ヒューマンライツ・ナウでは、このたびイスラエル軍によるガザ支援船攻撃に対する独立した国際調査団の派遣の支持及びガザ封鎖解除に向けてのイスラエル政府へ日本政府が働きかけることを求める要請書を発表しました。
本書は、岡田外相ほか、外務省 中東アフリカ局,外交政策局に郵送いたします。
ヒューマンライツナウ (2010年6月11日)
2010年6月11日
日本国 外務大臣
岡田 克也殿
イスラエル軍によるガザ支援船攻撃に対する独立した国際調査団の派遣の支持及び
ガザ封鎖解除に向けてのイスラエル政府への働きかけの要請
私たち、パレスチナ自治区での人道支援・開発支援・人権擁護活動に携わってきた団体は、5月31日におきたイスラエル軍によるガザ支援船「ガザ自由船団」への武力行使によって少なくとも民間人9人が死亡し、多数が負傷した事件について、深く憂慮しています。
これまでの報道によると、イスラエル軍は公海上において特殊部隊がヘリコプターとボートで、民間船であるガザ支援船に乗り込み、実弾入りの銃の使用も含めて船内の活動家を攻撃し、9人が死亡、数十人が負傷しました。船団はイスラエルの港に連行され、その後拘束された活動家はイスラエルから国外退去させられました。イスラエル当局は正当防衛を主張していますが、死亡した活動家の検死結果から至近距離から実弾が撃ち込まれたという、一部の報道もあります。
この武力行使に対し、同日5月31日に国連の潘基文事務総長も暴力を非難し、イスラエル政府の説明を求める声明を発表しました。また、国連安全保障理事会も同日中に緊急会合(6325、6326)を開き、イスラエル軍の攻撃に対する非難を全会一致での議長声明の形で発表しました。声明には、攻撃に対しての独立した国際的な調査実施の必要性が言及され、安保理決議1850(2008年)及び1860(2009年)にあるガザ地区の人道状況への憂慮と地区内への人と物資のアクセスの保障が強調されました。会合において安保理非常任理事国である国連日本政府代表部の高須幸雄大使は、安保理決議1860を含むこれまでの決議に基づくガザ地区への人道的アクセスの確保を呼びかけ、今回の攻撃に対して徹底した調査を緊急に実施すべきだとしています。
6月2日には国連人権理事会においても当事件が議題として取り上げられ、イスラエル軍の攻撃に対して強く非難し、イスラエル軍による人道支援船団への攻撃に対して独立した国際調査団を派遣する決議を発表しました(A/HRC/14/L.1)。この決議は、32カ国が賛成、3カ国が反対、9カ国が棄権で、賛成多数で採択されました。しかし、日本政府はこの決議に棄権票を投じました、私たちは、日本政府が棄権したことに対し遺憾の意を表明します。日本政府は安全保障理事会では徹底した調査の実施を支持しており、人権理事会で採択された決議を尊重し、国際社会と協調し、国際法に基づく独立した国際的な調査を推し進める役割が期待されています。
また私たちは日本政府に対し、ガザ地区の封鎖を解除しガザ地区内外への人と物資のアクセスが確保されることをイスラエル政府に要請するよう、改めて訴えます。この事件の背景には、イスラエルによるガザ地区の封鎖があります。2007年6月以来3年に及ぶイスラエル政府によるガザ地区の封鎖政策によって、約150万人のパレスチナ人は食料、医療用品、教育用品、建築資材などの入手が著しく制限され、絶望的な状況に追いやられています。国連報告書「ゴールドストーン報告書」は、この封鎖は集団的懲罰に相当し国際人道法(ジュネーブ条約第4条約第33条)に違反すると結論付けています。
国連安全保障理事会の非常任理事国であり、国連人権理事会の理事国でもある日本が、イスラエルによるガザ支援船への攻撃に対する独立した国際的調査の実施による国際法に基づく公正な措置、ならびに3年に及ぶガザ地区の封鎖の解除に向けて、果たすべき責任と役割は小さくないはずです。
よって、日本政府に、以下のことを要請します。
① 国連人権理事会の決議による独立した国際調査団の派遣を支持すること
② イスラエル政府に対して、ガザ地区への封鎖の解除を強力に申し入れること
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク
特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)
日本聖公会東京教区「エルサレム教区協働委員会」
日本YWCA
特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーン
パレスチナの子供の里親運動
ピースボート
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
CC: 外務省 中東アフリカ局 中東第一課
外務省 外交政策局 人権人道課