イベントアーカイブ 【イベント報告】世界子どもの日キャンペーン2日目

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)では、世界子どもの日にあわせて、11月20日と21日の2日間に渡りイベントを開催いたしました。11月21日は、校則問題について考えるプログラムを実施いたしました。

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開会のあいさつ・大使館メッセージ

 HRNの新倉修理事長より開会の挨拶をいたしました。また、本イベントのスポンサーを紹介いたしました。

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また、本イベントは、以下の大使館の後援・協力により開催されました。

 

 

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ヒューマンライツ・ナウの取り組み・子どもの権利について

次に、HRNインターンの溝口より、HRNの取組みおよび子どもの権利について紹介いたしました。

  • HRNの取組み

こちらのリンクから当団体の概要についてご覧いただけます

https://hrn.or.jp/outline/

 

  • 子どもの権利

子どもの権利の内容は、子どもの権利条約によって規定されています。本条約は、1989年11月20日に国連総会で採択されたことから、11月20日は世界子どもの日に制定されています。

約2021年11月現在、子どもの権利条約は、196の国と地域によって批准されています。本条約では、18歳未満の子どもを、権利を持つ主体として位置づけ、子どもが、おとなと同じように、ひとりの人間として権利を持っていると認めています。子どもが持つ権利を大きく4つに分けると、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利があります。

 

内田良氏よりプレゼンテーション

名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授の内田良氏より、校則問題についてお話を伺いました。

 

■校則について

これまでの学校文化は上から厳しい指導を受け、それを歯を食いしばって耐え抜くというもので、校則とはまさに生徒に対して「考えるな」という指導方針であったと内田氏は指摘しました。

しかし、これからの時代は、「自分で考えていく」時代になってきており、その流れの中で校則の見直しが始まっていると説明しました。

また校則は、校則を緩めた先のことをおとなが勝手に想像して、生徒に対する不信感を募らせているからこそ作られる仕組みだと説明しました。例えば、マスクの色を白のみに指定する校則が生まれる原因について、内田氏は次のようなおとなたちの考えがあるかだと示しました。

 

「マスクの色を白以外の色でもいいとすれば、そこから持ち物が派手になり、さらに化粧もし、化粧をしたから学校の外で派手に遊ぶようになり、外で遊んでいたら事件に巻き込まれて、その事件が学校に持ち込まれる。だから、そのようなリスクが生じないように根こそぎ危険を排除しよう。マスクは白以外認めない。」

 

おとなたちが校則を緩めた先のことを勝手に想像している一方、生徒たちは校則を緩めたとしても何も起こらないと考えている現状があります。

 

■学校依存社会

私たちの社会は、人を傷つけない限り、個人は原則自由であるという社会ですが、校則は生徒を原則不自由とする仕組みです。校則は、服装の指定、髪型の指定、さらには学校が終わったあとの外出時間の指定、夏休みの行動規制等にまで及びます。

内田氏は、このような校則による行動規制は学校だけの問題ではなく、地域社会の問題でもあると指摘しました。

例えば、制服を着た子どもたちが学校帰りに飲食店に行った際に、その子どもたちの行動について地域住民が学校に苦情を入れ、苦情を受けた学校は、子どもたちの授業が終わった後の行動を制限するということがあります。

このように地域住民が、子どもの広範な管理を学校に期待している社会を「学校依存社会」と内田氏は定義します。校則の問題は、学校だけが原因ではないということは明らかです。

 

■校則の見直し

内田氏は、校則の見直しのためには「先に変わるべきなのは生徒なのか? 先に校則を見直し始めるべきなのは生徒なのか?」という問いを投げかけました。

これについて、教師こそが変わるべきであり、教師による校則の見直しが必要だと述べました。校則について生徒が出した提案が教師によって却下されたという事例がたくさん報告されています。

また、半年・一年かけて、やっと許可されるタイツの色が一色増えたなどという事例も多くあり、そのような変更であれば学校長が一日で変更できるはずです。今、生徒による見直しがブームのようになっていますが、教師が変わらなければ生徒の全ての提案が却下されてしまいます。校則改革は、まずはおとなの問題ですと述べました。

 

■おわりに

学校の中には子どもの人権を尊重したいと考えている教師もいるが、まだまだ少数派であり、学校の外部から声をあげ続けることで、そのような教師たちが声をあげられる環境が作れると、内田氏は考えています。子どもの人権を尊重したいと考える声を学校内部であげられるように、これからも学校の外から声をあげ続けたい、と述べました。

 

ディスカッション

次に、身近にある人権侵害と感じる校則や、なぜあるのか分からない理不尽に感じる校則などを参加者に紹介していただきました。三つ編み以外の髪型を認めない校則、日焼け止めの禁止、事実上強制されていた冬場の縄跳び、金銭的に余裕がなく制服が買えない人がいるのに制服の購入が義務付けられていることなどが挙げられました。

また、声を挙げても、先生が一切話を聞いてくれないことや、周りの友人からも怪訝な目で見られることもあるというお話もありました。

さらに海外の高校に進学した方からは、進学先の学校には校則がなかったため、自由に過ごせるようになり、日本で通っていた学校では色々な行動が制限されていたということを自覚したという経験を共有していただきました。

 

筑波大学附属坂戸高等学校 生徒会 亀谷氏からの活動紹介

筑波大学附属坂戸高等学校の生徒会長の亀谷凪沙氏から、校則改革についてご紹介いただきました。

筑波大学附属坂戸高等学校では、15項目あった校則を2項目に見直されました。制服について制服と私服の両方を選べるようにする校則改革の順序として、まず制服と私服どちらを着てもいい2週間のトライアル期間を設けたそうです。

