【メディア】asobist.com(あそびすと)にHRN事務局長 伊藤和子のインタビュー、認定NPO法人取得感謝イベントの記事が掲載されました

asobist.com(あそびすと・インターネット情報サイト)にHRN事務局長 伊藤和子のインタビュー、
認定NPO法人取得感謝イベントの記事が掲載されました。
記事ページはこちらです。

http://www.asobist.com/entame/interview/20140807.php

(記事全文)
世界各地で行なわれている人権侵害に心を痛め、問題の解決に向けて、
奔走する弁護士・伊藤和子。そのパワフルな活動の秘密に迫る
国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」という名前を訊いたことがあるだろうか?
2006年に発足した、国内外の深刻な人権侵害の問題に取り組んでいる団体である。この団体の事務局長として活躍しているのが、弁護士の伊藤和子さんだ。その活動は多岐にわたり、国内では冤罪事件への問題提起やDVなどからの女性の保護や法整備、福島原発事故の被災者の人権保護、また、フィリピンやビルマ(ミャンマー)をはじめ海外の人権問題にも取り組んでいる。
こうした活動に日々奔走する伊藤さんに、ヒューマンライツ・ナウの活動、そして自らの体験を綴った著書『人権は国境を越えて』(岩波ジュニア新書)についてもお話をうかがった。(2014.8.7)
7月30日のイベントには、ヒューマンライツ・ナウの阿部浩己(あべ こうき)理事長(神奈川大学法科大学院教授)も参加、後に挨拶に立ち、今後のヒューマンライツ・ナウについて熱く語った
――今年、ヒューマンライツ・ナウは認定NPO法人格を取得したそうですね。おめでとうございます。
伊藤:ありがとうございます。
――その前、2012年にはSpecial consultative status、国連特別協議資格も取得されていますが、これらを取得したことによって、どんなことが変わるのですか?
伊藤:国連特別協議資格は、国連憲章71条に基づき、国連と協議を行うことのできる資格です。これで、国連の人権にかかわるすべての会合で、各国政府と並ん で発言権を認められました。ヒューマンライツ・ナウからの声を「直接国連に届けることができる」といえばわかりやすいでしょうか。
認定NPO法人格の方は、東京都からの認定で、これによって寄付してくださった方々に、寄付金の控除が認められることになります。結構審査が厳しくて、3回目で認定されました。
――7月30日には、認定NPO法人格の取得の感謝イベントも開催されたそうですね。
伊藤:ふだんからヒューマンライツ・ナウを支えてくださっている方々への感謝の気持ちを込めて開催しました。また、ソーシャルメディアの第一線でご活躍されている、ハリス鈴木絵美さんと堀潤さんをお招きしてトークショウもしました。このイベントには、会員以外の方々にも参加していただき、ヒューマンライツ・ナウの活動を広く知っていただく一助になったと思います。
お二方とも、国内だけではなく、国際的な問題にも取り組まれているので、私たちの活動にも理解を示してくださり、またそれぞれのご活動についてのお話もとても興味深い内容でした。ヒューマンライツ・ナウの活動についての的確なアドバイスもいただいので、今後役立てていきたいと思います。
――国際的な問題といえば、先月からイスラエル軍によるガザ空爆や地上戦が問題になっていますね。
伊藤:はい。毎日、死者の数が増えていて、本当に胸がつぶれる思いです。ヒューマンライツ・ナウでは、7月11日に即時停止と民間人保護を求める声明を発表しました。21日には、他のNPO法人などと一緒に緊急集会とキャンドル・アクションを共催しました。また、世界各国のNGOと連携して、国際人権理事会に対し、速やかに国連調査団を発足させ、戦争犯罪が疑われる行為を調査し、責任の所在を明確にするよう求める声明を出し、国際調査団が結成されるに至りました。1日も早い停戦と民間人保護を実現するために、今後も関係各所に働きかけていくつもりです。
「NGO 緊急集会とキャンドル・アクション STOP! 空爆 〜ガザの命を守りたい〜」実行委員会提供
――危険に身をさらされている人々といえば、日本でも福島第一原発事故に関してはそう言えるのではないでしょうか。
伊藤:実は、2012年11月に、国連人権理事会が選任した特別報告者アナンド・グローバー氏を中心とした調査団が日本に派遣され、福島原発事故後の人々の「健康に対する権利」の実情を調査しました。調査団は福島県内各所や避難先、さらに関連する各省庁、東京電力なども訪れ、様々な観点から調査しました。
翌13年の5月には調査報告書が国連人権理事会に提出され、日本政府に対して施策の抜本的な改善を求める勧告が出されました。特別報告者の名前から「グローバー勧告」と呼ばれています。当時メディアは充分取り上げませんでしたが、被災者や避難者、特に女性や子どもの立場に寄り添った内容になっています。
――グローバーさんは今年の3月に来日しましたね。
伊藤:「グローバー勧告」のことを、もっと多くの皆さんに知っていただきたいという思いから、ヒューマンライツ・ナウがクラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げました。その結果、グローバー氏を招聘することができました。目標金額以上の募金が集まり、関心が高いことを実感しました。3月20日には東京で、21日は福島市、22日は京都市で、それぞれ講演会とシンポジウムが開催されました。「グローバー勧告」については、ヒューマンライツ・ナウから詳細な内容の本が8月に出る予定です。興味のある方はぜひお読みになってください。
