【国際人権先例・CCPR】2002/No.1108、1121 タジキスタン

Karimov and Nursatov  v  Tajikistan

通報日

見解採択日

文書発行日

通報番号

16/08/2002, 24/09/2002

27/03/07

03/04/07

No.1108 /2002, 1121/2002

 全文

http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/(Symbol)/2d2e0db89e79b3dbc12572ce0045b0c8?Opendocument

手続上の論点 

国内的救済手段を尽くしていないこと(OP52(a)

実体上の論点

死刑判決の適正手続きの保障(62)、拷問の禁止(7条)、自白強要の禁止(143(g))、逮捕の適正手続きの保障(91項)、被疑内容の告知義務(92項)、被勾留者の権利(10)、裁判の独立・公正(14条1項)、推定無罪の原則(14条2項)、適正な弁護人を得る権利(143(b)(d))、防御の機会の均等(143(e))

通報者の主張

 20014月、タジキスタンの内務副大臣が、運転手とボディガード2人とともに暗殺され、7人が逮捕された。通報者Karimov氏は逮捕者の1人の父親で、Nursatov氏は逮捕者の1人の兄弟かつ、2人の従兄弟という立場で委員会に通報した。

通報者らによれば、本件逮捕は恣意的であり(9)、十分な食事も与えられず、長時間の取り調べを受ける等、不当な扱いを受けた。更に、長期に及ぶ勾留中、家族の差し入れも届けられず (10)、殴打、電気ショックなどの拷問を受け、自白を強要された(7条、143(g))。また、選任された弁護士が立ち会わなかったり、そもそも、弁護人選任権があることを知らされないケースがあった(143(b)(d))

 公判においては、自白の撤回が認められず(141項、2)、4人が暗殺の日は別の地域にいたという複数の証言があるのに (143(e))20023月と4月にそれぞれ死刑判決が確定した(6)。なお、4名は、公判中手錠をはめたままで、鉄の檻に入れられていた。

当事国の主張

反政府勢力の武装解除に励んでいた副大臣がターゲットになった。刑罰は法に従って確定している。自白の強要は認められない。医師の検査で拷問の痕跡は見つからなかった。(以上がK氏の通報に対する反論である。)

 N氏の通報については、数回に渡る委員会の要請にも拘わらず、返答を得られなかった。なお03年と04年に死刑から25年の懲役に減刑している。

委員会の見解

1) 許容性について

 912項については、公判で十分に主張したことが示されていないので、受理不可能。141項、3(e)も、裁判所が公正でなかったことが具体的に示されてないので、受理不可能。その他については、受理可能。

2) 本案について

7条、143(g)違反については、取り調べ官の人名も挙がっている等、内容が具体的で、公判でも十分主張されている一方で、当事国はN氏への反論を提出していない。

10条、142項違反については、当事国の反論がない。

143(b)(d)については、死刑にかかわるときは特に、審理のすべての段階で弁護士が必要であるのに、与えられなかった。

よって以上の各条項について、違反が認められる。さらに、これらの違反の上に死刑判決が出された点について、62項違反も認められる。