【声明】カンボジア デモ市民殺害に関する即時の責任者追及と、平和的なデモに対する過度の弾圧の中止を求める

カンボジア デモ市民殺害に関する即時の責任者追及と、平和的なデモに対する過度の弾圧の中止を求める

20140214 カンボジア.pdf 


1   東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、カンボジアにおける集会、結社、表現の自由に対する深刻な弾圧に深刻な懸念を表明し、人権侵害の即刻中止を求める。

201412から3日かけてプノンペン市内で行われたデモ隊に、治安部隊は致死性のある武器(AK4ライフル)を使用し、4人のデモ参加者を殺害した。治安当局による過度の暴力により負傷者も39人出し、23名の活動家と労働者が逮捕された。これに対し、HRN含め国際社会からはカンボジア政府・治安当局の行動を強く非難する声があがっている。

   11217日、カンボジアの人権状況に関する国連特別報告者のSurya
P. Subedi
は、事実調査ミッションを実施し、16日の記者会見で、 (1) 1月のデモ騒動で逮捕された23人の身の安全の確保(または必要な手当てが必要な者の釈放)、家族や弁護士へのアクセスが容易な収容施設に23人を移すこと、(2)4名のデモ参加者の殺害について、独立した調査を行い、実行を命令した者、命令に従って実行した者、もしくは発砲した個人を特定し訴追すること、(3)法的根拠に欠ける集会の自由の全面禁止を撤回すること、(4)現在の最低賃金を定める仕組みを見直すこと、などを勧告した[1]

ところが、カンボジア政府は、こうした勧告を実行に移さないまま今日に至っており、事態は深刻化している。

 

2   121日、同月の2日・3日のデモ騒動の際に逮捕された23人の解放を求め、各国の大使館に請願書を提出しようとした市民ら11人が治安当局に逮捕され、数時間にわたって拘束された。11人はその後解放されたが、今後不法な活動やデモに参加したり、扇動したりしないという誓約書に強制的にサインさせられた[2]

 

さらには、127日、プノンペン市内にて独立のラジオ局などを持つMam
Sonando
氏が、テレビ局のライセンス取得などを求め支持者とともに平和的デモを開始しようとした際、治安当局がこれを鎮圧し、少なくとも10人が負傷(うち3人は重傷、6人が病院へ搬送)した。Mam
Sonando
氏率いるデモ隊は、内務省と市役所に前もってデモの届け出をしていたが、公の安全と秩序に影響するとして退けられていた。この背景には、カンボジア政府は長い間メディアをコントロールし、報道・メディアの自由も尊重してこなかったことも指摘しなければならない[3]

地元人権団体は、この日、当局は、デモ隊の鎮圧に手榴弾を用いたほか、一般の暴漢たちが治安当局に雇われ、訓練も受けていない私服の治安部隊がヘルメットを被り、電気バトンを振り回し、デモ隊に危害を加えたと指摘している[4]

非武装で平和的なデモに対する当局の取り締まりと暴力は深刻化している。

 

3
 以上のとおり、カンボジアの人権状況に関する特別報告者の事実調査ミッション後も、カンボジア政府は特別報告者の勧告を一向に実施せず、状況を改善するどころか、人権侵害を悪化させている。平和的なデモを行う一般市民に対する武力行使は深刻な人権侵害であり、市民的及び政治的権利に関する国際規約」第19条に違反している。カンボジア政府と治安当局はこのような行動を即刻中止すべきである。

HRNは、カンボジア政府と治安当局に人権侵害に強く抗議し、カンボジア政府に対し、以下のことを求める。

(1)4人のデモ参加者の殺害について、直ちに独立した調査を行い、責任者を特定し、訴追すること

(2)集会の自由の全面禁止を速やかに撤回し、平和的なデモ活動を認めること

(3)集会に参加する市民に対する武力による攻撃・あらゆる暴力、恣意的逮捕・拘禁をただちにやめ、国際人権法に基づく集会・結社・表現の自由を尊重すること

(4)労働組合や市民と平和的な交渉を設け、最低賃金及び安全な労働環境等の労働条件の見直しを実現すること



[1]
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=14175&LangID=E

[2]
http://www.licadho-cambodia.org/pressrelease.php?perm=339

[3]
http://www.adhoc-cambodia.org/?p=4370

[4]
http://www.licadho-cambodia.org/pressrelease.php?perm=338