こうした活動を通して、少しでも福島で続く問題に対して、国が責任を持ち、人権の視点から解決していくことを願います。ただし、私たちの最終的な目的は「人権を守ること」、つまり世界中から深刻な人権侵害をなくすことです。日本国内の現状ひとつとっても、やるべきことはたくさんあります。
――さて、伊藤さんのご著書、『人権は国境を越えて』はジュニア向けですが、内容としては、大人が対象でも充分読みごたえのある内容でした。
伊藤:ありがとうございます。多少表現はわかりやすくしたつもりですが、内容については、”子ども向け”であることを意識はしませんでした。ただ、この本によって、子どもたちが、世界で、そして自分たちが暮らしている日本で、様々なことが起きていることを、少しでも意識してくれて、考えるようになってくれたらいいなという思いで書かせていただきました。また「世界で何が起きているか」を知ることは、これからの未来を生きて行く中で、今以上に必要になっていくことでしょう。
人権という言葉は、なんだか難しいことと捉えがちですが、子どもは大人以上に人権を尊重されるべき存在です。人権はまず、自分にとってかけがいのないものですし、他人の人権が脅かされているのに誰も手を差し伸べないような社会では、自分もハッピーとは言えないし、自分もいつ被害に遭うかわからない。人権がかけがいのないものだと理解することで、自分が理不尽な立場に立たされたときに立ち向かう勇気を培い、世界や身近なところで他の人たちが苦しんでいるときに一緒に行動してほしいと思います。未来を担う世代が人権を大切に思う文化を創造することは、人権侵害や差別のない社会を創造することにつながります。
そういう意味では、ジュニア新書として出していただいた意味は大きいですね。
――そもそも伊藤さんが弁護士をめざしたきっかけは何だったのですか?
伊藤:私が高校生の頃はまだ、女性が社会の第一線で働くことは難しい時代でした。
女性であるがゆえに差別されることのない、やりがいのある仕事は何かと考えたとき、小説家と弁護士が浮かびました。最終的には弁護士を選びました。
法学部に入るまでは順調でしたが、そこから司法試験に受かるまでは大変でした。当時は今とは違い合格率2%の、本当に「狭き門」でしたから。三度目の正直で何とか試験には受かったものの、一人前の弁護士になるまでが、また大変でした。
――まだ弁護士として駆け出しの時代に、すでに「世界女性会議」に参加されていますよね。
伊藤:1995年にアジアで初めて「世界女性会議」が北京で開催されました。是非その場に立ち会いたいと思って、日弁連(日本弁護士連合会)の先輩に「代表団に入れてもらえませんか」と、ダメもとでお願いしたんです。運良く、他のベテランの弁護士たちに混じって代表団に加えていただくことができました。そこで、世界中から参加した女性たちから様々な証言を聞き、「戦争と女性への暴力」の惨状を初めて目の当たりにしました。
この「世界女性会議」に参加したことが、人権問題に深く関わり、国際人権NGOを起ち上げるといった、その後の私の人生に大きく影響を与えました。
――今の日本では、子どもたちはなかなか夢を持てないとも言われます。そんな子どもたちも、『人権は国境を越えて』を読んだら、伊藤さんのように頑張っている大人が大勢いることを知って、明日への希望や声を上げる勇気を持ってくれるのではないでしょうか?
伊藤:そうなれば本当に嬉しいですね。「世界女性会議」に参加してからヒューマンライツ・ナウを起ち上げるまで、時間がかかりましたが、何もないところからひとつのNGOを起ち上げ、夢をカタチにしていった過程を書きました。私自身、飛び抜けた才能があるからできたというわけではなく、誰でも行動をおこす勇気を持てば夢に近づくことができる、と思うのです。
これからも、広くアンテナを張って、国内外の様々な問題に目を向けて、解決につながるよう活動を続けていきたいと考えています。
――ますますのご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。
『人権は国境を越えて』伊藤和子著/岩波ジュニア新書
「人権問題に苦しむ人々のために何かをしたい」――その思いを胸に、国内外の人権問題に真摯に取り組む女性弁護士。その後、国際人権NGOを仲間と立ち上げ、活動の場を広げて、数々の問題に粘り強く取り組んでいく。その姿に、心打たれる一冊。
伊藤和子(いとう かずこ) 
弁護士/国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長
1994年に弁護士登録(東京弁護士会所属)。以後、女性・子どもの人権、冤罪事件、環境・公害訴訟など、人権問題に取り組む。2004年ニューヨーク大学ロースクールに客員研究員として留学。2005年 ジュネーブの国連人権機関でインターン、2006年に「ヒューマンライツ・ナウ」の立ち上げにかかわる。12年「ミモザの森法律事務所」を設立。現在、UN Womenのアジア太平洋地域アドバイザーもつとめる。
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以上