【声明】ビルマの政治犯釈放に関する声明~今なお残る政治犯の釈放と、弾圧立法の廃止を~

ミャンマー(ビルマ)の政治犯釈放に関する声明

  ~今なお残る政治犯の釈放と、弾圧立法の廃止を~

                           2012.1.18

              国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ

 

 

1     2012年1月13日、ミャンマー(ビルマ)にて、多数の政治犯が釈放された。

ビルマの政治犯を支援する民間団体、Assistance Association for Political Prisoners (AAPP)によれば、15日現在で釈放が確認されている政治犯は287人にのぼっている。[1]  今回の釈放には「88年世代学生」グループの結成者であるミンコーナイン氏、コーコージー氏、ニーラーテイン氏、全ビルマ学生連盟のチョ―コーコー氏、更にはシャン民族運動指導者クントゥンウー、ロヒンギャ族のチョーミン氏、仏教僧のウー・ガンビラ師、ジャーナリストのゾーテットゥウェ氏DVBフラフラウィン氏や、ブロガーのネーポンラッ氏らなど、ビルマにおける人権の回復と民主化を求めて活動してきた著名な政治犯が多く含まれる。[2]

  これら主要な政治犯の釈放は長らく待たれていたことであり、民主化に向けた貴重な一歩である。日本を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)はこの動きを歓迎する。そして、この動きをさらに本格的な民主化と人権の回復、国民和解につなげていくことが期待される。

2     今回の釈放は民主化・人権回復への一歩ではあるが、課題は多く残されている。

釈放された活動家、そしてビルマのすべての市民に対し、今後、言論、表現、集会、結社の自由等すべての基本的人権を完全に保障し、政治的活動の自由を保障することが必要である。ところが、政治犯が長期的な拘禁を強いられてきた根拠である国家緊急事態法等、治安立法は未だ温存され、2008年の憲法は、人権を「法律の範囲で」保障すると規定するに過ぎない。政権の一存で再び弾圧がなされないようにするため、すべての弾圧立法の改廃と2008年憲法の人権条項の見直しは急務である。

同時に、2012年4月に予定される連邦議会補選をはじめ、今後のすべての政治的プロセスに、釈放された活動家が参加できるようにすることが民主主義の確立のために不可欠である。

さらに、今回数多くの政治犯が釈放されたものの、AAPPは、未だ1000人を超える政治犯が投獄されたままであると主張している。[3] また、ビルマ、テインセイン大統領の上級政治顧問は、2011年の10月に、「約600人の良心の囚人が、いまだにビルマ国内に収監されている」と 語ったと報道されている。同政治顧問は、この数字の差異は 「良心の囚人と一般の囚人の定義の仕方による」という発言もしている。[4] 未だに政治犯が投獄されている状況は継続しているのであり、問題は解決済みではない。政治犯の待遇は、医療・衛生等極めて劣悪で人道的な取り扱いとはいえないことがかねてより非難されている。クィンタナ特別報告者も1月16日付のステートメントで指摘する通り、未だ解放されていない政治犯を即時・無条件で解放することを求める。

 

HRNは、ビルマの人権の回復と民主化の一層の進展を期待し、この動きが戻ることがないよう、現政権に対し、以下のとおり求める。

1            釈放された活動家の政治活動、選挙プロセスへの参加を完全に保障すること

2            釈放された活動家を含むすべての市民の言論、表現、集会、結社の自由を完全に保障すること

3            弾圧立法の廃止と憲法の人権条項の修正にただちに着手すること

4            残された政治犯を即時・無条件で釈放すること

 

 


 

[1] Date by Assistance Association for Political Prisoners 15 January 2012 (http://www.aappb.org/)

[2] News by Human Rights Watch 13 January 2012 (http://www.hrw.org/news/2012/01/13/burma-political-prisoners-released)

[4] News by Amnesty International 13 January 2012 (http://www.amnesty.org/en/news/myanmar-political-prisoner-release-2012-01-13)