(2007年11月23日)
インドネシア訪問を終え帰国した国連人権専門家は今日、インドネシアにおける拷問への対応は進歩しているものの、未だ実務上続いており、犯罪とされるべきであると述べた。
「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰」に関する特別報告者であるマンフレッド・ノーワック氏は、11月10~25日の滞在中、ジャカルタで会合を持ち、矯正施設(刑務所)や公判前の拘置所、警察や軍の拘留施設のほか、更生センターなどを訪問することができた。
ジュネーブで出された声明においてノーワック氏は、今回の招請についてインドネシア政府に感謝の意を表したが、同時に多くの場面で、抑留者との非公開のインタビューが行えないなど、拘留施設の視察が制限されたものであり、妥協点が多かったことも指摘した。
そのような制限された視察であったにもかかわらず、氏は全体として「法的・制度的な保障措置の欠如および構造的な不処罰の蔓延のために、自由を奪われた人々は拷問や虐待を極度に受けやすい状態にある」という結論に達したと述べた。
インドネシア政府は、拷問を犯罪として刑法に含める手続は現在進行中であると述べたが、ノーワック氏は「国内外から注視する人々からの多くの意見にも関わらず」未だこれが完了していないことは遺憾であるとした。
また、氏は「インドネシアがこの問題に真摯に取り組んでいるという具体的な表明として」これ以上一刻の猶予もなく、拷問を複数年の懲役(禁固)が課される犯罪にしなければならないと強調した。
同国連特別報告者は「拷問の実行者を裁判にかけることが、拷問や虐待は断固として容認できないものであるというもっとも強い姿勢の表れである」と指摘し、政府高官は「官公吏が拷問または虐待を犯したために刑事裁判所で有罪を下された例を、ただの一件も挙げることができなかった」と述べた。
拘留者に対する法的な保障措置は、特に公判前の段階で、「事実上存在せず、これはインドネシアも賛成した国際的規範・基準に違反している」とし、多くの拘留者は裁判所へのアクセスが無いまま、あるいはきわめて制限されたまま時には数ヶ月にもわたり長引く警察での拘留が合法に行われていることへの懸念を示した。
ごく少数の拘留者しか弁護人との連絡も出来ないようであると彼は述べ、法的な保障措置も欠如しており、これらの多くの場合に自白の取り方にも疑惑がある、といった条件下では、死刑の適用も、不適切であると指摘した。
また、彼は死刑が秘密裏に行われている実態も国際人権基準に違反していると述べた。
ノーワック氏は、無償で、個人の資格においてこの任務にあたっているが、拘留の合法性を判断したり拷問や虐待に関する苦情について審査したりする有効なメカニズムの存在は聞いたことがない。「反対に、刑務所組織スタッフ、検察庁スタッフや医者との面談で、特別報告者に語られたところによれば、虐待や拷問の跡が見受けられる人が彼らの管轄下に移送されてきた場合、通常は警察に戻すという。余計な事務的問題を避けようというのだろう。」
特別報告者は、国連拷問等禁止条約の選択議定書に2008年に批准することを見越した全国人権行動計画(ナショナル・ヒューマンライツ・アクションプラン)を賞賛した。この選択議定書は、拘留施設を定期的に監視するために、抜き打ち訪問調査をする権限をも持つ、独立した機関を設立することを要求するものである。
同専門家は、拘留者は刑務所よりも警察に留置されているときの方が虐待されやすい状態にあるとし、医療専門家による分析協力によって作成された、拳骨、籐や木の棒、ケーブル、鉄棒、ハンマーなどによる殴打の報告を例に挙げ、「警察による虐待は、政府が直ちに注意するに値するほど蔓延していると見られる」と述べた。
声明によれば、警官官が拘留者の脚を至近距離から撃ったり、感電死させたりしたケースもあった。拘留者の中には足の上に重い器具を乗せられたと申し立てをした者たちもいる。「ほとんどのケースで、暴力の目的は自白を強要することにあるだろう」とノーワック氏はみている。
声明ではさらに、同氏は、拘置所・刑務所のいずれからも、虐待や体罰の申立てはごく限られた数しか聞かなかったとしつつ、警備員によって殴打されたという申立てや証拠が複数挙がっているとも警告している。
刑務所の多くはとても広く、清潔でよく管理されており、収容人数も定員を下回っている。国連特使は、親類や友人の面会を週に何度も認めるなど、相対的にみた拘留施設の開放性を歓迎した。また、18~21歳の若者を可能な限り大人とは別の枠組みで扱い、分離して処遇しているやり方を賞賛した。
「またもう一つの良い実務例は、出産のため、妊娠した女性をしばしば一時的に釈放していること、警察拘置中や服役中にも赤ん坊と一緒に生活することができ、また少し年齢が上の子どもたちとも密に連絡を取り続けるのを許可していることである」
しかし、同時に、特別報告者は「インドネシアでは刑法上の責任が8歳から生じ、従って幼い子どもたちでも拘置所や刑務所に入れられ、その多くの場合には年長の子どもたちや大人と一緒に収容されていることを大変懸念している」と述べた。未成年者や子どもでさえも拘留中に体罰や虐待を受けるより大きな危険にさらされているのである。
インドネシアですでに実施されている改善策を認める一方で、同専門家は拷問・虐待に対する公式の非難とその犯罪化などを含めたさらなる一連の改善策を提言した。また、不処罰に対する対策や、匿名不服申し立て制度の導入などを求め、インドネシア政府は、刑法上の責任が生じる年齢を国際基準に沿って引き上げるとともに、死刑を廃止するべきであると述べた。
特別報告者は、国連人権理事会へ包括的なレポートを提出する予定である。
“Indonesia: UN expert hails progress in combating torture, urges further measures”
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=24769&Cr=Indonesia&Cr1=&Kw1=Indonesia&Kw2=&Kw3=