トライアル実施の前後でアンケートを実施し、最初のアンケートでは保守的な意見が見られましたが、トライアル期間後には校則改革への賛成意見が増えたという結果が出ました。

また、校則変更後は、「校則リフレクション会」を定期的に設け、生徒の意見を反映し、小さな問題や疑問の認知を図っているということです。多様性を認めあうために自由化した校則が、持続可能なものとして学校に根付くように、「校則リフレクション会」を活用していきたいとの展望を述べました。

今後予定している活動としては、年度末に生徒代表と生徒指導部で振り返りを行うこと、受験生や学校外部に対して校則改革についての情報を発信することなどを挙げました。

 

質疑応答

■保護者や先生の校則改革に対する反応 

亀谷氏は、校則改革後の保護者の反応について、元々学校が自由な校風であったため、保護者からの強い反発はなかったと振り返りました。髪色の校則についても、最初はあまり好意的に捉えていない先生もいたのではないかと思うが、校則改革後は、先生から生徒に対して「その髪色いいね」と声を掛けられるなど、先生からも受け入れられていると感じると述べました。

亀谷氏の回答を受けて、内田氏は、筑波大学附属坂戸高等学校をはじめとした多くの学校で校則を自由化した際に、生徒が荒れたということもなく、おとなが懸念していたことは一切起きなかったという結果は明らかなのだから、その結果を踏まえてもおとなは校則を再び強めるのか否か、おとなの姿勢が問われていると述べました。

 

■校則改革後の生徒の服装

 内田氏は亀谷氏に、生徒の服装について尋ねました。内田氏は、服装を自由化した学校は未だ多くなく、服装を自由化することに不信感を抱いているおとなも多いため、実際に服装を自由化した生徒たちがどのような様子なのかを発信することは極めて大切であると考えています。

 亀谷氏は、生徒の服装について、制服、制服に私服を組み合わせる、私服の3つのパターンがあり、いつも制服を着ている人が3割弱、私服の人が4割弱程度、残りは制服と私服を組み合わせていると説明しました。また、私服については、部活にそのまま行けるようにジャージを着ている人、実習着を着ている人や、街中にいる同年代の若者が着ているような服装の人がいると述べました。

 これに対し、内田氏は、制服を自由化したとして、亀谷氏の説明の通り、街中にいる若者がそのまま学校に来ているだけであるから、おとなたちは服装の自由化を恐れることはないと思うと述べました。

 

■教師の協力を得ることが難しい学校に通う生徒へのアドバイス

 亀谷氏は、教師に生徒の立場に立って考えてもらえれば、校則が変わるのではないかと述べました。例えば、雪の日にタイツが禁止という校則があり、少しでも考えれば問題があるのは分かるはずなのにその校則が残っているのは、教師がデメリットの方に焦点を当てすぎていることに原因があると亀谷氏は考えます。そこで、生徒側から教師に対してこの校則はおかしいと声掛けをして、異なる立場に立って考えてもらう機会を作ることで、教師の意見を変えるきっかけになるのではと提案しました。

 内田氏は、校則をおかしいと思っている教師はいるが、まだ生徒を抑えつけるような教師が権力を持っているため、教師から校則を改善するという声も挙げにくいと述べられました。だからこそ、教師が声を挙げることのできる環境を作りたいと考えていらっしゃいます。そして、今、教師に自分の声をなかなか聞いてもらえない生徒も、校則を変えたいと考えている教師を見つけることが最初の一歩になると話しました。

 

スピーチコンテストの入賞者によるスピーチの披露

当団体では、グレタ・トゥンベリさんのように若者自らが勇気を出して子どもの権利について発信することの意義を伝えていくということをコンセプトとして、毎年スピーチを実施しております。本年度は、世界や身の回りの人権について学び・考え・発信する機会を提供することを目的に国内外の中高生から作品を募集いたしました。そして、厳正なる審査の結果、3名の方が入賞いたしました。

 

最優秀賞 坂口くり果さん(Drumheller Valley Secondary School)

「明るい未来のために」


www.youtube.com

 

優秀賞  芦田幸来さん(ケイ・インターナショナルスクール東京)

「カンボジアの子どもたちと話して」


www.youtube.com

 

入賞  小池和さん(山梨県立甲府西高等学校)

「人格で判断される世界に」

 

2日目のイベントでは、芦田さんと坂口さんに発表していただきました。(芦田さんはご都合が合わず、録画での発表となりました。)

上記のリンクにて、イベント2日目に披露されましたスピーチはご視聴いただけます。

 

 

閉会のあいさつ

 HRN伊藤事務局長より閉会のあいさつをいたしました。大使館の方々やスポンサーの方々をはじめ、ご登壇いただいた内田氏、亀谷氏、当日スピーチを披露してくださった芦田さん、坂口さん、スピーチに応募していただいたみなさま、その他協力いただいた方に、改めて感謝の言葉を述べました。そして、若い人たちの行動で社会は変えられると信じており、若者の権利が大切にされる社会を作るために、HRNは今後も人権問題についての活動を続けていきたいと思いますと締めくくりました。

 

おわりに

 このページでは、2日間にわたる「世界子どもの日キャンペーン」の2日目の議論の内容をまとめました。1日目の報告はこちらよりご覧ください。

 

「世界子どもの日キャンペーン」2日目にご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。ぜひこれからもご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。