国際独立有識者グループ 声明
2007年6月11日
2007年6月1日、国際独立有識者グループ(IIGEP)は、スリランカ大統領に対し、最初の中間報告を提出した。 この報告書は、深刻な人権侵害申立に関する大統領下の事実調査委員会(調査委員会)に対するIIGEPの見解と懸念を明らかにしている。
我々は、本調査委員会が、2006年11月の発足以来、なんら特筆すべき捜査・調査の進展を見せていないことを大統領に報告した。加えて、2007年2月の開催以来、我々は、幾つもの懸念を本調査委員会及びスリランカ政府に対して表明してきた。 調査委員会の独立性、スケジュール設定、証人保護の仕組みの現状は不十分で国際的な規範・基準を満たすものではなく、スリランカ政府と調査委員会に対する我々の懸念は未だ解消されていない。
独立性について
我々は、司法長官局(Attorney General’s Department)が、調査委員会に対する法的顧問の役割を果たしていることに対して懸念を抱いている。 司法長官局は、スリランカ政府の主席法律顧問である。司法長官局の検察官たちは、本調査委員会が調査することとなったこれらの事件の捜査に従前より従事していた。これは、司法長官局の検察官は、自分で自分を捜査することとなるかもしれないことを意味する。さらに、検察官たちは、委員会の重要証人として召喚されることも考えられる。我々は、こうした事態は深刻な利益相反で透明性を欠き、本調査委員会の信頼性及び社会から信任を受けるために不可欠である独立性、公平性に関する国際的・国内的基準を害していると考える。
また、我々は、調査委員会の予算が大統領官房により管理されていることを懸念する。調査委員会は、人材管理及び業務遂行の権限行使に足りる予算的独立性を有していない。特に、調査委員会には、永久的な秘密保持、被害者の安全と尊厳の確保、証人保護の仕組みの確立のため、十分な資金が必要である。
スケジュールについて
我々は、調査委員会が、2006年11月に発足したのにもかかわらず、6ヶ月後の2007年5月まで準備的な捜査や審問さえ行わなかったことを懸念する。今日に至るまで、内部的な手続きは依然不透明である。詳細な調査計画は公表されておらず、必要不可欠な職員さえまだ十分に採用されていない。調査部及び証人保護部は機能していない。また、重要なことに、これらの事件の証拠で、政府が保有していると知られているものが、我々に対し、収集・開示されていない。 こうした不必要な遅延は、調査委員会が任務を迅速に遂行する能力に対する社会の信頼を損なうものだ。
証人保護について
我々は、スリランカ法に、十分な被害者及び証人保護の規定がないことを懸念する。 調査委員会の任務たる深刻な人権侵害の調査を行うにあたり、証人保護のシステムは必ず必要である。 証人と被害者を保護するため、速やかに、国際的な規範・基準に合致する立法を行い、これを施行するべきである。
調査委員会の被害者及び証人保護のシステムが機能していないことは遺憾である。 適切な立法、効果的な組織に欠け、保護ユニットも機能しない中で、2007年5月14日、調査委員会が、市民に証拠を提供するように呼びかけたことは理解に苦しむ。 調査委員会は、証人保護のための法律がないまま活動しており、証人の安全を保障できない。 今後、被害者や証人を召喚・喚問すれば、同人らは身の安全に対する脅威を感じ、進んで証拠を提出することを躊躇するであろう。
権限について
大統領令は、調査委員会の活動の範囲を、過去に起きた事件の事実調査に限定している。調査委員会の主たる業務は、情報を収集し、16の特定の事件を含む2005年8月1日以降に発生したと申立られた深刻な人権侵害について捜査・審問を行い、当該事件についての過去の捜査を検証することにある。 調査委員会には、各事件の事実と状況について事実を解明する調査を行い、大統領に報告することが求められている。 具体的には、被害者の説明、種類や背景、こうした死や傷害や肉体的損傷に至った理由、こうした殺害などの行為の犯人・犯人グループの解明、説明、そして背景、被害者になされるべき補償措置、そして今回調査した事件と同様の事件の発生を防ぐための提案などである。
大統領は、透明性と国際規範・基準の遵守を確保するため、11人の委員により構成されるIIGEPに対し、本調査委員会の調査審問を傍聴するよう依頼した。 IIGEPには、それ自体として、捜査や審問を行う権限は与えられていない。 しかしながら、我々は、調査委員会が調査中の事件について、情報や証拠を提供したいというすべての人に開かれている。我々は、大統領依頼に基づき、第三者の情報を本調査委員会に提供することを求められているが、信頼できる証人保護措置が機能するまでの間は、当該第三者の同意がない場合、あるいは当該第三者の安全を脅かすような場合、我々が当該情報を開示することは正当ではないと考えている。
我々は、調査委員会とIIGEPに、スリランカにおける現在進行中の人権侵害を解決する広範な権限があるという誤解を生ぜしめる発言をスリランカ政府が行っていることを遺憾に思う。 それは事実ではない。 近時の状況、特に、再び強制失踪が系統的に行われていることが明らかになり、赤十字委員会職員が殺害されるような状況では、調査委員会やIIGEPが、より強力かつ効果的な国内・国際的人権監視団の代替として取り扱われることがないようにすることが、極めて重要である。
P N バグワッティ
IIGEP チェアマン
“International Independent Group of Eminent Persons: Public Statement“