3月11日、日系人会(JAA)ホールにて、国際ジャーナリスト津山恵子さんの司会のもと、伊藤和子弁護士より「日本を騒がせる人権問題総ざらい – ここがおかしい!ハラスメントの実態と解決への道」と題し、日本で昨今起きている人権問題についてお話しさせて頂きました。
まずは、「女子受験生に対する医学部不当入試問題」。こちらは、昨年東京医科大学が女子受験生を一律減点していたことが発覚し、その後、他の10大学の医学部でも同様のことが行われていたことが発覚した事件です。これに対し、大学側からは、「女子学生は男子学生と比べてコミュニケーション能力が高く、男子学生を救うための補正」という理不尽な弁明や、「女子学生は夜勤に耐えられないから」、「女性は一般的に男性に比べて能力が低い」などの弁明が相次ぎました。しかし、伊藤弁護士より、OECD加盟国の女性医師の割合は平均46%(2015年時点)であり(日本は約20%)、ラトビア、エストニアにおいてはその割合が70%を超えていることからしても、女性の医師としての適格性や能力を問題視するこれらの弁明は不合理であることは明らかであり、性別に基づく差別を禁止する憲法14条、女子差別撤廃条約に違反するとの説明がありました。また、他国では差別禁止を具現化する法律があるにも関わらず、日本では雇用機会均等法以外に差別を禁止する法律がないことも問題であるとの指摘がありました。
次に、熊本市議会女性議員の子連れ入場事件。これは、熊本市の女性市議会議員が生後7ヶ月の長男を連れて議場入りしたことが議員や職員以外の入場を禁止する内規に反し委員会の開始時間を遅らせたために厳重注意を受けたという事案です。この件について伊藤弁護士は、国連総会に夫と子供を連れて参加したニュージーランドのアーデン首相と対比し、日本では内規がその合理性を問わずに重視され、状況に応じて柔軟な対応をとるどころか、むしろ内規にわずかでも反する者を徹底的に排除しようとする傾向があると指摘しました。また、アーデン首相の昨今の革新的な政策を引き合いに、日本ではリーダーシップの立場にそもそも女性が少なく、また女性の意見は聞いてもらえないことが多いため、生活に直接関わる女性が政策を提言することは非常に困難な状況であるとの説明がありました。
続いて、「ヤレる女子大学生ランキング」事件。これは、2018年12月25日号、「週刊SPA!」に簡単に性関係に持ち込むことが出来る女子大生のいる大学ランキングが掲載された事案。この記事に対し、ランキングで名指しされた大学のみならず他大学もそれぞれ抗議を行い、女子学生が編集長に説明と謝罪を求め、編集長が謝罪と釈明を行いました。これについて伊藤弁護士は、このような男性目線の特集は過去にも多く存在したがいずれも見過ごされてきたところを、今回は大学も女子学生も声を上げたことにとても意義があると話しました。会場の参加者の中には、「ヤレる」とは性行為が出来るという意味であると初めて知り、そのようなことがランキングになったことに驚き唖然とされている方々もいらっしゃいました。
次に、NGT48山口真帆さん暴行事件。これは、アイドルグループの山口さんが自宅に入る際に男二人から口を塞がれるなどの暴行を受け、グループ運営の支配人に相談したが放置されたため、1ヶ月後に自ら号泣のビデオを流すと共にツイッターで被害を告白したところ、その数日後に謝罪をさせられ、犯人は不起訴・釈放になったという事案です。これについて伊藤弁護士からは、アイドル契約の内容の問題性や声を上げた被害者をトラブルメーカーとして謝罪させるセクハラ被害と通ずるとの指摘がありました。
また、上記の他に、日本では昨今女性の人権を軽視するような炎上広告が相次いでいることや、日本の刑法の強姦罪が他国に比べ成立要件が厳しいため不起訴や不処罰になることが多いこと、セクハラは抽象的な概念などではなく法律違反であることなどの説明がありました。
当日の様子を収録したビデオは以下からご覧になれます。