【世界の人権・スリランカ】2007/12/27 国連人権専門家が国内避難民支援のための対策を勧告

(20071227)

 スリランカの内戦によって国内避難民となった、数十万の人々を支援するため、多くの努力が払われてきたが、安全と生活の糧を確保し、通常の生活に戻れるようにするには、さらなる支援が必要であると、独立の国連人権専門家は、今回の同国への訪問の後、語った。

 

「スリランカ政府は、国際社会から不可欠の援助を受けて、2004年津波被災者の多くの生活再建を果たしただけでなく、2006年以来の戦闘の激化によって住居を追われた人々にも、少なからず援助の努力を行ってきた。」 ウォルター・カリン氏は、121421日の同国訪問の後に発表した声明で、こう述べた。スリランカは、政府軍とタミル・イーラム解放の虎(LTTE)との長年の紛争に、苦しんでいる。

 

国内避難民の人権に関する事務総長特別代表カリン氏は、訪問中、政府要人および市民社会・国際社会の代表と、首都コロンボで会った。

 

同氏はまた、プタラム、バブニヤ、トリンコマリー、バティカロアの各地区を訪れ、国内避難民、帰還者、コミュニティや宗教のリーダー、治安当局、NGOや国連の職員と会った。キリノクチに出向き、LTTEと人道上の問題および保護についての懸念を話し合うことは、できなかった。

 

20064月から20073月までに東部州の家から逃げた22万人以上のうち大多数は帰還しており、暫定的なシェルターの供給を受け、元の生活を取り戻しつつあると、カリン氏は述べている。

 

とはいえ、治安、民生、人道援助のアクセスといった分野で、焦点を絞った対策をとることが、「短期的にも、また長期的にも、帰還後の生活が持続されるために不可欠である。」と、カリン氏は強調した。

 

カリン氏は、国内避難民にとっての懸念の中心は、物理的な身体の安全であることを確認した。LTTEによる継続的な侵入や攻撃、さらには失踪、拉致、略奪など多くの危険要因によって、話をした人々が「蔓延する恐怖と不安の感覚」に苛まれていることに、衝撃を受けたと言う。

 

カリン氏の見るところによれば、国内避難民および帰還者にとって、もうひとつの大きな悩みは生活の糧へのアクセスの手段である。彼は、当局が課し、または治安上の危険による、大きな制約が残っていることに言及した。同氏は当局に対し、人々が十分に生活の糧を得るためのアクセス手段を完全に回復するよう求めた。

 

カリン氏は、スリランカ政府と国内避難民、そして国際社会のメンバーが、いっそう情報を共有したり対話を持つことで、蔓延する不安感を和らげ、帰還者の社会復帰が促進されるであろうと述べた。また、帰還する地域で人道的援助にあたるNGOが直面している課題に触れ、「保護にあたる(国際)機関やNGOのアクセスを改善することによって、国内避難民の間に安心感が高まるだろう。なぜなら、これらの機関は、個々の問題を特定し、各地での解決を迅速に手助けすることができるからだ。」と述べた。 一方、エイド・ワーカー(救援活動従事者)への脅迫、拉致、殺害、国連車両およびスタッフの探索、人道支援物資の略奪などの問題があり、いくつかの事件では警察当局の動きが鈍いことにも、懸念を表明した。

 

国内避難民にとって、ひとつは、平常な生活を取り戻し、まともな住居と生活物資やサービスへの完全なアクセスを認めること、もうひとつは、最終的に帰還を選択する権利と所有権を保護すること、このふたつは(共に重要であり)、二者択一のものではない、とカリン氏は強調した。

 

「持続可能な解決策を見つけることによって、国内避難民および帰還者が十全に人権を享受できるだけでなく、この国の安定の回復に決定的な貢献をすることになる。この分野で大きな努力が払われることは、スリランカの継続的な平和に向けた、重要な一歩となる。」とカリン氏は述べた。

 

同代表はジュネーブの国連人権理事会に報告書を提出する。スリランカに加えて、同氏は近時、中央アフリカ共和国、アゼルバイジャン、コートジボワールを訪問している。

 

 Sri Lanka: UN expert urges targeted measures to assist internally displaced”

http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=25170&Cr=sri&Cr1=lanka&Kw1=Sri+Lanka&Kw2=&Kw3=#