11/27(火)に専修大学神田キャンパスにて「戦場取材とジャーナリズムの危機-イラク、パレスチナの現場から」のテーマのもと志葉玲さんにお話しをいただきました。
イラクやパレスチナ、そしてイスラエル自治区の方々の写真を見せていただきながら、日常や人々の生活やその地域でのジャーナリズムに関して写真の背景やその登場人物の周りの状況について話してくれました。
まずは、イランにおけるクルド人自治区の方々の独立への動きやその背景についてお話ししてくださいました。クルド人とは国境をもたない、最大の民族ですが、イランやトルコなどの国々による圧力があり、たとえ、独立投票においてどれだけ独立が支持されていても、クルド人にしてクルド語がしゃべれない子供が多いように、独立は困難がまだ多いのだと話されました。
次に、イラクでのISが去った後の状況について話してくださいました。ISが立ち去った地域において、今もなおその影響は消えていません。ISの洗脳を受けた子供たちの再教育が大きな課題となっていました。またISとイラク戦争と米軍の関係性の中では、米軍の態度がISの過激な態度につながったのではないかという点を含み、イラク戦争における伝えられていない点にフォーカスを当てお話しいただき、ジャーナリズムの重要性を訴えられました。政権交代の後におけるイランでの人権侵害がメディアで報道されていない事を懸念されており、いまだ暴力が完全になくなったわけではないことを強調されました。日本のジャーナリズムが内向きでいかに外に無関心であるかという点とともに、ISの欠点や暴力性のみ焦点をあて、その他の組織による人権侵害や状況への無関心が懸念されており、この講義の中でも数回はなされていました。
そして、パレスチナのエルサレムにてガザの状況を数々の写真を通じて説明してくれました。遊んでいる子供たちを入植地により壊されてしまった人々がその地域の国有化を防ぐために毎週その場所であそんでいる写真でした。その背景にある、人々がうけている人権侵害について、経験やインタビューを通じてはなしてくれました。パレスチナの人々はユダヤ人入植者の人によって毎月また毎日のように発砲されたり、建物などを壊されたり、等非情な人権侵害を日常的にうけていたのでした。またガザ地区においても、出入りの自由がない土地における貧困そして人権侵害があらゆる場所からうかがえました。どの写真の子供たちも一見おだやかな、なごむかもしれないような様子でいる写真ばかりでしたが、その背景の教育や電気、食糧そして環境汚染、衛生環境の劣化などガザの人権侵害が深刻でありました。
そして、次に個人の経験を通してジャーナリストが直面している危機について語ってもらいました。ジャーナリストとしての立場や政府の勧告との関係について特に語る際には、志葉さんの考えとテレビやメディアでの扱われ方に大きな違いがあることに大変懸念をもっておられました。外務省が退避勧告を従わなかったという「自己責任論」が横行していても、ジャーナリストの使命として、
また、日本のメディアやジャーナリズムがこのような状況に対して静かであることが残念だと話、
このような状況が現地の人々の日本への考え方を知ることができないこと、現地の人ではないからこそ取材ができる事があることを訴えました。
ジャーナリズムがなくなってしまうと政府に都合の悪い情報を隠蔽し、市民への情報開示ができなくなってしまうという点でジャーナリストの行動に規制をかけるような強制力のある退避勧告をひどく批難しておりました。「権力の監視者」としてのジャーナリストが必要不可欠であることを強調され、ジャーナリズムがまともに機能しないことの危険性、ジャーナリズムの重要性を訴えられました。
また、HRN事務局の伊藤和子より、ジャーナリストの安全に関しての国際動向についてもお話がありました。パレスチナ、イラクへ国際犯罪裁判所や国連にて支援やヒアリングをもって法の下に処罰をおこなおうとしていますが、しかし、ISへの処罰を焦点にあてており、ISと関わるしかなかった方々の事情を無視し、IS以外の組織によって行われた暴力に関して国連の対処は不十分であるとして、HRNとして今後も見守っていく必要性を感じていると話されました。
世界的にジャーナリストの安全が脅かされている傾向にあり、「攻撃が政府にせよ、非政府組織にせよ、許してはならない」といった国連事務局長のお話しを振り返りながら、政府が環境とジャーナリストの安全を保護してあげなくてはならないといった姿勢を示し、日本のジャーナリズムやメディアの取り上げられ方に対して姿勢を改める必要性を説きました。
多くの参加者はご購入いただいたカレンダーを最後に志葉玲さんからサインをもらっていました。たくさんの参加者にお越しいただき誠にありがとうございました。
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