【イベント報告】ポストISのイラク 復興の課題 高遠菜穂子さん報告会

1月21日ヒューマンライツ・ナウはエイドワーカーの高遠菜穂子さんをお迎えして、イラクの現状と復興の課題についてお話を頂きました。

月曜日の夕方にも関わらず40名を超える出席者がいらっしゃいました。

高遠さんからは、イラクの状況と国内避難民、難民の増加についてまず話がありました。イラクの難民は、国内のクルド自治区への避難を含め260万人を超えています。近隣のトルコなどに多くが避難しています。難民キャンプの状況も過酷で、急激に増えた難民に対応できず国連が用意したテントも足らない状況です。難民の多くは空爆などの被害に合い、心身ともにトラウマを抱えています。また女性は性奴隷として拉致され、今でも多くの女性が捕らわれたままです。また子どもは兵士として洗脳され、更生や再教育は不十分です。ISの兵士として戦った彼らは報復を恐れ育った町に帰ることもできません。精神科医も不足しており、これらのトラウマや傷を負った人たちの支援が不十分のままであるというお話でした。

復興の課題として、徹底的な破壊とご遺体の回収と爆弾処理、性奴隷のサバイバーのトラウマケア、ISチルドレンのID問題、元子ども兵の洗脳を解く更生と再教育、社会復帰、報復の連鎖、社会の分断を挙げられました。このような状況の中でも、高遠さんはPeacecell Projectというプロジェクトを立ち上げ、演劇ワークショップや読書キャンペーン、平和学習などイラク平和教育プロジェクトを行っていらっしゃいます。

「(中央政府からの)経済制裁を受けながら、数百万人の避難民を受け入れるのはホストコミュニティーとして地獄のような苦しみだった。けれど、一つだけ良いものを手に入れた。それはDiversity(多様性)だ。これを真に認め合える社会を作る、それが今一番やりたいことだ」という現地NGOスタッフの言葉には、復興に向けた前向きな思いと今後の平和につながる共生社会の構築という希望にあふれている。

多様性の必要性が求められる日本社会に対してもこの言葉は重要なメッセージではないだろうか。