【イベント】8/28 HRN2周年記念トークショー「止まらない?!私たちと世界の貧しさ―人権は貧困問題を解決できるか」

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2008年8月28日、総会に引き続き、早稲田大学大隈ガーデンハウスにて、ヒューマンライツ・ナウ2周年記念トークショーを開催いたしました。

トークショーに先立ち、HRNの事務局長の伊藤和子から挨拶があり、数日前にアフガニスタンで死亡したペシャワール会の伊藤和也さんに黙祷を捧げました。アフガニスタンの復興支援に取り組むなかで、より良い世界を作ろうとしていた伊藤さんの遺志。それを引き継いでいこうという決意が、沈黙した会場からは感じられたように思います。
メインのトークショーでは、青木美由紀氏(シェア=国際保健協力市民の会)・湯浅誠氏(自立生活サポートセンターもやい事務局長)をゲストに、HRNからは理事長の阿部浩己氏が参加してスピーカー3名による闊達なトークが白熱しました。

日本社会は高度成長期を経て、貧困問題は克服すみの過去の問題だと思われてきたが、現在、20代から30代の若者が急速に「貧困」により生きていけない状況が広がっている―
トークショーの冒頭、湯浅氏からは、日本社会において「もうホームレスになるか自殺するしかありません」(20代の男性から「もやい」に寄せられた相談メール)といった悲痛な声があふれている現状が報告され、現在の日本の貧困問題の深刻さがあらためて浮き彫りになりました。そして、貧困問題というのは、単にお金がないということではなく、五重の排除すなわち、「教育課程」「企業福祉」「家族福祉」「公的福祉」「自分自身」からの排除により、精神的・経済的な「溜め」が奪われた状況を指すのだと貧困を定義し、貧困問題が、まさに人間の尊厳に関わる問題であるということが再確認されました。

 シェア(貧困やエイズの問題に取り組む医療関係者を中心としたNGO)での活動を経て南アフリカから帰国したばかりの青木さんは、薬はあっても食べ物がないために投薬できず死んでしまったエイズ孤児のエピソードを紹介し、五重の排除、最後は、「自分自身」からの排除により尊厳を失っていくということが、アフリカの貧困問題にもまさにあてはまると発言。
 これを受けて、「アマルティア・センがいうように、貧困を『人間の尊厳を維持して生きる能力をはく奪されていること』だと定義すれば、貧困の問題は、まさに人権の問題である」(阿部氏)と、いよいよ貧困問題と人権というトークショーの本題へ。阿部氏が、有名な朝日訴訟の東京地裁判決を引用しながら、「健康で文化的な最低限度の生活」とは、単に「生きて」いればいい、ということではなく、その社会において「人間らしい生活をする」ことであり、それこそが人権であると語ります。
湯浅氏からは、「(全ての人に健康で文化的な最低限度の生活を送る権利があると)言うは易しだけども、人権の議論はなかなか難しいと思う。たとえば、こんなに頑張ってるのに生きていけないなんて可哀想だな、というのがよくある意見だけど、それは裏返せば、頑張ってない人はしょうがないということ。自己責任論の裏返し。頑張ってない人と頑張ってる人を区別するのは差別だから本来の人権の意味からすればおかしい。しかしそういう差別から抜け出すのは非常に難しいのも事実。」と問題提起がなされ、例年通りの本音トークが繰り広げられました。

トークショー終盤、日本や世界の貧困問題を解決していくために、私たちに何ができるのか、ということについて青木氏は「存在する一人一人が変わっていかなければならない。」と指摘、貧困の中、夢や希望を失ってしまった南アフリカの少年が、自分たちのNGOから家庭菜園の作り方を教わるなかで夢を語るようになってくれた体験を紹介し、「NGOとは人を変革する機関である、そういうことを感じた。ナイチンゲールが『健康とは、ただ単に体調が良いだけでなく、自分の持つすべての力を活かしている状況である』といったように、ひとりひとりが自分の人間としての使命を発見できるようにするのが私たちNGOの仕事かなと思う」と語り、NGOの活動の意義を示唆しました。
最後に司会の道あゆみ氏が、「このトークショーをきっかけにして、貧困の問題を解決するために、皆で繋がっていこう。ここにいる皆が動き出せば必ず世界は変わっていく。明日、学校や家庭で誰かに話してくれるだけでいい。」と呼びかけると、会場からも賛同の声が上がりました。会場からは複数の質問や発言が出て、閉会間際まで、外の雷雨をかき消すかのような活発な議論に会場は沸いていました。
HRNでは、今回のトークショーをきっかけに、今後、社会権の実現のために国際人権法を活用していくための活動にも取り組んでいきたいと考えています。