、8棟のみのアパートを建設をしたファン・イメックス社は資金不足を理由として、残り2棟の建設を見送ってしまった。
○このためボレイケイラに残り、第9、第10のアパートへの転居を待っていた約378世
帯の住民は2012年1月3日、100人以上の警察官、憲兵などによって強制的に家を追わ
れてしまい、その際には200以上の家が破壊された。住民への無差別攻撃がなされ、武力
衝突が起きた。抗議をした住民が逮捕され、そのうちプレイ・サー刑務所に送られた者も
いた。
○その後も警察と住民との衝突は続き、2012年1月11日、平和的抗議活動を市役所前で行っていた住民のうち22人の女性と6人の子供が逮捕され、2月2日にも抗議運動をしていた女性6人が逮捕されたという。
○立ち退きを強いられた住民は二つの離れた居住地に立ち退いたが、電気・公衆衛生・飲
み水・病院・学校へのアクセスがなく就労の機会もない。
HRNはこの住民らに現状をインタビューした。住民の劣悪な住環境、権利を侵害された怒
りについての住民の訴えを報告する。
June, 2012 Cambodia Inspection (ボレイケイラ)
◆ボンコク湖
○プノンペン・ボンコク湖においても深刻な土地はく奪が行われた。
ボンコク湖はプノンペン中心部北部に位置する大きな湖であった。湖の周りの居住地域、
商業地域、及び農業地域に4000世帯以上が暮らしていたといわれる。2007年2月、政
府は民間開発会社シュカク社と、経済的コンセッションの一環として99年のリース契約を
結んだ。2008年8月、シュカク社は湖の埋め立てを始め、住民たちは立ち退きを余儀なく
された。現在では湖はほぼ完全に埋めたてられてしまっている。
○政府はボンコクに住んでいた住民約4万人に対し、住んでいる権利はなく、立ち退かな
ければならないと伝えた。8500アメリカドルの支給か、20キロ離れた代替地及び500アメ
リカドルの支給という補償が提示されたが、この補償は市場価値を大きく下回っており、
移転先では就労を継続することはできない。このため、4000世帯のうち、779世帯が立ち退きを拒絶して、ボンコク湖周辺に残ったが、不当な立ち退き条件を受け入れるように市当局等から、脅迫・威嚇を受けてきた。
○その後、世界銀行の影響などにより、政府は779世帯に対して一定の面積の土地の所
有権を認める姿勢を明らかにしたが、このうちの96世帯に対してプノンペン市は所有権
を認めない姿勢を明らかにした。この96世帯の住民を排除しようと、2011年9月16日、
100人以上の治安部隊と警察が投入され、建物や商店を破壊し、強制立ち退きは敢行され
た。
○その後も、住民たちは自らの所有権、居住権を認めてもらうため、合法的、平和的な抗
議活動を行ってきたが、2012年5月22日、平和的抗議活動をしていた住民たちに軍、
警察による有形力の行使がなされ、女性13人が逮捕された。彼女らはわずか2日後の同年
5月24日、地方裁判所で有罪判決を受け、その後高等裁判所で執行猶予付きの判決が下さ
れたため、彼女らは解放された。なお、13人の裁判に証人として出廷しようとしていた
2人も逮捕された。
○HRNは釈放されたばかりの彼女らに会い、インタビューを行った。
○プノンペン・ボンコク湖においても深刻な土地はく奪が行われた。
ボンコク湖はプノンペン中心部北部に位置する大きな湖であった。湖の周りの居住地域、
商業地域、及び農業地域に4000世帯以上が暮らしていたといわれる。2007年2月、政
府は民間開発会社シュカク社と、経済的コンセッションの一環として99年のリース契約を
結んだ。2008年8月、シュカク社は湖の埋め立てを始め、住民たちは立ち退きを余儀なく
された。現在では湖はほぼ完全に埋めたてられてしまっている。
○政府はボンコクに住んでいた住民約4万人に対し、住んでいる権利はなく、立ち退かな
