【イベント報告】3月9日(金) 「トークイベント:東日本大震災から7年、被災地の今」村上充氏×岡田広行氏

 

2011年3月11日に発生した東日本大震災から早7年。人びとの記憶からは徐々に忘れ去られ、過去の出来事として認識されつつ震災ですが、実際には、現在でも様々な課題が存在しています。

3月9日、ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクトでは、宮城県気仙沼市で被災者へ向けた医療支援などの活動を行っており、ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクトでともに活動している村上充氏、震災直後より現地取材を続けている東洋経済新報社の岡田広行氏を招いて、被災地の現状や課題について話していただくトークイベント「東日本大震災から7年、被災地の今」を開催しました。

 

ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクトでは東日本大震災発生直後から被災地で活動をしており、

現在でも気仙沼や大船渡において「被災地法律相談」を行っております。

今回のイベントでは、震災プロジェクトのPVも会場にて初披露いたしました。

 

まず、村上氏より、気仙沼市の被災者が抱える問題についてお話がありました。

震災後、行政による医療支援が行われましたが、それは急性期の半年で終了したため、その後、医療難民と言える人々が多く出たと言います。そのため、村上氏は、被災者に対する医療支援の必要性を感じ、医療支援活動を行うようになったそうです。

 

村上氏は気仙沼の現状についてこう語ります。

「気仙沼の場合、高齢化率が高いので、被災者の健康問題が出てきます。現在、高齢者相談室があるのですが、見守り的な観点は弱い上に、夜間や土日祝は休みなので、時間外に起きる問題や、交通の便の悪さなどによる受診控えなどが発生しています。行政の支援が届かないところを補うためのボランティアや、民間の活動がないと被災者の健康は守れないと感じています。」

 

村上氏は、行政からの一方通行ではなくて、住民の声と医療者の声がマッチングした形での「震災医療コミュニケーション」が必要だと言います。しかし、現状では、そうした住民と医療従事者が触れ合う場がなく、被災地で医療支援を行っているのも、村上氏のところのみだそうです。

 

 

続いて、村上氏は、これまでに自身がコーディネートを行った医療ボランティアの実例を紹介しました。

その中には、2012年から月に一度、仮設住宅で医療支援を行っている横浜の医師の存在や、一週間に一度開かれる医療相談会が、被災者の命に関わる病気の早期発見につながったことなどがありました。

村上氏は、こうした活動の意義は大きいと訴えます。

 

村上氏に続いて、岡田氏から、在宅被災者が置かれた状況を中心にお話がありました。

「在宅被災者」とは、津波から家は残ったが、生活再建が難しい方々で、仮設住宅に入った人よりも数が多いと言います。行政の支援は、家がなくなったことを基準にして考えられているので、家が残っていると被災者支援のルートから外れていってしまうとのことです。

 

岡田氏は、震災直後の石巻市の事例を出して、在宅被災者についてこう語りました。

「被害が大きかったので、指定避難所に入れない人が多く出ました。そのため、自分の家に残らざるを得なかった人が多く、電気もガスもない中、一階が浸水している家の二階で生活するなどしている方がいました。また、避難所に行かないと食料などがもらえず、また、行ったとしても食料が残ってないこともあったようです。」

 

 

阪神淡路大震災のあと、家を失った人や在宅被災者には、支援金が支給されるようになったのですが、被災のレベルによって支援金の額が変わってきます。石巻市の場合、一部損壊には1万5000円しか支給されません。

また、損壊の判定について、行政には一軒一軒の家の中まで見る力がないので、おおまかに外観を見るなどして、損壊の程度を決めている状況があるようです。天井が落下し、トイレや風呂が使えない状態でも、一部損壊となるケースがあったと言います。

 

また、日本赤十字から家を失った人には家財道具が支給されましたが、在宅被災者は給付対象外になってしまいました。しかし、実際には、在宅被災者も家電を使える状態にはなかったと岡田氏は説明します。

 

次に、ヒューマンライツ・ナウの伊藤事務局長も含めた3名がトークセッションを行いました。

この中で、村上氏は、「見かけの上では、被災地は復興したかのように映し出されていますが、そこにあるのは災害公営住宅などの建物だけです。被災者の心の支援を今スタートしなければ、いつするのかと問いかけたいです。」と思いを語りました。

 

次に、岡田氏から、「村上さんの活動について、被災地の真ん中でも、『そんなことまでやる必要はない』と言う人がいて、村上さんは小数派としての苦労をされています。」との言葉がありました。

 

伊藤事務局長は、「村上さんの活動がなぜ評価されていないのか?」と疑問を投げかけました。

 

これに対して、村上氏は、「今までになかった活動なので、どういう位置づけなのか、皆さんが判断しかねているのではないだろうか。」と答え、岡田氏は、「被災者は自立しなければならない、そうでない人には甘えがあるという風潮があると思います。実際には、そう単純ではなく、支えを得ることによって自立ができるのです。」と語りました。

 

このあと、会場の方々を交えての質疑応答も行われ、2人の想いが参加者の方々に伝わるイベントとなりました。