ヒューマンライツ・ナウの目指すもの

ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子(弁護士)

HRN事務局長 伊藤和子1994年弁護士登録 東京弁護士会所属。 弁護士登録以来、冤罪・子ども・女性の権利など、人権に関わる事件をてがける。2004年よりニューヨーク大学ロースクール客員研究員として留学、その後、ジュネーブ国連人権小委員会インターン、ニューヨークで国際人権NGO Center for Constitutional Rightsのインターン、NGO国連代表代理などを経て帰国。2006年7月にヒューマンライツ・ナウの立上げに関わり、現在、事務局長。東京弁護士会および日弁連の両性の平等に関する委員会委員長を歴任。 主な著作は、岩波ジュニア新書「人権は国境を越えて」、合同出版「人権で世界を変える30の方法」(共編著)。

ヒューマンライツ・ナウはどんな活動をするNGOなのですか?

ヒューマンライツ・ナウは、国境を越えて、世界・特にアジア地域の人権問題の解決のために活動するNGOです。世界の人権侵害をウォッチすること、レポートすること、そして政策提言をすることが私たちの活動の柱です。世界を見渡すと、日本では想像できないようなひどい人権侵害によって、弱い立場の人たちが犠牲になっています。私たちは、こうした人権侵害に光をあてて、世界に発信し、改善を実現するための政策提言を行います。ヒューマンライツ・ナウのプライオリティは、もっとも深刻な人権侵害をなくす、そして女性や子どもなど、最も弱い立場にいる人たちの人権を守るために最善を尽くすということです。

このような団体をつくろうと思ったきっかけは?

私は1995年に、国連の第4回世界女性会議のNGO会議に弁護士として参加し、アジア・アフリカから参加した女性たちの実情を聞いてとてもショックを受けました。インドでは持参金の金額が少ない、という理由で、1日100人近い女性たちが夫やその家族から殺されています。フィリピンやタイでは、多くの少女たちが農村から売られて、売春を強制され、エイズにかかって死んでいました。ルワンダから来た女性は、内戦によって、夫も子どもも目の前で殺された上、レイプをされた、たくさんの女性が同じ境遇にある、と証言しました。同じ地球に住んで同じ時代を生きているのに、なぜ彼らの人権はこんなにもふみにじられているのか、市民として、法律家としてできることはなにか、と思ったのがきっかけです。その後ニューヨークに留学して国際人権法などを学び、NGOの立場で国連の活動に参加するうちに、欧米には、世界の人権問題に取り組み、国際世論を動かして事態に変化をもたらしている人権NGOがたくさんあることを知りました。そして、私を含むニューヨーク留学中の日本人の若手弁護士の呼びかけで、国境を越えてグローバルな人権問題を専門に扱う日本発のNGOを立ち上げることを決め、2006年夏にヒューマンライツ・ナウを発足しました。

世界には、貧困やエイズ、紛争、難民など様々な問題がありますが、なぜ「人権」に取り組むのでしょうか?

人権は、人間らしく生きるために、すべての人にとってかけがえのないものです。紛争の過程では生きる権利、暴力を受けない権利が脅かされますし、貧困は、食べたり、学校に行ったり、家に住める、というあたりまえの権利を奪っています。私たちは人権、という視点から世界の問題に取り組みます。

紛争や飢餓など、人道的な危機が発生したとき、国際機関やNGOが難民キャンプなどに薬や食糧を届けるなどの緊急人道援助活動をしますね。こうした活動は人々の命をつなぐために本当に大切ですが、一過性のものに終わりがちです。私たちは、長期的な視点に立って、社会の仕組みを「人権」の視点で変える、ということが大切だと思います。なぜ、人道危機が起き、貧困が進むのか、その背景には人権侵害が放置される社会の仕組みがあると思います。

私たちは難民や人道危機を生み出さない社会の仕組みをつくり、人々の苦しみの根本にある人権侵害そのものを停止させるために活動します。

日本発で、どんな活動をしているのですか?

光のあたっていない深刻な人権侵害について調査し、レポートを発表します。ヒューマンライツ・ナウのスタッフには国際人権法を専門とする法律家が多いので、法律的な勧告も行います。日本政府、日本の市民社会に影響を与え、国内でのロビー活動を行いますが、同時に、国連や現地政府への直接の働きかけを、世界の人権NGOと一緒に行います。国際的なメディア、NGO、国連の専門家にもレポートを送って、国際社会として人権侵害に苦しむ人々のための行動を促していきます。また、アジア地域の若い人権活動家にトレーニングを行うなど、困難ななかで活動している人権活動家への様々なサポートもしています。

市民はヒューマンライツ・ナウの活動に参加できるのですか?

いまは、法律家・学生が会員の多くを占めていますが、私たちは、多くの市民の方々に会員になっていただきたいと思っています。世界の問題を解決するのにも、まず自分の周り、そして日本国内で意識喚起が進むことが大切だと思います。まず1人でも多くの方に人権侵害について知ってもらい、それを周りにいろんなやり方で伝えてほしい。是非、キャンペーンを担う活動に市民の方々に参加していただければ、と思っています。

ヒューマンライツ・ナウの活動資金はどこから来ているのですか?

ヒューマンライツ・ナウは、会員のみなさまからの会費収入、民間からの寄付と助成金によって財政を支えています。少しずつ海外拠点を拡大してきましたが、今後、フルタイムのリサーチャー、ロビイスト、キャンペーン担当など、人権に関わるプロフェッショナルなスタッフをたくさん雇って、国内でも国際社会でも影響力を強めていきたいと思っています。是非、多くの方にヒューマンライツ・ナウを財政的にも応援していただけると嬉しいです。