【国際人権先例・CCPR】2003/No.1234 カナダ

Ms.P.K.  v  Canada

通報日

非許容決定日

文書発行日

通報番号

05/012/2003

20/03/2007

03/04/2007

No. 1234/2003

全文

http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/(Symbol)/93d6e6fde7aeb9f7c12572d4004bddcd?Opendocument

手続上の論点 

 

実体上の論点

権利保護の義務(2)、生命の権利(6条)、残虐な刑罰の(拷問の)禁止(7条)、裁判の公正(14条)

通報者の主張

通報者はかつてカラチに家族と住み、ムータヒダ民族運動(MQM)で活動していた。しかし同団体代表が親族を強姦したために脱退し、パキスタン人民党(PPP)に加わり、公然とMQM代表を非難した。その後、通報者はMQM代表とその周辺者から脅迫を受け、警察に助けを求めるも、受け入れられなかったので、やむなく199811月カナダに逃れた。

99年、通報者は移民難民局難民部(IRB)に亡命申請するが、供述が信頼できないとして却下され、2000年、司法機関による見直し申請をしたが、連邦裁判所に却下された。のち3回自殺未遂を犯した。03年に、国外退去前リスク査定(PRRA)を受けるが、パキスタンに帰っても非人道的扱いの危険がないと判断された。また人道的同情的理由(H&C)でのカナダ永住権を申請するが、それも拒否された。連邦裁判所に見直しを要求し、そのための滞在許可延長を申請したが、0312月却下され、退去日に出頭しなかったため、逮捕状が出された。043月、移民局に出頭し、045月、カナダを離れ、パキスタンで逃亡している。

パキスタンでは軍と警察が政治活動家を迫害しているので、帰国すれば勾留、拷問の危険があり、そのため、カナダの国外退去命令は規約6条、7条に違反する。退去命令に至る手続は、客観性に欠けるため、規約2条、14条に違反する。

当事国の主張

・通報者はMQM代表に対する恐怖を述べているに過ぎず、規約6条、7条にあたる証拠を挙げていない。IRBはカナダの司法機関であり、その判断は尊重され、人権委員会によって、再評価されるものでない。通報者はIRBおよびPRRAの判断が、任意である或いは正義に反するといった証拠を出していない。通報者が提出したパキスタンの人権状況についての書類は、パキスタン国家が個人を守れないのかという点について、不明確である。殺害や拷問の危険についても具体的でない。

2条違反については、2条は、もとより独立して違反が成立するものでないので、委員会に受理されない。

14条違反については、難民保護決定の手続は、刑事事件や裁判の範疇でないため、管轄外。

委員会の決定

・ 6条、7条について、国外退去命令によって、通報者に、殺人や拷問などの人権侵害の危険が及ぶかという点であるが、カナダの4つの司法機関によって、いずれもそれを否定する回答が出ている。明らかにその判断が、任意的であるとか、正義に反する場合を除いて、事実と証拠の評価は当事国の裁判所が行うので、受理不可能となる。

・ 通報者は逮捕あるいは起訴されたわけではなく、国外退去命令は処罰としての決定ではない。よって14条についても、受理不可能である。また、141項にある「法のもとでの争い」という概念は、権利の性質を問うもので、当事者の立場ではない。この場合、通報者の保護を受ける権利に関する手続きが対象となる。13条で定められている国外通報手続は、141項の「法のもとでの争い」の範疇にない。

・ 2条は規約に基づく、当事国の一般的な義務を記したもので、単独で申立てを受けるものでないので、受理不可能である。