1.香港市民による香港行政長官選挙の資格制限を巡っての抗議活動が始まって1ヶ月近く経過した。東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、香港における表現の自由・集会の自由を巡る人権状況を憂慮し、香港政府に対して,デモや集会に参加する市民に対する暴力的で不当な介入を行わないよう強く求める。
2.2014年9月28日に始まった香港市民によるデモや座り込みなどの抗議活動は、2017年に行われる香港行政長官選挙を巡って、中国全国人民代表大会(全人代)が立候補者に資格制限を課すと決定したことに対し資格制限の撤廃を求める活動であるが、当初より非暴力の手段が用いられてきた。
しかし半月以上経った今でも警察と抗議活動を続けているデモ参加者との衝突が激化するに至っている
。10月17日から二夜にわたって続いた衝突で香港警察は、催涙弾およびスプレーを旺角(モンコック)の繁華街で座り込みなどを行っていた参加者に対し使用した。これらは、デモ2日目から使用され、国際的な非難を受けていたものである。
さらに、香港警察は、参加者を警棒で殴打するなどしたうえ、10月15日までに逮捕された約45名のデモ参加者に加え、新たに少なくとも26名以上の学生を含むデモの参加者を暴行罪や器物損壊罪の疑いにより逮捕した
。10月21日香港政府は今回のデモを指揮してきた学生団体の代表者らとはじめての対話を実現したが、香港政府からの歩み寄りはみられず、学生側は次回の対話を拒否する可能性もあると報じられている
。
3.HRNは、デモ参加者に対する香港政府の暴力的対応に対して懸念を表明する。
香港では、中国返還時に制定された香港特別行政区基本法で言論の自由,集会の自由,デモに参加する自由が保障されている
。また、同法で不当な逮捕の禁止を定めている他 、香港公安条例(Hong Kong Public Order
Ordinance)の46条では警察の暴力的行為は「必要」である時以外は許されていない。デモ参加者に対する弾圧・不当逮捕・恣意的逮捕は、香港の基本法等に違反するうえ、国際的な人権基準に反する人権侵害に該当する。
4.私たちHRNは,香港政府のデモに対する弾圧に抗議するととともに,改めて、以下のことを求める。
⑴ デモ参加者の表現の自由,集会の自由,デモに参加する自由を尊重するとともに,平和的に行われているデモに対して,暴力的または強行的な手段を用いてその排除を行わないこと。
⑵ デモ参加者の人身の自由を尊重するとともに,デモに参加したことを理由に逮捕された者全員を速やかに釈放すること。
⑶ デモ参加者との直接対話を重ね、多くの市民から支持を受けられる公正な制度のもと,行政長官選挙を行うこと。
以 上