Ms. Constance Ragan Salgado v. United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland |
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通報日 |
11/04/2005 |
決定日 |
22/01/2007 |
通報番号 |
No.11/2006 |
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見解全文 |
http://www.un.org/womenwatch/daw/cedaw/protocol/dec-views/htm |
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手続上の論点 |
通報対象事実が当該締約国について議定書が発効する前に生じたかどうか(第4条2項(e))、すべての国内救済措置が尽くされているかどうか(OP第4条1項) |
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実体上の論点 |
子の国籍に関する平等(第9条2項)、女性差別の定義(第1条)、締約国の差別撤廃義務(第2条(f)) |
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通報者の主張 |
通報者は、イギリス国籍を有するコロンビア在住の女性。イギリス政府は条約第1条、第2条(f)、第9条2項に反し、彼女がイギリス国籍を長男に伝えることを妨げたと主張している。当該締約国について、条約は1986年5月7日、選択議定書は2005年3月17日に発効。 通報者は、1954年、コロンビア人の夫とともにコロンビアに移住。同年9月16日に長男が誕生し、通報者は、イギリス領事館に息子のイギリス国籍取得を申し出たが、父親がイギリス国籍ではないため、息子は外国人であると言われた。 1981年のイギリス国籍法(1981年法、発効1983年)は、これまでの制度を改正し、18歳以下の子どもの国籍について男女に平等な権利を認めたが、通報者の長男は対象にはならず(当時29歳)、通報者は、イギリス領事館と内務省に抗議の手紙を出した。 さらに、2002年の国籍・移民・庇護法(2002年法、発効2003年)の経過措置により、1961年2月7日から1982年1月1日の間に海外でイギリス国籍の母から生まれた子どもにイギリス国籍が与えられることになったが、通報者の長男は対象とはならなかった。 通報者は、国籍の継承について父系血統主義をとる1948年のイギリス国籍法(1948年法)により性別に基づく差別を受け、1981年法、2002年法によっても長男にイギリス国籍を与えることができなかったとして、彼女に対する差別は継続していると主張。また、通報者は、ボゴタのイギリス大使館や内務省、首相、国会議員らに手紙を送ったが、何の成果も得られなかったことは、国内救済措置を尽くしたことに相当するとしている。 このほか、2006年2月の2006年国籍・移民・庇護法の制定過程において修正案67(これに関連して通報者の氏名も読み上げられた)が否決されたことによって、差別がイギリスに対する選択議定書発効後も継続していることが確認されていること;イギリスによる条約第9条に対する留保は、2002年法または2006年法施行後も20年以上も撤回されておらず、政府は、留保によって、1961年以前に外国人の父親を持つ子どもを産んだイギリス人の母親による法的救済の要請を阻止していること;1981年法は、1961年以前に出産したかどうか以外に理由のない母親間の差別を生み、これが2002年法によっても継続されていること、などを主張している。 |
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当事国の主張 |
1) 本事案は、イギリスが条約及び選択議定書を批准する以前に生じている。また、1981年法、2002年法は、1949年法の女性差別的な規定を見直したもので、新たに男性に特権を与えるものではないので、通報者に対する侵害は、長男出生時の1948年法によるもののみ。また、”子ども”はイギリス国内法および他の人権条約においても18歳までであり、長男が18歳に達した1972年9月16日時点で通報者の被害は終了している。18歳以上の子どもの国籍については本人が申請すべきものである。 2) 国内救済手続については、通報者が1954年あるいは1954年から1972年の間に長男のイギリス国籍登録を実際に申請したかどうかが不明であり、イギリス高等裁判所でそうした申請の拒否について提訴した事実もない。また、1998年の人権法や欧州人権条約による救済手続きをとることもできたはずである。 3) 本通報は、選択議定書第4条2項(c)に基づき、明白に根拠不十分である。イギリスは、第9条について、1981年法の暫定的あるいは経過的措置を無効にするものではないという留保を付している。本事案の内容は、まさにこれにかかわるものであり、イギリスは、本事案について、条約に基づく責任を有していない。 よって、本事案は、選択議定書第4条1項および/または2項により不受理とされるべきである。 |
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委員会の決定 |
1) 本通報に関する事実は、イギリスに対して選択議定書が発効する以前に発生しており、通報者が受けていた差別は、長男が成人に達した1972年に終了していると考えられるので、委員会は、本事案は、選択議定書第4条2項(e)に定める時間的理由により不受理と結論する。 2) 選択議定書第4条1項の国内救済措置を尽くしたかどうかについて、通報者は、長男の国籍について1948年法にもとづく申請を行っておらず、よって、申請の拒否について司法判断を求めることもしていない。その後も通報者は、本事案についてイギリス高等裁判所に提訴していない。よって、委員会は、本事案を不受理とする。 |
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