(2011年4月29日 シリア) 国連人権理事会は本日、シリアにおける国際人権法違反と民間人を被害者とする犯罪の嫌疑についての捜査を目的に、同国へミッションを派遣する決議を可決した。シリアでは、数週間に渡る騒乱で、何百人もの人々が犠牲となっている。
同理事会は、平和的抗議運動に参加した人びとへの致死的な暴力と「医療アクセスへの妨害」を非難した上で、シリア政府に対し、民間人を保護し、表現の自由や集会の自由を含む、基本的自由を尊重するように訴えた。
また、理事会は、インターネットやその他コミュニケーションネットワークへのアクセスの回復、メディアへの検閲の解除、海外報道陣の入国許可を行うことも求めた。
ジュネーブに本拠地を置く人権理事会の理事国47カ国のうち、26カ国が支持した決議において、人権理事会は、人権侵害の疑いを捜査するミッションをシリアに派遣するよう、国連人権高等弁務官に要請した。同決議への反対は9カ国、棄権は7カ国、欠席は4カ国だった。
この決議の中で人権理事会は、「シリア政府に対し、人権高等弁務官事務所が派遣するミッションのメンバーに全面的に協力し、そのアクセス(入国)を許可するよう求めている。」
また人権理事会は、現在も継続中の政治的抗議活動で、何百人もの人々が犠牲となったことを深く遺憾に思い、シリア当局による抗議者の意図的殺害や逮捕、拷問事件が起きているという嫌疑に対し、多大な懸念を表明した。
そして、理事会は、シリア当局に、最近の抗議活動よりも前に拘束された者を含むすべての政治囚と恣意的被拘禁者の即時釈放と、法律家、人権擁護者、ジャーナリストへの威嚇及び迫害、恣意的逮捕をやめるように求めた。
さらに人権理事会は、シリア当局に対し、平和的抗議行動の参加者への報復行為をやめるよう訴えた上で、抗議者への攻撃を行った責任者に関する捜査と訴追を公平で信頼のおける方法で行う必要があると強調した。
そしてシリア当局には、社会的正義の強化と市民的自由の保障のため、一般市民による政治参加の範囲を拡大していくよう求めた。
国連副人権高等弁務官のカン・キョン=ファ氏は、人権理事会での同決議採択前の意見陳述の中で、3月半ばから収集された情報によって憂慮すべき実態が明らかになったと述べた。
その実態としては、抗議活動参加者への広範な実弾使用、抗議者や人権擁護者、ジャーナリストの逮捕、拘禁、失踪、被拘禁者への拷問や虐待などが挙げられている。450人以上の人々が殺害され、その3倍の数の人々が負傷したと報告されている。
さらに、報道の自由やその他コミュニケーション手段の抑圧、医療従事者や医療施設、患者への攻撃などもあった。
カン氏は、「このような嘆かわしい行為は、先週1週間を越えて、なお続いている。報告書によれば、町全体が継続して包囲されている。人口密集地域に戦車が配備され、砲撃している。」と語る。
さらに彼女は、「食糧配給は妨害を受け、電気へのアクセスも止められた。交通機関も停止した。公共の場で負傷者の救助や死体の移動を行おうとした人々に発砲した狙撃者がいたとの報告も受けている。」と加えた。
人権理事会は人権高等弁務官に対し、第17回会合でシリアの人権状況に関する予備報告書を提出するとともに、口頭で最新情報の提供を行うように、また第18回会合では、前会合のフォローアップ報告書を提出するよう要請した。
人権理事会は、シリア当局が改革への道を踏み出す意図を示したことに留意した上で、国民による正当な要求を満たすための具体的措置を求めた。
カン氏はまた、シリアが市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)など、ほとんどの主要国際人権条約を批准していることも指摘した。
「したがってシリアは、法と秩序の維持のための行動という場面を含む、いかなる状況においても、人々の生命に対する権利、自由、安全が確実に保護されるようにしなければならない。」とカン氏は述べた。
“UN Human Rights Council calls for investigation into alleged abuses in
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=38237&Cr=syria&Cr1