(2009年10月22日 ニューヨーク)
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の状況を監視している、国連の独立専門家が本日提出した最新の報告書によると、北朝鮮の人権状況は統治体制による圧制の結果、いまだ最悪の状況にあるという。
北朝鮮の人権状況に関する国連特別報告者であるヴィティット・ムンタボーン氏は、「欠乏からの自由、恐怖からの自由、差別からの自由、迫害からの自由、そして搾取からの自由は、侵害が繰り返される驚くべき状況におかれ、不処罰のまま政権内の権力者らによって大きく無視されている」と述べた。
「これらは、人権だけではなく国際の平和及び安全をも脅かすものである」とムンタボーン氏は国連総会への報告書の中で述べている。
この報告書によれば、北朝鮮では約900万人の人々が食糧不足に苦しんでいるが、国際的な支援の不足から、そのうち世界食糧計画(WFP)の支援が届くのは200万人にも満たないという。そして、同報告書は、このような状況が政府の核実験やミサイル実験に対する反響に影響を受けていることは「疑いない」とする。
「食糧支援は重要である」とムンタボーン氏は国連総会での報告後、ニューヨークで記者らに対して述べた。同氏は、「食糧支援はアカウンタビリティが確保されているかの監視を必要とするということを心に留めて支援されるべきである。(監視の)アクセスがないところに、食糧はない。」と呼びかけた。
ムンタボーン氏は、北朝鮮の昨年の貿易輸出は、数10億ドルにのぼり、その隣国である韓国よりもずっと豊富な天然資源を保有しているという事実を強調した。
「北朝鮮は貧しい国ではない。しかし、お金は人々のために使われていない」、「人々は、公正な予算の分配を受ける権利、持続可能な成長へのアクセスという観点からの貿易による利益を受ける権利を与えられるべきである。」と同氏は記者らに語った。
形式的には憲法に様々な保障が規定されているが、北朝鮮の人々は、「迫害、弾圧、集団処罰、拷問、恣意的な処刑、公開処刑等にさらされている。」と同報告者はいう。
さらに、報告書によると、人々はお互いを通報しあうよう圧力を受け、国家が国民を広範に監視するようなシステムの中で継続的な恐怖を感じて生活しており、役人すらも、同僚同士で「内部告発」しあうことが推奨されているため、不安の中で生きているという。
「何年にもわたり、政府は家族や地域社会にまで浸透している不信の文化、分裂と支配の政策を生み出してきた。」
メディアは厳しい検閲を受け、「巨大なプロパガンダマシーンの支柱」となっていると報告書は指摘する。さらに、大韓民国(韓国)からの本を読むことはスパイ罪として罪に問われる可能性があり、当局の許可なしにコンピューターを所有すること、インターネットを使用することは禁止され、外国のビデオを見ることも禁止されていると報告書は付け加える。
報告書の中で、人権専門家である同氏は、国連や他の機関と連携して効果的な食糧の供給と、食糧へのアクセスを確保するための措置をとること、法改正や、人権を尊重すべきというよりはっきりとした法執行機関に対する指導、アカウンタビリティ確保のため関連する能力開発の実施や(法執行機関の)仕事の監視などによって、公開処刑や人の安全に対する侵害を終わらせることによって、国内の恐怖要因を解消する措置をとること、そして軍事に費やす予算を社会セクターに移し民主化プロセスを開始するための措置をとることなど北朝鮮政府に対して多くの勧告をしている。
同報告者は、2004年にその任務が設置されて以来、その任務を務め、2010年に国連人権理事会に在職期間の最終報告書を提出する予定である。
“UN expert spotlights ‘abysmal’ human rights situation in DPR Korea”
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=32681&Cr=dprk&Cr1