【イベント報告】2/27 「木村草太氏×申惠丰氏 「憲法改正と人権~国家緊急権が意味するもの~」を開催しました。

安倍政権のもとで「憲法改正」に向けた動きが進む中、特に「緊急事態条項」の新­設が争点となっています。
「緊急事態条項」は、戦争や大災害が発生した際に首相に権限­を集中させるもので、緊急時に政府が迅速に行動するために必要との主張がある一方、政­府に権力が集まり、民主主義・基本的人権を過度に侵害するリスクが懸念されています。
­安倍首相は昨年「緊急事態条項」の創設を目指すことを表明。今年の夏に控える参院選で­、改憲が争点となることが予想される中、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、2月27日、憲­法学者の木村草太氏、国際法学者の申惠丰氏をゲストにお呼びし、「憲法改正」・国家緊­急権がもたらすリスク、人権保障上の問題などについて議論するトークイベントを開催しました。

イベントの様子がYoutubeにアップされていますので是非ご覧ください。(一般公開後、会員サイトにアーカイブされます)

以下、イベントに参加したインターンの報告を紹介します。

昨年、十分な議論が国民的に共有されないまま強行に採択された安保法制については、わかりにくい点、疑問な点が多々あります。そこで、憲法学者の木村氏は、安保法制で何が変わるのか、何が問題なのかを憲法学の観点から論理的に、且つわかりやすく分析されました
例えば、これまで後方支援は、非戦闘地域において行うとされていたものが、現に戦闘が行われていない地域なら可能となったことについて、木村氏は「一見するとこの違いはよくわからないが、電車を待つときは黄色い線の内側で待ちましょうという話だったのが、電車が通っていなければ線路に降りてもいい、そういう話であります」などと難しい条文を噛み砕いて解説されました。また、木村氏は講演の中で、「イラク戦争の失敗を繰り返さない」ことを強調しました。日本が支持して自衛隊を派遣したイラク戦争は、結局大量破壊兵器がなく、戦争自体が国際法上違法だったとされています。これを支持した過ちは二度と繰り返されてはならないのに、この問題で日本政府の事後的検証として公表された報告書はたった4頁で、戦争当事国の行った検証と比較しても明らかに不十分な内容だったことを指摘。違法な武力行使に加担しないための検証メカニズムが日本において機能していない状況下で、今回のように広範な海外での軍事行動に協力・参加することを可能とする法制を発動させることは、深刻な過ちを繰り返しかねない、という懸念を示唆されました。
続いて国際人権法学者の申氏が、ナチスの全権委任法等の歴史を振り返りながら、いま日本で議論が進みつつある「緊急事態法制」の問題点を指摘。歴史をたどると全権委任法ができた当時のドイツの状況と日本の今の状況に共通点があることが浮き彫りになりました。
日本にはすでに個別に緊急事態に対応する法律があるのに、憲法に憲法事態条項を入れる意味はなにか、と申教授は問いかけ、人権と自由に対する広範な制限がもたらされる危険性を指摘しました。申教授は、国際人権法や各国の法制との比較 から見ても、人権が制約される危険性が高いことを指摘されました。
会場からは、多くの質問が出され、今後も安保法制や緊急事態条項の問題性をわかりやすく社会にアピールしていくことが確認されました。

 

◆◆当日の写真◆◆

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