【世界の人権・イラク】2007/10/11 「広がる人権侵害に対策が必要」と国連が報告

(ニューヨーク 2007年10月11日)

国際連合イラク支援ミッション(UNAMI:http://www.uniraq.org/)は、本日レポートを発表し、人権侵害の広がりを報告し、具体的対応策を勧告した。拘留者に対する適正手続き、(部族内女性の)「名誉の殺人」の加害者処罰、イラクで展開する民間軍事会社による死亡事件の調査などが取り上げられた。

 今回の人権レポート(第11回目、年4回刊行)は、「この問題について、イラク政府が情報開示に応じなかった」ため、具体的な被害者数は載せていない。
( http://www.uniraq.org/FileLib/misc/HR%20Report%20Apr%20Jun%202007%20EN.pdf )

 レポートによると、引き続き一般市民が武装グループによる被害にあっており、それは戦闘員と市民を区別しない者たちによる自爆攻撃、誘拐、そして超法規的処刑などに及ぶ。暴力はバグダッド周辺に多発しているが、モスルやバスラといった都市にも拡大している。被害者数に民族的な偏りはないが、ジャーナリストや弁護士など専門職にある人が多く標的になっている。同報告は、このような組織的な、あるいは広範囲にわたる一般市民への攻撃は、人道に対する罪に匹敵し、戦争に関する法規(人道法)に違反しており、加害者は訴追されねばならない、と警告する。

 UNAMIはレポートを通じ、反乱グループや武装民兵団に、一般市民への攻撃と人質行為をやめるよう、また現在の拘束者を解放するよう要求している。政府には、新しい政策を実行して法執行官を厳しく審査することを求め、責任の所在を明らかにすることの重要性を強調している。また政府及び国の各機関に対しては、現行のバグダッド安全計画に基づき逮捕された被疑者の扱いについて、よりよい司法的監督の枠組みを確立するためにさらなる行動をとること、報告によればイラク政府およびクルド自治政府が運営する施設において行われている拷問について、すみやかに解決に取り組むことを求めている。

 さらに、ブラックウォーター軍事会社などイラクに軍事展開する民間受託会社について最近メディアでとりあげられていることに言及し、民間軍事会社に依存すると、一般市民と戦闘員の区別を曖昧にする危険があるとして、赤十字国際委員会の立場を支持した。 

 アメリカ当局に対して、民間委託先によると報告されている死亡事件を精査し、正当化し難い理由で殺人が起きた場合は常に責任者の責任を問う実効的な仕組みをうち立てるように促した。

 「多国籍軍による不法な殺害についての信頼できる申立てをすべて、徹底的に迅速かつ公平に調査しなくてはならない。過度のあるいは無差別の武力を用いたと認められる隊員に、適切な処分を下すべきである。そしてそれらの事件の調査の開始、結果内容は公開されなくてはならない。」と報告書は述べている。

 レポートは司法の体制について、懸念を表している。拘留が長引いていること、拘留者について迅速に手続きが進まないことなどの問題である。UNAMIのインタビューに答えて、拘留者の大多数が語ったことによると、多くの場合、司法官への最初の送致までに2ヶ月を要するという遅滞があり、さらに、次の段階について、いつどこへ移送され、どれくらいの期間拘束されるのか、何の説明もないという。緊急を要する問題として、イラク政府と司法当局は、これらの問題に取り組むのに、すべての必要な手段をとる必要がある。

UNAMIは、多国籍軍についても、自由権規約に明記された基本的適正手続きの保障を遵守するよう求めている。

“IRAQ: UN reports widespread rights abuses, urges response measures”
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=24263&Cr=Iraq&Cr1=