【イベント報告】ESGを巡る国際的潮流と日本企業に求められるグローバルな視点

ヒューマンライツ・ナウは2019年4月3日、「ESGを巡る国際的潮流と日本企業に求められるグローバルな視点」と題してイベント開催しました。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったもので、この3つの観点が企業の成長には不可欠とされています。世界的には、このESGの観点を取り入れる企業が増えていますが、日本ではまだ浸透されていません。ヒューマンライツ・ナウでは「ビジネスと人権」という観点から、この3つの視点を重要視しており、日本企業には何が求められているのかがこのイベントのテーマでした。

4名のスピーカーの方々からそれぞれの視点についてお話を頂き、第2部ではパネルディスカッションと会場からの質疑応答を行いました。

久保利英明弁護士「NGOの知恵を借りる」
まず、ヒューマンライツ・ナウの運営顧問である久保利弁護士から、日本企業にかけている視点についてお話を頂きました。久保利弁護士は「サステナブル(持続可能)」という視点と長期的なプロフィットを重視する傾向が日本企業には欠けていると指摘されました。日本企業の相次ぐ不祥事に対しても第三者の指摘や介入を良しとしない傾向があり、社会活動を行うNGOとの関係性を構築することにも消極的であったといいます。しかし、本来なら社会問題に取り組んでいるNGOと協力して、NGOが持つ「知恵」を借りながら企業も成長していくべきであり、企業も人権や労働問題に取り組まなければならないと指摘されました。そのためにはまず企業が変わらなければなりません。ESGの観点がグローバルになる中、日本企業も長期的で持続可能性のある成長のためには、NGOなどと協力してこの3つの観点を成長戦略の柱にしていくことが求められているとお話されました。

りそな銀行 松原稔氏「ESGへの取組み」
次に、りそな銀行の松原氏よりりそな銀行の具体的な事例と共にESGへの取組みついてお話を頂きました。
りそな資産運用部門のESGへの取組みとして、1具体的なアクティビティ、2サプライチェーンとESG、3企業不祥事の3つをあげられました。1具体的なアクティビティとして、企業のサステナブルな活動のサポート、2サプライチェーンとESGとして、サプライチェーンにおける労働問題、人権問題、3企業不祥事として、協働エンゲージメントについてお話されました。とくに3の協働エンゲージメントでは、不祥事が起きた際に他社を含めてプラットフォームを立ち上げ、徹底した調査と原因究明、再発防止策の実施を行っていくことが重要であるといいます。そのためにも企業の体質と風土の改革が不可欠だと指摘されました。

ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子「企業にも人権という視点を」
次に、NGOの立場から、NGOの役割として、ESGのSに特化した活動をあげ、ビジネスと人権という観点から、海外サプライチェーンや工場における人権問題について話をしました。以前は国際社会でもビジネスと人権という視点はあまり浸透していなかったが、バングラデシュにおけるラナプラザ事故などをきっかけに国連でもビジネスと人権の動きが広まったといいます。ヒューマンライツ・ナウでも、日本の大手アパレル企業の中国委託工場に潜入調査を行い報告書を公表するなど、企業への働きかけを行ってきました。このような活動を続けることで企業にも人権の意識が高まり、海外工場に直接エンゲージすることで労働環境が改善された例もあります。このようにNGOとして企業に働きかけを続け、同時に企業との関係を構築していくことが大切であると指摘しました。

国広正弁護士「NGOはESGのGである」
最後に企業の立場から国広弁護士にお話頂きました。企業のリスク管理の視点から、NGOと関係を持たない企業はリスク管理が正しくないと指摘されました。日本ではNGOのイメージが良くなく、企業がNGOとの付き合いを避ける傾向にあるが、実は現場を知っているNGOは企業にとって大切なパートナーであるといいます。サプライチェーンの問題をとっても、現状がどうなっているのかを把握するのはその問題に取り組んでいるNGOに聞くことが一番手っ取り早く、確実です。そして重要なのは、NGOはESGのG=ガバナンスの役割もあり、企業自体が気が付いていないリスクを指摘してくれる存在であり、役に立つ存在であるといいます。これは企業の長期的な成長を支えるリスク管理を高めることになり、企業はNGOとの関係性を構築する必要があると話されました。

このようにそれぞれの立場からお話を頂き、ESGについて理解を深めると共に、企業とNGOの在り方、協働体制の構築方法などについてもわかりやすくお話を頂きました。ヒューマンライツ・ナウはこれからも「ビジネスと人権」という観点を大切にしながら、協賛してくれる企業と協力しあい労働環境の改善などを企業に対して求めていきたいと思います。