ヒューマンライツ・ナウは、米政権による国際刑事裁判所(ICC)解体発言および圧力を強く非難し、国際司法の独立性と「法の支配」の堅持を求める声明を発表しました。
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米政権による国際刑事裁判所(ICC)解体発言および圧力を強く非難し、
国際司法の独立性と「法の支配」の堅持を求める
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、米国トランプ政権のルビオ国務長官が米紙ウォール・ストリート・ジャーナル等を通じて表明した、国際刑事裁判所(以下、ICC)を「あらゆる手段を駆使して解体する」との主張 、およびICCの司法手続きに対する威圧的攻撃に対し、激しい憤りを表明するとともに、これを強く非難する。
1. 事実の経緯と問題の深刻性
報道によると、ルビオ米国務長官は本年7月13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル寄稿において、個人の戦争犯罪や人道に対する罪を追及する唯一の常設国際刑事司法機関であるICCについて、「あらゆる手段を駆使して解体する」と主張した。さらに動画メッセージ等を通じ、米国要人や兵士、国境警備隊らがICCにより追訴されるリスクを訴え、ICCとその支持者が「法や条約を武器に米国に対して戦争を仕掛けている」と一方的に批判を展開した 。
トランプ政権はこれまでも、アフガニスタン情勢に関し、米軍及びCIA職員によるものを含む戦争犯罪等の疑いを対象として開始されたICC捜査や、イスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状発付を強く批判し 、ICCの裁判官や検察官らに対する資産凍結・ビザ発給停止などの不当な制裁措置を科してきた 。今回の国務長官による「解体」の示唆は、単なる個別事件への異議申し立ての域を大きく超え、国際刑事司法の枠組みそのものを根底から破壊しようとする極めて深刻かつ危険な挑発である。
2. 国際法に基づく評価と過去声明の踏襲
常設の国際刑事裁判所を設立する構想は、第二次世界大戦後のニュルンベルク裁判及び極東国際軍事裁判を背景として国連で検討され、旧ユーゴスラビア及びルワンダに設置された国際刑事法廷の経験を経て、1998年のローマ規程の採択、2002年の同規程の発効によってICCとして実現した 。ICCは、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪及び侵略犯罪について個人の刑事責任を追及する常設の国際刑事裁判所であり、 日本を含む125か国を締約国とするローマ規程に基づき、国際刑事司法制度の中核を担っている 。
当団体が過去の声明でも繰り返し強調してきた通り 、いかなる国家や個人の影響力からも独立した刑事司法機関が存在することこそが、世界中の重大な人権侵害の被害者に正義と救済をもたらし、将来の残虐行為を抑止するための不可欠な前提である。ジェノサイド罪、戦争犯罪、人道に対する罪、侵略犯罪といった中核犯罪について不処罰を許さず、適正な司法手続を通じて責任を追及するという原則は、第二次世界大戦後、国際社会が積み重ねてきた「法の支配」の重要な柱となっている。
自国の政治的・軍事的利益を優先し、意に沿わない判決や捜査を行う司法機関を制裁・解体しようとする米政権の態度は、国際司法の独立性と不偏不党性を著しく踏みにじるものである。これは国際法秩序に対する直接的な攻撃であり、断じて容認することはできない。
3. 国際社会および関係機関からの懸念と連帯の表明
本年7月17日の「国際司法の日」に際し、ICCの赤根智子所長は、「国際的な法の支配は、公正な裁判官の判決を通じて法を遵守する独立した司法機関なしには存在し得ない」、「国際裁判所は、いかなる時も政治的影響や威圧から排され、独立性を保ち続けなければならない」と強く訴えた 。
また、欧州連合も7月16日付の声明において、「ICCの独立性、中立性、そして実効的な機能は維持・保護されなければならず、裁判所は圧力、脅迫、干渉を受けることなくその権限を行使できなければならない」と表明し、ローマ規程体制への不変のコミットメントを再確認している 。
米政権によるICCへの攻撃は、世界中の残虐行為の被害者から「正義への希望」を奪い去り、強大な権力を持つ加害者の不処罰を横行させる結果を招く。
4. 結論および要請
ヒューマンライツ・ナウは、国際社会が一致団結してICCの独立性を防衛し、政治的圧力に屈しない姿勢を示すことが、かつてないほど重要になっていると認識する。これに基づき、以下の通り強く勧告・要請する。
- 米国トランプ政権に対して:
○ ICCに対する「解体」発言を取り消し、司法関係者に対する制裁や不当な威圧・干渉行為を直ちに中止すること。
○ 自国および同盟国の関係者も含め、ジェノサイド罪、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪について不処罰を許さず、国際司法手続きおよび「法の支配」を尊重すること。 - 日本政府に対して:
○ ICC最大の分担金拠出国であり、赤根智子裁判官が同裁判所の所長を務めていることも踏まえ、米国による不当な圧力に対し明確に反対すること。
○ EU諸国をはじめとする他の締約国と緊密に連携し、ICCの独立性と実効性を擁護するための政治的・外交的リーダーシップを発揮すること。 - すべてのICC締約国および国際社会に対して:
○ ローマ規程に基づく義務を確実に履行し、ICCの捜査・公判手続きに対する全面的な協力体制を堅持すること。
○ 政治的圧力からICCを守り抜くため、必要な財務的・実体的な支援を継続すること。



