【声明】辺野古埋め立て土砂投入への抗議

ヒューマンライツ・ナウは、政府の辺野古埋め立て土砂投入に対し中止を求める声明文を発表しました。
県民の気持ちを無視し、強行に埋め立てを進める日本政府のやり方は受け入れられるものではありません。
ヒューマンライツ・ナウは今後もこの問題に目を向け、埋め立ての中止を訴えていきます。

声明文は下記の通りです。

辺野古沿岸への埋め立て土砂投入に強く抗議し、工事中止を求める。

                   国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ

1 12月14日、日本政府は、沖縄県名護市辺野古沿岸に米海兵隊新基地建設のための埋め立て土砂投入を県民の反対を押し切って強行した。
東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウはこの行為に対して日本政府に強く抗議し、建設強行の速やかな中止と、住民参加による問題解決を強く求める。
2 辺野古への基地移設の発端は、1995年に発生した米海兵隊による少女暴行事件であった。基地あるが故に県民が被る幾多の人権侵害と、あまりにも過大な沖縄への米軍基地負担に対する対応として、住宅密集地の中心に位置する普天間基地の返還を日米が合意、代替施設の候補地として辺野古が浮上した。
 しかしながら辺野古新基地は負担軽減どころか基地の強化、固定化につながるものであり、周辺環境への破壊を始め深刻な影響をもたらすものである。県民の反対は一貫して根強く、2013年末に当時の仲井真弘多知事は初の埋め立て承認を行ったが、県民世論に明らかに反する内容であった。2014年7月に辺野古新基地建設に向けた建物解体作業が始まったが、同年11月の知事選では県内移設反対の翁長雄志氏が勝利した。さらに、2018年9月の県知事選でも辺野古新基地建設反対を掲げる玉城デニー氏が勝利し、辺野古新基地建設に反対する県民の意思は明らかである。
3 ところが、日本政府は翁長知事(当時)による埋め立て承認の「取消」に対し法廷闘争で2016年最高裁決定を得、2017年には埋め立て海域を囲む護岸建設に着手した。2017年7月、翁長雄志知事が埋め立て承認の「撤回」を表明し、翁長知事の死後の同年8月31日、職務代理者である副知事によって承認は撤回されたが、同年10月、沖縄防衛局の申出を受けて、国土交通大臣は承認撤回の効力を一時的に停止した。県はこの決定を違法として、国地方係争処理委員会に審査を申立て、12月14日は初会合であった。
 政府は11月、県の要請を受けて国と県の集中対話を一か月限定で実施したが、並行して土砂投入の作業を進め、手続きの不備を県に指摘されても工事を強行した。
沖縄県は2019年2月に、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票の実施を予定しているが、日本政府はこうした県内プロセスや県の意向を完全に無視している。
今回の基地建設のための土砂投入強行・基地建設強行は、度重なる選挙によって示された沖縄の民意を完全に無視し、民主主義や地方自治という憲法の基本理念を踏みにじる強権政治という非難を免れず、強い非難に値する。
4 現在、沖縄県には全国の米軍専用施設面積の約70.6%(2017年1月1日現在)が集中し、あまりにも不均衡な基地負担が住民の願いを無視して沖縄に押し付けられているのが現状である。 
沖縄県の米軍基地は、太平洋戦争中及び戦後、琉球/沖縄の人々の土地に対する権利を排除して建設されたのであり、沖縄県の米軍基地の存在により、沖縄の人々の伝統的な土地及び天然資源に関する権利が侵害され続けてきた。
辺野古・大浦湾は、マングローブ林からサンゴ礁に連なる先祖伝来の豊かな生態系が形成され、日本では絶滅の恐れが最も高い哺乳類のジュゴンが生息するほか、確認されているだけでも絶滅危惧種 262 種を含む 5,300 以上の生物が生息している。こうした先祖伝来の豊かな自然環境を享受しながら生活する権利が一方的に踏みにじられようとしている。
国連自由権規約委員会第6回日本政府報告書審査総括所見(CCPR/C/JPN/6) 及び人種差別撤廃委員会第10、11回日本政府報告書審査の総括所見(CERD/C/JPN/CO/10-11) は、琉球/沖縄の人々が先住民族に該当することを明確に述べている。
日本政府は「国連先住民族権利宣言」 に基づき、沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」(同宣言26条)を尊重しなければならず、「先住民族に影響を及ぼし得る立法的または行政的措置を採択し実施する前に、彼/女らの自由で事前の情報に基づく合意(Free Prior Informed Consent)を得るため、その代表機関 を通じて、当該の先住民族と誠実に協議し協力する」必要がある(同宣言19条、FPIC原則)。先住民族との関係でFPIC原則を遵守することは,自由権規約26条および社会権規約15条ならびに両規約共通1条の定める自決権により要請される条約上の義務でもある。人種差別撤廃委員会はさらに,先住民族の事前の,情報に基づく同意なくとられた措置については原状回復を求めている(General Recommendation NO.23, para.5, A/52/18, annex V)。
また、「国連先住民族権利宣言」30条は、「関連する公共の利益によって正当化されるか、もしくは当該の先住民族による自由な合意または要請のある場合を除いて、先住民族の土地または領域で軍事活動は行われない。 」「国家は、彼/女らの土地や領域を軍事活動で使用する前に、適切な手続き 特にその代表機関を通じて、当該民族と効果的な協議を行う」と明記している。
日本政府の対応は明らかにこうした国際人権基準に違反している。
5 よってヒューマンライツ・ナウは日本政府に対し、住民意思に反する工事強行をただちに中止することを求める。同時に米国政府に対し、国連先住民権利宣言に反する工事の実態と環境影響、住民の人権への影響について速やかに調査するとともに、工事への明確な反対の意思を表示し、これに加担しないことを求める。
                                     以上