The Vienna Intervention Centre against Domestic Violence and the Association for Women’s Access to Justice on behalf of Banu Akbak, Gulen Khan, and Melissa Ozdemir v. Austria |
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通報日 |
見解採択日 |
文書発行日 |
通報番号 |
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21/07/2004 |
06/08/2007 |
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No.6/2005 |
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全文 |
http://www.un.org/womenwatch/daw/cedaw/protocol/dec-views/htm |
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手続上の論点 |
国内的救済措置が尽くされているかどうか(OP第4条1項)、通報者の主張は十分に立証されているかどうか(OP第4条2項(c)) |
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実体上の論点 |
女性の生命及び身体的・精神的安全の権利:差別の定義(第1条)および女性に対する暴力(一般的勧告No.19)との関係における、締約国の差別撤廃義務(第2条(a), (c)~(f))、女性の完全な発展・向上の確保(第3条) |
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通報者の主張 |
本通報は、再婚した夫により殺害された女性(Fatma Yildirim、トルコ出身、オーストリア国籍)に代わって、女性が利用していたドメスティック・バイオレンス(DV)被害者支援団体(2団体)により、女性の前夫との子ども(成年2人、未成年1人)の承諾を得て提出された。 通報者によれば、女性は、2003年7月以来、夫から殺害の脅迫を受けるようになり、離婚を望んでいたが、夫は同意せず、離婚すれば女性と子どもたちを殺害すると脅していた。同年8月初めから、女性は夫からの身体的暴行や脅迫電話について頻繁に警察に通報し、警察は退去・帰宅禁止命令を出すとともに、ウィーンDV介入センターと青少年福祉事務所にその旨を通報、さらに検察官事務所に夫の逮捕を求めたが、却下された。8月8日、女性は、ウィーン地裁Hernals支部に夫に対する暫定命令の申請を提出。この間、夫が頻繁に女性の職場に現れて脅迫するため、女性は警察に通報していた。ウィーンDV介入センターもファックスで警察に女性の状況と携帯番号を連絡し、さらなる注意を要請。同月14日、女性は、生命の脅迫被害について正式な届出を警察に提出、警察は検察官に再度夫の逮捕を求めたが却下された。26日、女性はウィーン地裁Hernals支部に離婚申立を提出。9月1日、同支部は、夫に対して、女性については離婚手続終了時まで、同居の次女には3ヶ月間有効な暫定命令(自宅、女性の職場等への接近、連絡の禁止)を出したが、同月11日、女性は帰宅時に自宅近くの路上で夫により刺殺された。夫は、その後、ブルガリアに入国しようとしたところを逮捕され、殺人罪で終身刑に服している。 通報者は、当事国政府は、女性の安全と生命の権利を保護するために必要なすべての適当な措置を積極的にとっておらず、条約第1~3条、第5条、一般的勧告No.12、19、21、その他の国際文書、オーストリア憲法の一部に違反していると述べている。また、委員会に対して、被害者の人権および条約上の権利の侵害及び夫を逮捕しなかったことへの当事国の責任を検討し、暴力の被害者である女性(特に移民女性)の保護のために効果的な処置を取ること、女性DV被害者の安全を保護し、加害者及び一般にDVは非難すべき犯罪であると周知するために積極的逮捕および訴追政策をとること、女性に対する暴力被害者の保護・支援団体と協力すること、犯罪司法関係者へのDVに関する研修を義務化することを勧告するよう望んでいる。 また、通報者は、女性の保護と殺害防止に関して利用可能な国内救済措置はなく、また、2004年12月に女性の次女が起こした国家賠償請求訴訟は、子どもの損失に対する補償を求めるもので、女性本人に対する救済ではないため、議定書第4条の救済には当たらないと主張している。 (当事国による受理可能決定の見直し要請に対して)本事案の焦点は、法規則の修正や廃止ではなく、法が適切に適用されなかったことである。よって、当事国が利用可能と主張する司法審査はOP第4条1項の国内救済措置とはみなされないと主張。 |
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当事国の主張 |
1) 女性の次女による国家賠償請求訴訟は、検察官事務所の対応が適正であったとして却下されたが、再度、民事訴訟を提起することは可能である。 2) 夫は前科もなくおとなしそうに見えたので、検察官は拘束が必要とは考えなかった。 3) 女性の代理人は、(夫の逮捕状を出さないという)検察官の決定に対する控訴を認めないという規定について、憲法裁判所で司法審査を求めることができる。また、子どもたちも、憲法第140条1項にもとづき、憲法裁判所に、刑法の加害者の権利保護に関する条項をDV被害事件については廃止するよう求めることができる。 4) (受理可能決定の見直し要請の中で)当事国は、DVに対応するために包括的な措置をとっており、十分な措置がとられていないという通報者の主張は根拠を欠いている。 5) 女性自身も、検察官法37条により、ウィーン検察官事務所長、上級検察官事務所、連邦司法省などに、担当検察官の決定について不服を申立てることができた。 |
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委員会の見解 |
1) 当事国が主張する憲法第140条1項の手続は抽象的なものであり、殺害の脅迫を受けている女性や子どもたちにとって有効な救済とはみなされず、本通報は受理可能である。 2) 女性の未成年の次女が起こした国家賠償請求訴訟を民事訴訟として再提出が可能であるという当事国の主張についても、有効な救済には当たらず、受理可能である。 3) <受理可能性の見直し>(通報時に次女による賠償請求が継続中だった点に関し)国内救済措置を尽くしたかどうかは、事案検討時までに判断されればよい。また、検察官法第37条の苦情申立は、生命の危険に瀕している女性にとって効果的な救済措置とは言えない。 4) 本案審査:締約国が相当の注意義務に従って権利の侵害を予防し、暴力行為について捜査・処罰し、補償を提供することを怠った場合、私人による行為にも締約国の責任が生じる。 5) 当事国は、DVについて包括的な対応モデルを有しているが、実際にDV被害者の女性の人権を守るためには、その実施を確保しなくてはならない。 6) 当事国当局は、女性が重大な危険に瀕していることを認識していたと考えられ、検察官による夫の逮捕要請の却下は不適切。これは、当事国として相当の注意義務違反と考えられる。また、加害者の権利が女性の生命への権利と身体的、精神的安全に優先されてはならない。 7) 当事国は、第1条と一般的勧告第19との関連において条約第2条(a), (c)~(f)、第3条に違反しており、下記のとおり勧告する。 (a) DV防止連邦法と関連の刑法の実施および監視を強化すること。 (b) DV加害者を注意深くかつ迅速に訴追し、加害者の権利が女性の生命及び安全の権利に優先することのないよう相当の注意義務を果たすこと。 (c) 法執行関係者、司法関係者、関係NGO等の間の連携を強化すること。 (d) 法曹及び法執行関係者らに対するDVについての研修・教育を強化すること。 当事国は、6ヶ月以内に、本勧告に関して取られた対応を含む見解を委員会に提出すること。また、本見解及び勧告をドイツ語に訳し、広く国内で周知すること。 |
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