2016年7月23日、HRNは設立10周年を記念したイベント「世界と日本。これからの話をしよう」を開催、170人もの方々にお集まりいただく大盛況となりました。HRNのこれまでの活動と成果、そして、これからの世界と日本のより良い未来について、著名なゲストの方々、そして、お世話になった皆さまと語り合いました。
以下、弊団体ボランティアによるイベント報告です。ぜひご覧ください!
「今」の人権を求める活動を大切にしたい
HRNは、たくさんの方々の支えのおかげで、今年で10周年を迎えることができました。これを記念して7月23日にレストランアラスカにてHRN10周年イベントを開催しました。日比谷公園や皇居が見渡せる会場には、HRNを支援して下さっているたくさんの方々が集まり、素晴らしい時間を過ごすことができました。
イベントの前に行われた総会でHRNの新理事長に選任された申惠丰氏は、冒頭のあいさつで、日ごろからHRNを支援して下さっていることに対する感謝を述べた後、「団体名でも表しているように“今”、人権を求める活動を大切にしていきたい」と今後の抱負を語りました。
パネルトーク「世界と日本。これからの話をしよう」
申惠丰新理事長の挨拶に次いで行われたパネルトーク「世界と日本。これからの話をしよう」では、パネリストに作家の雨宮処凛氏、東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏、世田谷区議会議員の上川あや氏、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏をお招きし、HRNからは事務局長の伊藤和子氏、コーディネーターとして理事の三浦まり氏が登壇しました。
各パネリストの自己紹介が終わると、三浦氏は「差別や分断、テロなど様々な問題が起きていますが、今日の社会の問題をどのように感じ、それを乗り越えるためにはどうすればいいと思っているのか聞かせて頂けますか?」と質問を投げかけました。
雨宮氏は「分断ということでいえば、生活保護バッシングが思い浮かぶ」と話しました。生活保護受給者の現状やそれに対する偏見を説明し、偏見を持つ人たちについて「彼らも『自分だって辛いんだ』と言いたいのだ」と指摘。しかし、日本でそう言うと「うるさい黙っとけ」「大したことじゃない」などと言われてしまう現実があり、それを乗り越えるためには「自分が辛いと感じていることや我慢していることを自覚していくことだ」と雨宮氏は訴えました。
上川氏は「結婚の平等(どちらの性別が好きであっても法の下では平等であるべきという考え方)がどれだけ広がっているのか気になっている」と話し始めました。同性婚が制度として整備されていく中で、それに対する反動も目立ってきています。アメリカでは、連邦裁判所が同性婚を憲法上の権利として認める一方で、生まれたときに指定された性別しか使用してはいけないという法律が作られている所があると言います。日本でも世田谷区や渋谷区が同性婚を認める制度を始めた際には多くの反対のFAXが送られてきたそうです。上川氏は、ご自身の活動や最近広がっているレインボーパレードなど、これらを乗り越えるひとつひとつの行動を紹介した上で、「『LGBTの人たちは身近にいるんだ』という認識を持つことが必要だ」と訴えました。
次に三浦氏からこれからの未来を担う人たちに向けたメッセージが求められました。この求めに、伊勢崎氏は「年寄りたちの言うことを気にしない方が良い」と話しました。その言葉の意味について伊勢崎氏は、「日本はまだ主権を回復していない」と米軍基地上空に日本の領空権がないこと等を挙げ、日本の主権を回復することの重要性と若い人たちの行動を訴えました。
安田氏はマイノリティに対する最近のバッシングなどの現象に触れつつ、自らの経験も踏まえて「様々な状況において、どんな言葉を選ぶのか」と口を開きました。言いたいことが同じでも、どのような言葉を選択するかで同じことでもあっても、伝わり方は変わってきます。安田氏は「言葉に触れた人たちが『明日も生きていたいな』と思えるような言葉を選ぶことは、この瞬間からでもできることだ」と呼びかけました。
伊藤氏は、香港の雨傘革命やミャンマーの民主化運動を例に「私たちや年配の世代が心配するよりも、若い世代に任せていくことが大事」と話しました。日本でもLGBTや安保法制の問題などで若者が先頭に立った運動が起き始めていることを指摘。「その動きを彼らより上の世代がどう支えていくのかが大事になってくる」と伊藤氏は語りました。
お世話になっている皆さまから激励の一言
パネルトークが終わると、会場は立食形式に移り、軽食とドリンクが用意されました。HRN運営顧問の濱田邦夫氏の乾杯挨拶で始まった懇親会は、参加者の皆さんと共にHRN10年の活動を振り返りました。歓談の合間には、日ごろからHRNを支えてくださっている方々から激励のリレートークをして頂きました。その中でアムネスティーインターナショナル事務局長の若林秀樹さんの「HRNさんの機動力には頭が下がります。この機動力がなければ、世の中の問題には対応できないんです」との言葉に、今後もこの速さを活かし活動していこうという思いを強くしました。他にも、10周年を記念して一新したバナーのお披露目やタレントのM高史さんの登場によって会場は盛り上がっていきました。
これまでの10年、これからの10年
歓談が続く中、HRN理事長の阿部浩己氏、東京大学教授の阿古智子氏、HRNビルマチームの石田真美氏、ジャーナリストの志葉玲氏、エイドワーカーの高遠菜穂子氏、HRW日本代表の土井香苗氏、HRN理事の雪田樹理氏、HRN事務局長の伊藤和子氏が登壇し、「私たちの活動と今知ってほしい人権問題」をテーマでパネルトークが行われました。HRN設立やヘイトスピーチ問題、AV出演強要問題などHRNの10年の活動を写真と共に振り返りました。その中で伊藤氏は「私たちだけでは何もできませんので、皆さんにも自分の得意分野を活かして、HRNの活動を支援して頂ければと思います」と呼び掛けました。
懇親会の終盤には、ヴォーカリストの鈴木重子氏の歌が披露されました。鈴木氏は、「ここでの出会いがいつかどこかで世界の人びとの糧になると思って歌いたい」と中島みゆきさんの「糸」などを披露してくれました。
鈴木氏の歌の余韻が残る中、HRN副理事長の後藤弘子氏から閉会の挨拶が行われ、後藤氏はHRNの活動を振り返りながら「今後も様々な方向に一歩を踏み出していきたい」と語り、10周年イベントは、これからの10年への期待と決意をそれぞれ胸に刻みながら、盛会のうちに終了しました。(高木あずさ)
※本イベントは西村あさひ法律事務所、さくら共同法律事務所がスポンサーとなり、10周年記念募金として久保理英明弁護士ほか多くの皆さまの募金により支えられて実現いたしました。御礼申し上げます。