【ご報告】ミャンマーのクーデターに関する日本政府からの回答

HRNが、在日ミャンマー市民協会と共同で日本政府に対して提出した公開質問状につき、本日の緊急院内集会において、外務省及び法務省より回答を受けました。回答内容を書面で頂きたい旨を伝えたところ、院内集会後、回答書面の送付を受けましたので、本ウェブサイトにて公開します。

院内集会においては、在日ミャンマー人の皆さんから日本政府の回答内容について、曖昧である、不十分である、失望した等の声が多く聞かれました。そのとおりだと思います。しかし、これが日本の現状です。今回、明らかになった現状に目を背けることなく、HRNとしては、ミャンマー人の人々の声を大切にしつつ、今後も活動を継続・発展させ、日本政府や日本企業、国連への働きかけを通じて、人権と民主主義、命を守るため闘っていきたいと考えます。在日ミャンマー人の皆さんからは、それでも日本に期待をしている、という声もありました。私たちに出来ることが必ずあるはずです。

本日、院内集会にご参加・ご協力頂いた皆さま、大変有り難うございました。今後もどうか皆さんの力をお貸し下さい。(担当事務局次長 弁護士小川隆太郎)

【2021年4月2日付日本政府による公開質問状に対する回答】

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2021年4月2日付日本政府による公開質問状に対する回答


(以下、回答全文)

ヒューマン・ライツ・ナウ(公開質問状に対する回答)

質問1.日本政府は、現在のミャンマー各地のデモ(市民による不服従運動)において、発砲を含むミャンマー国軍の実力行使によって、報道によれば、子ども、学生を含む200人を超える民間人が死傷し、数千人の拘束者が発生するなど急激に悪化する事態に対して、どのように受け止めているのか。現状認識を明らかにされたい。

回答:
〇日本政府は、国際社会の度重なる呼びかけにもかかわらず、ミャンマー国軍・警察による市民に対する実力行使により、3月27日にはこれまでで最多の死者を数えるなど、ミャンマーで多数の死傷者が発生している状況を強く非難する。
〇ミャンマー国軍・警察による市民への発砲や被拘束者に対する非人道的な扱い、報道活動に対する厳しい取締りは、民主主義の重要性を唱えるミャンマー国軍の公式発表と矛盾する行動である。
〇平和的に行われるデモ活動に対して実弾が用いられることは断じて許されない。日本政府は、ミャンマー国軍が、市民に対する暴力を直ちに停止し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者を速やかに開放し、民主的な政体を早期に回復することを改めて強く求める。

質問2.日本政府は、「日本政府は、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復を改めて国軍に対して強く求めます。」としているが、そのために具体的にどのような行動をとってきたのか。その成果は何か。日本政府が主張する「日本独自の役割」とは何か。

回答:
〇我が国は、ミャンマー国軍に対し、①民間人に対する暴力的な対応の即時停止、②拘束された関係者の解放、③民主的な政治体制の早期回復の3点を強く求めてきている。
〇一例を挙げれば、3月8日の丸山大使による国家統治評議会下の「外相」であるワナ・マウン・ルイン氏との面会はその一環であり、引き続き日本独自の役割を果たしていく。
〇また、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者の速やかな解放を求めることを含む2度目の外務大臣談話を3月28日に発出した。
〇さらに、国際社会と連携してミャンマー情勢に対応していくことが重要であり、日本政府は、日豪外相電話会談や、日米外相会談や日米「2+2」等において、ミャンマー情勢について議論を行い、関係者の解放を含め引き続き連携していくことを確認している。また、ASEANのインドネシア、タイ、ブルネイとの外相とも電話会談等を行い、緊密に意思疎通している。

質問3.クーデターの理由として軍は2020年総選挙に不正があったと主張している。しかし選挙の監視にあたった日本財団の笹川陽平氏は自由で公正なものであったと認めており、日本政府外務省も選挙は公正であったと声明を出している。日本政府は今、選挙に不正があったとする軍の主張についてどのような見解か。

回答:
〇ミャンマーに派遣した日本政府の選挙監視団からは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための様々な対策を講じながら、国内外の選挙監視団が見守る中で、概ね平穏に投票が実施されたとの報告を受けており、そのように理解している。

質問4.日本政府は2020年総選挙によって国民に選ばれていた国会議員らによって構成される連邦議会代表委員会(CRPH)を、ミャンマー国の正式な国家機関として認めているか。認めないとするならその理由は何か。

回答:                                                   〇我が国としては、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、②拘束された関係者の解放、③民主的な政治体制の早期回復、の3点を強く求めてきている。
〇ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきているが、その具体的内容については、現地の情勢が緊迫する中で、今後の対応や関係者の安全に影響を与え得るためお答えを差し控えたい。

質問5.本年3月18日に軍のクーデターを批判したチョーモートゥン国連大使が反逆罪で訴追されたとの報道があるが、日本政府は、現在も、チョーモートゥン国連大使を、ミャンマー政府の正式な大使として認めているということでよいか。認めないとすればその理由は何か。

