Francisco Juan Larranaga v The Philippines |
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通報日 |
見解採択日 |
文書発行日 |
通報番号 |
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15/08/2005 |
24/07/2006 |
14/09/2006 |
No.1421/2005 |
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全文 |
http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/(Symbol)/b527d9a939f88305c12571ef004a2e8c?Opendocument |
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手続上の論点 |
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実体上の論点 |
生命の権利(6条)、残虐な刑罰の禁止(7条)、適正手続きの保障(9条)、裁判の独立・公正(14条1項)、推定無罪の原則(14条2項)、適正な弁護人を得る権利・公正な裁判・防御の機会の均等・裁判の不当な遅延・武器の平等(14条3項) |
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通報者の主張 |
通報者は、1999年5月、6名の共犯者と共に、被害者Aに対する誘拐・監禁の罪により刑事裁判所で有罪判決を受け、reclusion perpetua(一定期間後仮釈放の可能性がある終身刑)を言い渡された。通報者は判決を不服として上告したが、最高裁は前審で無罪とされた被害者Bに対する誘拐・監禁・殺人・強姦の罪においても通報者を有罪と認め、Bに対する罪で死刑を言い渡したことから、通報者は、国内的救済手段が尽くされたとして委員会に通報した。 通報者が主張する規約違反は以下のとおりである。 1) 1987年の新憲法が廃止した死刑制度を1993年に復活させたこと、また改正刑法が一定の犯罪に対して自動的に死刑を課し、情状酌量等による減刑を認めないことは、生命の権利(6条)の恣意的剥奪にあたる。 2) 適正手続の保障を欠く裁判で死刑を宣告することは、「生命の権利の恣意的な剥奪」にあたり第6条に違反する。本件では、具体的に以下のような手続上の問題が認められる。 ・釈放と免責を条件に通報者に不利な証言をした共犯者の供述が証拠として採用された。 ・アリバイの立証責任が全面的に通報者に負わされた上に、アリバイに関する弁護側の証人申請が「無関係かつ重要性がない」として却下された。 ・弁護人が法廷侮辱罪で逮捕・拘留され、後任の国選弁護人には反対尋問の準備期間が1日しか与えられなかった。その上、同弁護人は、他の共犯者の弁護人も兼務しているという利益相反の問題があったことから、通報者が私選弁護人の選任を要求したが、選任のための裁判延期は認められないとして却下された。 ・被害者の叔母がエストラーダ元大統領の秘書であったこと等から、外部からの圧力やマスコミの報道で裁判所に予断が与えられていた。また、公判の裁判官と予審の裁判官の内、数名が同一人物だった点は、裁判の独立性・公平性の点から問題がある。 ・最高裁は、刑事裁判所で無罪とされた点についても有罪の判決をしたにも関わらず、通報者に弁論の機会が与えられなかった。 3) 起訴から再審請求の却下まで7年10ヶ月という裁判遅延に合理的理由は認められない。 4) 死刑執行の恐怖に長期間されていることは、「残虐な刑罰」を禁止した第7条に違反し、不適正な手続きで投獄されている状態は「恣意的拘留」を禁じた第9条に違反する。 |
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当事国の主張 |
1) 1987年憲法は死刑を完全に廃止したわけではない。また一定の犯罪に死刑が自動的に適用することは、共謀が立証される限り重要な問題ではない。そもそも、被告人には十分なセーフガードが与えられているのであり、死刑の”自動的適用”は”恣意的適用”を意味しない。 2) 共犯者の証言は他の証人の証言や物理的証拠とも一致して信用性が高い。 3) アリバイの立証責任を被告人に負わせることは何ら不当ではない。 4) 被告人の死刑判決はエストラーダ元大統領退任から3年後で全く無関係であり、裁判官が予断を持っていたというのも推測にすぎずない。 5) 裁判所は迅速に裁判を行う義務があり、証人の数や反対尋問を制約することも正当化できる。同様に、裁判の延期を認めるかは完全に裁判所の裁量事項である。 6) 捜査を担当したのは検察官であり裁判官ではないから、起訴段階の裁判官と公判の裁判官が同じでも裁判の公平には抵触しない。 7) 最高裁は下級審判決を全面的に見直してその誤りを訂正する義務があり、これに対して上訴人に意見陳述の機会が与えられていれば、手続き上の保障として十分であって、弁論を開く必要はない。 8) 裁判遅延は、専ら通報者の訴訟遂行に起因している。 |
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委員会の見解 |
1) ある種の犯罪に対し、唯一の選択として死刑を自働的に適用して情状等を一切考慮しないことは、「生命の恣意的な剥奪」であり、第6条1項に違反する。 2) アリバイの立証責任を被告人に課している国があるとしても、本件では、アリバイ立証のための証人のうち何名かが排除される一方で、共犯者の証言を採用し、更には裁判官の予断排除にも疑問があること等を考慮すると、本件裁判が「推定無罪の原則」を遵守していたとは言えず、14条2項に違反する。 3) 弁護人に事案を把握し検討する十分な時間を与えなかった点は、14条3項(b)(d)に、私選弁護人選任の要求が却下された点は14条3項(d)に違反する。 4) 事実認定や証拠の採用は国内裁判所の専権事項ではあるが、死刑という結果の重大性に鑑みると、「無関係かつ重要性がない」との理由のみで弁護側の証人を却下する一方で、検察側の証人にはそのような制限を加えていない点は、14条3項(e)に違反する。 5) 下級審で判断されなかった点にまで最高裁が有罪の認定をして死刑を課した点は、第14条1項・5項に違反する。 6) 予審を担当した裁判官が公判を担当した点は、14条1項に違反する。 7) 裁判の遅延は裁判所に起因しており、第14条3項(C)に違反する。 8) 14条の基準を満たさない手続によって課された死刑判決を受け、いつ執行されるかわからない状況にさせることは、それ自体多大な苦しみを与えるものであり、拷問等の残虐な刑罰を禁止した第7条に違反する。 以上により本件裁判は、規約第6条、第7条、第14条1項、2項、3項(b)(e)(d)(e)、5項にそれぞれ違反しており、加盟国は通報者に対し死刑判決の軽減や釈放等を含む有効な保障を提供し、かつ、将来同様の違反行為を防止する義務を負う。 |
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