(2007年5月30日)
国連の独立人権専門家が10日間のアメリカ訪問調査を終え、安全保障と人権の分野でアメリカの指導的役割が継続していくことを認める一方、テロとの戦いにおいてアメリカが選択したいくつかの方策を批判した。
テロ対策における人権と基本的自由の促進擁護についての特別報告者、マーティン・シャイニン氏は予備的な調査結果で、アメリカがグアンタナモ湾、イラク、アフガニスタン、その他機密とされている場所に捕虜を収容していること、軍事裁判を許容していること、そして”強化された取調べ手法”に懸念を表明した。
シャイニン氏は5月16日から25日までの滞在で、移民と難民問題、(テロリスト対策における差別的な)選別とコミュニティー啓発上の問題、国内での監視活動、報道の自由などの分野で、”困惑させられる”事態の展開を見いだしたと述べた。同氏は無償の専門家として、個人の資格で、国連人権委員会に報告する。
5月25日ワシントンでの記者会見におけるプレスリリースで、同特別報告者は「アメリカにおいて長く伝統的に個人の権利、法の支配、強いレベルの司法による保護が尊重されてきたことに、深い敬意を示す。」と述べた。 http://www.unhchr.ch/huricane/huricane.nsf/view01/338107B9FD5A33CDC12572EA005286F8?opendocument
シャイニン氏は、「法の支配を尊重するアメリカの伝統が存在し、アメリカ憲法のもと自己修正のメカニズムが存在しているにも拘わらず、9.11事件以降、人権擁護のための多くの重要なメカニズムが、法律上も実務上も撤廃されたりあいまいにされたりしていることは極めて嘆かわしい。」と述べた。
同氏の指摘によると、人権保護を弱める主たる法文書は、アメリカ愛国者法(2001)、捕虜取扱い法(2005)、軍事委員会法(MCA)(2006)、そして大統領命令その他のプログラムで、それらのいくつかは機密扱いとなっている。
シャイニン氏は、軍事委員会法がいくつかの領域でアメリカの人権法上の国際的義務に反するものであると2006年10月に述べ、その際に訪問の要請を出していたが、これに応じて、アメリカ政府が招請をしたのである。
今回の訪問で国務省、国土安全保障省、国防省、司法省の専門家、議会やNGOのメンバーを訪れた上で、同氏は軍事委員会の問題は実に深刻な懸念を引き起こすものであると主張した。
そこに含まれる問題とは、軍事委員会の権限と構成、強要によって得られた証拠を利用する可能性、死刑宣告の可能性などの問題である。
シャイニン氏は、ジョージ・ブッシュ大統領が表明した言葉どおりグアンタナモ湾捕虜収容所を閉鎖する方向へ動き出すこと、グアンタナモとイラク、アフガニスタンにいる捕虜の公正な処遇を確実にするよう強く求めた。
すべての領域において、アメリカがテロとの戦いと人権の両方で主導的地位を持つことこそ、真っ先に心に留められるべきであるとも同氏は述べた。
特別報告者はそれゆえに今回の自らの訪問を、テロとの戦いという文脈においても、アメリカが人権尊重のよき見本としての役割を取り戻すプロセスへの第一歩であると見ていることを、アメリカが”人権の敵”になってしまったという認識を退けつつ、強調した。
同氏はアメリカを「今もなお誇れるものの多い国である。」と評した。
より包括的なレポートは人権理事会に提出され、その上で公開されると述べた。
“While hailing US rights traditions, UN expert voices concern at anti-terror steps”
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=22737&Cr=terror&Cr1=&Kw1=US&Kw2=rights&Kw3=expert