回答:                                                   〇本件は、国連総会信任状委員会で検討中と承知しており、我が国としては国連での議論を注視している。国連総会信任状委員会は現時点においていかなる決定も下していないと承知している。

質問6.アメリカ政府は、アメリカ合衆国内に在住するミャンマー人に対して人道的な保護を図るために「一時保護資格」(18ヶ月間の在留期間が認められ、就労資格の申請も可能)を与える方針を発表している。日本政府も同様に、今回のクーデターを受けて、人道的配慮から、日本国内に居住する在日ミャンマー人に対して、在留資格を与えることを検討しているか。検討していないとすれば、その理由は何か。

回答:                                                 〇一般論としては、国籍国で生じた事情により帰国が困難であるなどの申出があり、人道上の配慮を行うべき必要性が認められる場合には、個別の事情に応じて「特定活動」の在留資格を付与するなどの配慮を行っている。
〇日本政府として、各事案に応じて適切に対応していく。

質問7.日本の防衛大学校においてミャンマー軍士官を受け入れて教育にあたっている事実はあるか。もしあれば、ただちに停止するべきではないか。また国際大学(International University of Japan)においてもミャンマー軍士官を受け入れているとの指摘があるが、事実か。

回答:
〇防衛大学校において、現在、日本語課程含め6名のミャンマー国軍の士官候補生が留学している。
〇また、ミャンマーにおいては、2011年の民政移管以降も、ミャンマー政府の経済開発関係省庁等で文民のみならず国軍出身者も主要な役割を担ってきた。このようなミャンマーの実態も踏まえ、ミャンマーの行政能力向上を通じた開発課題の解決を目的とした研修を2013年度より実施しており、同研修には国軍出身者も参加してきている。
〇こうした取り組みについては、今後の事態の推移を注視しつつ、検討していく。

質問8.アメリカ政府はミャンマーの国防省や軍に関係する大手企業・個人などに対して、アメリカ製品の輸出を禁止する追加制裁や軍事転用のおそれのある品目のミャンマーへの輸出規制の強化等の経済制裁を行っている。イギリス政府やカナダ政府、EU もそれぞれ経済制裁を行い、国軍の資金を凍結することによって国軍による市民への実行行使に対する圧力を強めている。日本政府も、各国と協調して、国軍に対し、国軍関係企業や関係者個人の資金凍結や輸出規制などの経済制裁を行わないのはなぜか。法制度上の問題があるとすれば、今後、必要な立法措置を講じることを検討しているのか。

回答:
〇制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。

質問9.報道によれば日本政府は、「ミャンマーが中国に頼らざるをえない状況を作ってはいけない。」と考えて、経済制裁を実施していないとされるが、そのような外交方針が存在するのか。当該外交方針は、日本政府が掲げる「普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)に基づく価値の外交」(人権外交)と整合しないのではないか。

回答:
〇個々の報道の一々について論評することは差し控えたい。
〇既に申し上げたように、制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。

質問10.ミャンマー国内では市民の反中感情が高まっており、不買運動も展開されるなど、国軍が中国に頼れば更なる反発を受ける状況にあるとされる。日本政府が国軍に対して、非武装の市民への実力行使について、経済制裁を含む強く非難するメッセージを送ることで、国軍が中国を頼ることになるとの根拠は何か。国軍との「独自のパイプ」があり、一定の信頼関係があるのであればこそ、日本政府が、国軍の過ちを正し、民主主義の回復に向けた変化を促す強いメッセージを発信するべきではないか。

回答:
〇個々の報道の一々について論評することは差し控えたい。
〇我が国は事案発生当日から、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、➁拘束された関係者の解放及び③民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきている。3月28日にも、外務大臣談話においてミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難した。
〇その上で、制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。

質問11.国際協力機構(JICA)が現在実施している対ミャンマー政府開発援助(ODA)事業や、国際協力銀行(JBIC)や海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマー関連で現在融資・出資している事業について、国軍の資金調達の支援に繋がっているとの指摘がある。このような指摘に対し、日本政府は、人道目的のものを除く全ての支援・事業をいったん停止した上で、国軍と関連する企業が事業に関与していないか、または、事業の実施が国軍に経済的利益をもたらしていないかという点について事実調査を実施しているか。実施しているとすればその調査結果を公表するか。実施・公表しないとすればその理由は何か。

回答:
〇日本政府は、事業の円滑な実施のため、必要に応じ、各関係機関等と連携しつつ、御指摘の点について適切に確認をしている。

質問12.日本のキリンホールディングス社はミャンマー国軍の関係企業であるミャンマービール社との提携関係を打ち切る方針を示している。こうしたミャンマー進出日本企業の行動について、日本政府の開発協力大綱及び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に照らし、日本政府はどのような調査を行っているのか。日本企業が求めた場合、国軍との関係を断つのに必要な支援を行う考えはあるか。教えていただきたい。

回答:
〇個別企業の活動につき、具体的に言及することは差し控えたい。また、日本企業からの要請については、事案に応じて対応を検討していく。
〇日本政府としては、日本企業の活動における人権の保護・尊重を今後とも図っていきたい。


 

集会でみんなで歌った「今こそ立ち上がれ(アイェーチィービー)」です。