【声明】国家平和秩序評議会(NCPO)は タイ国内での人権侵害を直ちに停止すべき

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1.
東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、タイにおける人権状況に関して深刻な懸念を表明する。2014522日、タイ国軍によって確立された国家平和秩序評議会(NCPO)が布告した、憲法の停止を含む数々の戒厳令により、タイ市民の基本的人権と自由は著しく制限されている。

 

すべてのメディアは検閲の対象となり、指定されたすべてのテレビ局およびラジオ局による放送は停止され[1]、NCPOに対する批判的な情報が禁止[2]されるなど表現の自由に対する制限がなされている。第7戒厳令2557は「5人以上の政治的な集まりや集会を禁止する。この令に違反したものには1年未満の禁固または20,000バーツ未満の罰金が科せられる。」と宣告している。


さらなる重大な懸念としては、恣意的な逮捕および拘禁がある。613日、国連の独立専門家は、「軍は政治的指導者、学者、ジャーナリスト、活動家を含む440人以上の人を軍の基地に召集した。このうち、多くが家族や弁護士との接見もないまま拘束され続けている。なかには外部との連絡が一切絶たれたまま知られざる場所に拘束されて、拷問や虐待の危険にさらされる可能性がある[3]。」と言及した。ヒューマンライツ・ナウによせられた信頼のおける現地情報によると、召集および拘留された人々の数は逮捕者を含めると600人以上に及ぶ可能性があり、バンコク以外では召集令状は公表されておらず、招集ないし拘禁されている者の数を特定することが困難だという。

 

2.国連人権高等弁務官であるピレイ氏は22日のクーデター直後、「いかなる緊急事態の処置も国際的な人権基準を満たしていなければならない。また、生存権や拷問の禁止はどのような状況であっても侵害されてはならない[4]。」とタイ国軍を非難した。同氏はまた、複雑な政治問題を対話を通じて解決するために、表現の自由や集会の自由を確保することが重要であると強調した。NCPOによる規制は、国際人権法、特にタイも締約国である市民的及び政治的権利に関する国際規約に保障されている、人権や自由の完全なる尊重・確保義務に明らかに違反している。国家の安全は、人々による基本的人権や自由の正当な行使を抑圧するための口実に使われてはならない。

 

3.よって、ヒューマンライツ・ナウはNCPOに対し、以下を要請する。

 タイ市民の基本的人権や自由(表現の自由、集会の自由、言論の自由、報道の自由、知る権利、法的援助を受ける権利、公正な裁判を受ける権利など)を著しく制約している戒厳令を直ちに撤回すること

 恣意的に逮捕、拘禁されている人々を直ちに解放すること

 法の支配を回復させ、タイの人々が、市民的及び政治的権利に関する国際規約およびタイが批准している他の国際人権条約で認められている人権や自由が保障されるように確保すること。

 



[1]http://www.mfa.go.th/main/en/media-center/3756/46188-Announcement-of-the-National-Peace-and-Order-Maint.html

[2]http://www.mfa.go.th/main/en/media-center/3756/46187-Announcement-of-the-National-Peace-and-Order-Maint.html

[3]http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=14696&LangID=E

[4]http://www.ohchr.org/SP/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=14633&LangID=E