ヒューマンライツ・ナウ副理事長 伊藤和子(弁護士)
励まして下さっているみなさま、日ごろのご厚情に、心から感謝いたします。
日本から国境を越えて、世界中で人権侵害に苦しんでいる人たち、特に女性や子どもなど弱い立場にいる人たちを助ける活動をしたい、ヒューマンライツ・ナウはそんな思いをもった人々が中心になって2006年に発足しました。何もないところから発足した団体ですが、アジア地域のNGOとの信頼関係を大切に構築し、活動を積み重ねる中で、今では存在感のある国際人権団体として認識され、多くの変化をもたらしています。
世界で今も続く紛争や人権侵害、児童労働や女性に対する暴力、人身売買・・・こうしたことに対して、私たちは決して無力な存在ではありません。多くの人が関心を持ち、改善を求める声をあげれば、事態は劇的に変わるのです。だからこそ、ヒューマンライツ・ナウは、人権侵害の現場に赴いて、人権侵害の被害者に代わって声をあげ、国連や国際社会・メディアへの橋渡しをし、世界各国や企業のリーダーに人権を守るリーダーシップの発揮を呼びかけています。私たちの活動に関心を寄せて声をあげ、サポートしてくれる人が多いほど、私たちの影響力は大きくなり、世界を変える力につながります。世界の人権侵害をなくすため、みなさまの温かいサポートを是非ヒューマンライツ・ナウにお願いいたします。
理事からのメッセージ
励まして下さっているみなさま、日ごろのご厚情に、心から感謝いたします。
「人権を実現するために武力や経済制裁で介入する、という力によるアプローチに私たちは賛同しません。これは最近の極めて危険な潮流であり、現在の国際法を取り巻く最も重要な問題でもあります。国境を越えた人権活動というのは、一歩間違えると大変危険な方向にいき、人権を守るためにNGOが侵略のお先棒をかつぐことにもなりかねません。国際人権活動の基本は、強制的な介入にならない、その国で生活し、現状を変えようとしている人々への支援であり連帯であるべきです。また、人権侵害を生み出しているひとつの原因は、国際社会の不公正な構造にあり、そのことを認識して、その構造を変えることにも力を注いでいく必要があります。
介入というかたちで行われる武力行使や経済制裁は多大な犠牲を伴うけれども、例えば大国の武力行使で頻発する人道法違反・戦争犯罪などは容易に裁かれない国際社会の力関係になってしまっています。この現実を踏まえて活動をすることが必要です。
どんなに人権侵害がひどくとも、その国のことを決めるのは最終的にはその国の人たちです。上から政権を転覆したり、強制的手段を用いて西側の人権スタンダードを押し付けようとしても、その国の人たちが真に願って変えたものでない場合には根付かないでしょう。ヒューマンライツ・ナウは、普遍的な価値にコミットする人権NGOですが、アジアという好位置に本拠をおいていることを生かし、欧米的な経験を参考にしながらも、現場で格闘する人々、真に人権を必要とする人々と連携し、協力し、創造的な人権擁護活動を目指していきます
ヒューマンライツ・ナウ初代理事長 阿部浩己(神奈川大学法科大学院教授)
世界中あらゆる所でそうであるように、日本にも、人権の実現を求める闘いの歴史が幾重にも積み重ねられてきました。1980年代末から90年代になると、闘いの軌跡は国際的な次元に広がっていきます。人権条約のメカニズムなどを効果的に利用するNGOが日本にも続々と登場し、国際人権活動に新たな彩が添えられていくことになります。ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、こうした先達たちによる誇るべき人権活動の蓄積のうえに、2006年7月に発足しました。
ヒューマンライツ・ナウが自らに課した任務は、日本を拠点にアジアの人権問題に多角的に関わっていくことです。組織の能力を漸進的に拡充しながら、アジア各地で平穏ならざる日常を営む多くの人権活動家たちと水平な関係を切り結び、その土地土地に棲まう人々が求める人権の具現化(=不正義の除去)のために力を注いでいこうと考えています。
ここでいう<力>とは、連帯と共感の精神に支えられた知力を源泉とするものです。ヒューマンライツ・ナウの活動は、活力と希望を湛えた気鋭の法曹が担っています。自らが学んだ法、とりわけ国際人権・人道・刑事法の知見を、それを真に必要とする人々のために振り向け、そして同時に、そこに映し出された自らの姿を批判的に見つめ直す持続的営為を通じ、アジアの隣人たちの信頼を得られればと願っています。
人権は、強引に押し付けたり、高みに立って教示できるようなものではありません。この、当たり前であるべき真理に常に敏感であることを忘れず、冷厳な現実に正対していく所存です。誕生したばかりですが、それだけに無限の可能性を秘めたヒューマンライツ・ナウの今後の活動へのご支援とご助言を心からお願い申し上げます。