【声明】イスラエルによる公海上での民間人攻撃を非難し、国際的な独立調査団の派遣を求める

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      イスラエルによる公海上での民間人攻撃を非難し
            国際的な独立調査団の派遣を求める

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2010年5月31日早朝,イスラエル海軍がガザ地帯へと航行していた
「ガザ自由船団Gaza Freedom Flotilla」を国際水域で攻撃した。

この民間船団には、国際的市民連帯活動家とともにジャーナリスト、
政治家などの多くの民間人が乗船し、イスラエルが封鎖を継続している
ガザ地区へ人道支援物資を運ぼうと公海上を航行していた。
船団に乗り込んできたイスラエル軍の特殊部隊による攻撃で、
少なくても9人の民間人が死亡し、約30人の負傷者が出たことが
これまでに判明している。

東京に本拠地を置く国際人権NGOヒューマンライツ*ナウは、
尊い人命を奪ったイスラエルによる上記の軍事行動を強く非難する。

イスラエル軍は、乗船していた民間人を標的として、銃で発砲するなど、
武器を使用して攻撃し、死傷に至らせた。非戦闘員に対する殺害・攻撃が、
国際法の重大な違反であることは明らかである。
仮にイスラエルが主張するように、民間人から棍棒などによる抵抗があったとしても、
民間人に対し武力を行使し、人命を奪う行為は明らかに均衡性に欠けるものであり、
到底許されない。
また、テロリストが存在したという単なる「疑い」を根拠として
民間人を攻撃するイスラエルの軍事行動のあり方は、
国際人道法の原則を踏みにじるものである。

イスラエルによるガザ地区に対する3年以上にわたる封鎖政策によって、
生活必需品や復興に関わる物資を得ることを阻まれ、
ガザに住む人々は困窮し、ガザは極度の人道上の危機状態に陥っている。
船団は困窮する人々に物資を届けようとしていたものである。

イスラエルによる封鎖は、ジュネーブ第4条約33条で禁止されている
「集団懲罰」に該当する違法なものであり、
国際社会は繰り返し封鎖の解除を求めてきたが、イスラエルはこれを一切無視している。
また、占領国であるイスラエルは本来住民の食糧及び医療品の供給を確保するとともに、
民間人への人道支援物資の自由通過を許可する義務
(ジュネーブ第4条約第55項、同条約23条)を負っている。
こうしたジュネーブ条約上の義務に反する行為を公然と続ける一方、
人道物資を届けようとする船団の民間人を殺害するイスラエルの行為が
国際法上許されないことは明らかである。

 ヒューマンライツ・ナウは、本件のような重大な人権侵害行為について、
不処罰が容認されることがあってはならないと考える。

 ただちに、独立した、透明性の高い、公正な国際的調査が実施されなければならず、
責任者は適切に処罰されなければならない。
イスラエル政府は完全な説明責任を果たす必要がある。
国連安保理は6月1日、本件について国際基準に基づく迅速かつ公平で
信頼性・透明性を確保した調査を求める議長声明を発表、
国連人権理事会は同2日、イスラエルの攻撃に関する国際法違反を調査する
国際独立事実調査団を派遣することを決議し(A/HRC/14/L.1)、
国連事務総長も調査団設置を提案している。

これに対し、イスラエルは国際調査を拒否する姿勢を示し、
自ら調査を行うとしているが、イスラエルの身内による調査によって独立性、
公正性が確保できるとは考えられない。

2008年12月から2009年1月にかけてのガザ紛争についても、
多大な人命を奪った責任が問われないまま今日に至っている。
イスラエルはこの問題に関する国連独立調査団(ゴールドストーン調査団)の勧告にも関わらず、
人権侵害に関する真摯な調査を行わず、戦争犯罪の責任を一切否定したままである。

どんなに人権侵害が繰り返され人命が奪われても、その責任が問われず、
不処罰が放置される状況が続く限り、人権侵害は再び繰り返されるであろう。

ヒューマンライツ・ナウは、イスラエル政府に対し、

●今回の事態に関して保有するすべての情報を公開すること
●今回の人権侵害の事実関係と責任の所在を明らかにするための独立した
国際事実調査団を受け入れ、これに完全に協力し、説明責任を果すこと
●パレスチナ人など、未だに拘束中のすべての乗船者を釈放すること
●ガザ地区に対する封鎖をただちに解除すること

を強く求めるとともに、国際社会に対し、

●今回の事態を調査する、公平で独立した国際調査団による調査を求める
一致した声をあげ、イスラエルに強くその受け入れ、協力を迫っていくこと
●人道危機に瀕したガザ地区の封鎖をただちに解除するよう
イスラエルに強く働きかけること

を求める。

日本政府は、6月1日の安保理における協議では、
徹底した国際調査を求める意見を表明していたにも関わらず、
6月2日の人権理事会決議採択にあたっては棄権をしている。
ヒューマンライツ・ナウは、日本政府の不明確な態度に遺憾の意を表するとともに、
今後、この人権問題の真相究明のためにイニシアティブを発揮することを求める。

2010/6/9
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