ければならないと伝えた。8500アメリカドルの支給か、20キロ離れた代替地及び500アメ
リカドルの支給という補償が提示されたが、この補償は市場価値を大きく下回っており、
移転先では就労を継続することはできない。このため、4000世帯のうち、779世帯が立ち退きを拒絶して、ボンコク湖周辺に残ったが、不当な立ち退き条件を受け入れるように市当局等から、脅迫・威嚇を受けてきた。
○その後、世界銀行の影響などにより、政府は779世帯に対して一定の面積の土地の所
有権を認める姿勢を明らかにしたが、このうちの96世帯に対してプノンペン市は所有権
を認めない姿勢を明らかにした。この96世帯の住民を排除しようと、2011年9月16日、
100人以上の治安部隊と警察が投入され、建物や商店を破壊し、強制立ち退きは敢行され
た。
○その後も、住民たちは自らの所有権、居住権を認めてもらうため、合法的、平和的な抗
議活動を行ってきたが、2012年5月22日、平和的抗議活動をしていた住民たちに軍、
警察による有形力の行使がなされ、女性13人が逮捕された。彼女らはわずか2日後の同年
5月24日、地方裁判所で有罪判決を受け、その後高等裁判所で執行猶予付きの判決が下さ
れたため、彼女らは解放された。なお、13人の裁判に証人として出廷しようとしていた
2人も逮捕された。
○HRNは釈放されたばかりの彼女らに会い、インタビューを行った。
June, 2012 Cambodia Inspection (ボンコクレイク前半)
June, 2012 Cambodia Inspection (ボンコクレイク後半)
◆クラティエ州
○クラティエ州では、カスティン社と、プロマ村のおよそ1000人の住民による紛争が生
じ、土地紛争の末、14歳の少女が殺害されるという事件が起きた。
○カスティン社は1996年にクラティエ州において、森林コンセッションの許可を受け
たとされており、カスティン社は権利を主張し、ゴム園をつくろうとしたが、この土地に
住み、耕作をしていた住民との間でトラブルが生じ、紛争が激化していった。
○そのような状況の中、2012年5月15日、何百人もの重装備の警察と軍が村を封鎖し
た。そして、300人から400人の住民たちが、翌6日早朝に土地を自発的に離れようと移
動を始めた矢先に事件は起きた。同日午前8時半ころ、軍・警察はヘリコプターまで出動
させ、移動しようとする住民たちに実弾で攻撃を加えた。午前9時ころ、14歳の少女ヘン
・ジャンターさんが攻撃に巻き込まれ、警察・軍により射殺されてしまったのである。結
局こうした武力行使の結果、住民らは強制的に退去させられた。
○HRNでは、この少女の両親、家族に会い、インタビューを行った。
○クラティエ州では、カスティン社と、プロマ村のおよそ1000人の住民による紛争が生
じ、土地紛争の末、14歳の少女が殺害されるという事件が起きた。
○カスティン社は1996年にクラティエ州において、森林コンセッションの許可を受け
たとされており、カスティン社は権利を主張し、ゴム園をつくろうとしたが、この土地に
住み、耕作をしていた住民との間でトラブルが生じ、紛争が激化していった。
○そのような状況の中、2012年5月15日、何百人もの重装備の警察と軍が村を封鎖し
た。そして、300人から400人の住民たちが、翌6日早朝に土地を自発的に離れようと移
動を始めた矢先に事件は起きた。同日午前8時半ころ、軍・警察はヘリコプターまで出動
させ、移動しようとする住民たちに実弾で攻撃を加えた。午前9時ころ、14歳の少女ヘン
・ジャンターさんが攻撃に巻き込まれ、警察・軍により射殺されてしまったのである。結
局こうした武力行使の結果、住民らは強制的に退去させられた。
○HRNでは、この少女の両親、家族に会い、インタビューを行った。
Jun,2012 Cambodia Inspection (少女の両親インタビュー)