【意見書】福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康・環境・生活破壊に対して、国と東京電力がとるべき措置に関する意見書

福島第一原発事故により、広島型原爆の20~30個分に相当する
放射性物質が漏出していると積算される状況下で、広範な地域に
住む周辺住民、特に放射能被害を受ける危険性がある妊産婦、
乳幼児、子ども、そして若い世代の健康は深刻な危険にさらさ
れています。

政府は、年間被ばく量20ミリシーベルト(以下mSv)を計画的
避難の指示や特定避難勧奨地点の指定の際の基準として用い、
これを上回るおそれのある地域・地点については、避難指示等
の措置を講じるとし、それ以外の地域については何らの補償も
避難の権利も認めず、放射線防護策や除染も国として十分に
推進していません。

HRNは、国際基準、チェルノブイリ事故の経験から自然放射線を
除き1mSv/年を越える地域について、国が人々の健康の権利等を
保護するためのすべての措置、そして補償等の措置をとるよう
求めています。

原発事故から5か月が経過し、「暫定基準」などではなく恒久
対策が求められている今、国際基準から著しくかい離した緩和
された基準に基づき、住民の健康を危険にさらすことはこれ
以上許されない状況です。日本は、チェルノブイリ事故後の
旧ソ連の対応より著しく後退した対策しか取っていませんが、
人権を尊重する国として恥ずかしくない対策を取る姿勢にただち
に転換すべきです。

本提言書でHRNは以下のことを国と東京電力に求めています。

 日本政府および東京電力株式会社に対し、国および加害企業
の責任として、少なくとも以下の責任を果たすよう求める。

1 国際基準およびチェルノブイリ原発事故後の汚染区域の
設定に基づき、自然放射線を除く年間被ばく量が1mSvを超える
すべての地域について、住民の健康を保護し、住環境を取り
戻すためのすべての必要な措置をとること

2 チェルノブイリ原発事故後、旧ソ連、ロシア共和国、ウクライナ
共和国などにおいて、事故による年間被ばく量が5ミリシーベルト
を超える汚染地域が移住地域と指定され、年間被ばく量が1mミリ
シーベルトを超える地域の住民が国の援助と補償に基づく避難を
受ける権利を認められ、食糧、医療、生活手段の援助がなされた
ことを参考に、

・自然放射線を除く年間被ばく量が1ミリシーベルトを超える
地域の住民に発生した損害に対し補償措置を行い、避難により
生活基盤を奪われた人々に対し、包括的な生活再建を保障すること

・自然放射線を除く年間被ばく量が1ミリシーベルトを超える
地域について、放射線汚染の恒常的モニタリングと住民への開示、
一刻も早い除染による以前の状態への回復、放射線防護、
食糧供給、内部被ばくを含む長期的な健康影響調査・医療保障
などの措置を講じ、人々を放射線被害から守ること

・汚染の実態に即した避難地域の再検討を行うこと

 

以上

 

20110817放射線意見書(最終・修正済).pdf