国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、イスラエルによるパレスチナ人に対する死刑法案の撤回を求める声明を公表しました。
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イスラエルによるパレスチナ人に対する死刑法案の撤回を求める声明
1 2026年3月30日、イスラエルの立法府であるクネセトは、パレスチナ自治区・ヨルダン川西岸地区において、テロ攻撃によって故意に人を死亡させた者に原則として死刑を適用すること等を内容とする法案(Death Penalty for Terrorists Law, 5786–2026 以下「本法案」という。)を可決した。
2 イスラエルにおいては、1954年時点で人道に対する罪等を除いた通常の殺人罪に対する死刑が廃止されており 、建国以降、同国内において実際に死刑が執行されたのは、ナチス・ドイツ親衛隊の元将校であったアドルフ・アイヒマンに対するものを含めた2例にとどまっている。事実上、パレスチナ人による通常の殺人罪に対する死刑制度の復活を内容する本法案は、国家安全保障大臣であるイタマル・ベンーグヴィルが党首を務めるイスラエルの極右政党「ユダヤの力」によって推進され、今般のクネセトにおける賛成62票:反対48票による可決に至った 。
3 本法案においては、ヨルダン川西岸地区の居住民がテロ攻撃によって故意に人を死亡させたと軍事裁判所において認定された場合には、その者について原則として死刑を適用し、終身刑を適用することができるのは、特別な事情が認定された場合の例外的な場合であると規定されている。ここにおける「居住民」にはイスラエル市民及びイスラエル人居住者は含まれず、適用対象者は、事実上ヨルダン川西岸地区に居住するパレスチナ人のみである。また、軍事裁判所における死刑判決には、検察官の求刑を要さず、また、従来必要とされていた裁判官全員での賛成ではなく過半数の賛成で足りるものとされている。そして、死刑判決に対する恩赦は許されず、死刑判決を受けた者に対しては、原則として90日以内にこれを執行するものと規定されている。
4 また、本法案の内容には、イスラエル国内において適用される刑法の改正も含まれており、ここでは、「イスラエル国家の存在を否定する目的」で故意に人を死亡させた者は、死刑または終身刑のみを適用すると規定されている。いずれにしても、本法案において死刑が適用される対象者として想定されているのはパレスチナ人のみであると言わざるを得ない。
5 本法案は、2023年10月7日以降、ヨルダン川西岸地区においてさらに加速しているイスラエル人入植者による違法な入植活動及びこれに伴うパレスチナ人に対する殺人を対象から除外し、パレスチナ人に対してのみ、原則として死刑を科するという極めて差別的な内容に終始するものである。また、イスラエルの軍事裁判所におけるパレスチナ人の被告人に対する有罪率は、99パーセントを超えており 、適正手続が保障されない状況下において、パレスチナ人の被告人が法の恣意的な運用により死刑判決を言い渡され執行される事態が容易に想定される。
本法案の可決は、イスラエルが国際法上違法に占領するヨルダン川西岸地区におけるアパルトヘイト政策をより強固にするものであり、ジュネーブ第4条約等への抵触も強く懸念される。国連のアントニオ・グテレス事務総長のデュジャリク報道官は、記者会見において「イスラエル政府に対し、この法案を撤回し、施行しないよう求める」と述べている。また、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のボルカー・ターク高等弁務官は、この法案の即時撤回を求め、「イスラエルの国際法上の義務と明らかに矛盾する」と述べている 。
ヒューマンライツ・ナウは、今般の本法案の可決成立を受け、イスラエルによるパレスチナ人に対する民族差別・アパルトヘイト政策に断固として反対するとともに、新法の即時撤回を求める。
以上



