皆さまからの温かいご支援をいただき、この間、ヒューマンライツ・ナウは、国際人権基準を行動規範とし、国境を超えて世界、特に日本を含むアジアの最も深刻な人権侵害に取り組んで参りました。
これまでの活動で「女性の権利」や「ビジネスと人権」といった分野では一定の前進が見られる一方、今なお世界を見渡すと、根強くはびこる差別・分断の問題に加え、アジアでの権威主義の台頭、深刻化する気候変動問題、繰り返される武力紛争など深刻な人権侵害が広がっています。
そこでヒューマンライツ・ナウでは15周年を記念して、これまでの活動を振り返ると共に、国境や世代を超えて、みんなで人権が守られた平和な世界を実現するにはどうしたらよいかを考えるべく、イベントを開催しました!
第1部はヒューマンライツ・ナウ伊藤和子副理事より、ヒューマンライツ・ナウについて説明後、15年間の活動について話していただきました。
【イベントアーカイブ動画】
第1部 「6つのビジョンから見た15周年」
報告者:伊藤和子副理事
■ヒューマンライツ・ナウとは
ヒューマンライツ・ナウは、日本を本拠とする日本で初めての国際人権NGOです。
世界人権宣言をはじめ国際的に確立された人権基準に基づいて、日本から国境を超えて人権侵害をなくすことを目標に活動をしてきました。
世界の人権団体やアジアの人権団体と関わりをもち、2012年は国連特別協議資格を取得して国連NGOになり、2021年にはニューヨークの事務所を法人化してきました。
できる限り最も深刻な人権侵害に駆けつけて、被害者の方に代わって声を上げること、得られた知識を元に国際社会や政府、企業に働きかけることで人権侵害をなくすため活動をしてきています。
■6つのビジョンから見た15周年
ヒューマンライツ・ナウにある6つのビジョンにおいて、この15年間どこまで活動が進んできたのか紹介しました。
戦争被害をなくす
ヒューマンライツ・ナウは戦争を最大の人権侵害として、これをなくしていくことを一つの優先に掲げてきました。戦争によって行われる人権侵害を調査することで、戦争犯罪の停止・処罰を求め、パレスチナやイラク、ミャンマー、ウクライナ問題について取り組んでいます。また、さまざまな分野で核兵器禁止条約のキャンペーンに参加し、国際的なルールづくりにも関わってきました。しかし、現在発生しているウクライナ問題など、戦争がなかなか終わらない現状があります。
抑圧をなくす
団体の発足以来、アジア地域の人権活動家が抑圧される、民主主義がないという状況に対して働きかけを行ってきました。団体設立の翌年には、軍事独裁政権があったミャンマーで国境沿いにある政治犯の方々をサポートする団体に赴き、民主化をサポートする活動をスタートしています。
未来を育てる
未来を良いものにしたいと望むミャンマーの若者たちに対して、国際人権法や人権を教えるアカデミーを設立。特に少数民族の若者たちに、人権に関する活動を教えてきました。
2014年と2015年には民主化が進み、ミャンマー国内で人権意識醸成に関する活動を主導しました。しかし、ミャンマーでは民主化後も少数民族に対する軍の弾圧が続いていました。団体として、この弾圧に対して批判をしてきましたが、2021年のクーデターによって民主主義は危機的な状況にあります。これまで続いてきた活動は権威主義の揺り戻しに苦しんでいます。
搾取をなくす
グローバリゼーションのなかで、児童労働や強制労働などのビジネスによる搾取に苦しむ労働者がいます。団体としては、過酷な労働環境で製造された製品を私たちが使用している可能性があることに問題提起してきました。
ヒューマンライツ・ナウは、2013年に発生したラナプラザ事件の被害者を訪ねたことをきっかけに、自社だけではなくサプライチェーン上の人権侵害の問題も取り上げるようになりました。
2014年にはユニクロの中国の下請け工場での潜入調査を実施し、非常に深刻かつ過酷な労働環境があることを調査報告書にまとめました。他にもタイの食品産業や技能実習生の問題も含め、サプライチェーン上の人権侵害を調査、提言することで、企業、産業、社会に変化を生んできています。
紛争や抑圧と結びつくビジネス、気候変動を促進するビジネスに切り込んで、企業への働きかけを通じて世界や社会を変えていくことに注力しています。
差別をなくす
2014年に日本におけるヘイトスピーチの調査を実施し、解消法の成立に向けてさまざまな団体と取り組んできました。
引き続き、ウィシュマ・サンダマリさんの入管問題、Black Lives Matterやアメリカのアジアンヘイトなど、この分野での活動をより広げていく必要性を訴えていきます。
暴力をなくす
特に女性に対する暴力をなくす活動をしており、2016年にアダルトビデオの出演強要問題に関して、隠されていた人権侵害を明らかにする調査報告書を公表しています。
公表後、被害者の人たちが声を上げたことでこの問題は顕在化され、政府が対策に乗り出すことになりました。この瞬間も実効的な法改正を実現するためにキャンペーンを実施しています。
また、伊藤詩織さんと共に東京やニューヨークでイベントを行い、他の支援団体の皆さまと共に性犯罪規制の改正を求めるオンライン署名を行ったところ、10万筆以上の署名が集まりました。
そして現在、刑法性犯罪規定の改正に関する法制審議会の議論が佳境を迎えています。
少しずつ性暴力被害に関して、前に進めてきたのではないかと話していただきました。
■未来をどう育てていくか
貧しい人を生産に組み込んで搾取することで成り立っていたグローバル経済が限界を向かえており、地球のどこかで感染が広がれば、世界の経済や消費が打撃を受けて持続可能ではないことは、人権団体だけでなく経済界にも明らかになっています。
持続可能な社会を目指さないと、私たちの未来は危ないことが明確になりました。
- 権威主義の台頭
- 戦争
- コロナ・気候変動など・持続可能性の課題
こうした課題に取り組むために、以下のアクションを考えています。
- 国際法に基づき、抑圧や人権侵害、戦争に抗し、人権が保障されるように声を上げる
- 抑圧体制に声が上げられない人たちに代わって声を上げる
- 若い世代、女性、声を上げにくい人たちに寄り添って声を上げやすい社会、その声が実現される社会を一緒に作る
- ヒューマンライツ・ナウに課された課題をみんなで担っていく。若い世代につなげていく
第2部 「若者世代から見た、この世界の人権と平和」
コーデネーター:津田大介氏(ヒューマンライツ・ナウアドバイザー)
発言者:ウィリアム・リー氏、小野りりあん氏、元山仁士郎氏、森百合香氏、山本和奈氏(五十音順)、坂口くり果氏(ビデオメッセージ)
第2部では、「若者世代から見た、この世界の人権と平和」をテーマに、若者世代の活動に焦点をあて、彼・彼女らからの視点から意見を伺いました。
ビデオメッセージ 坂口くりか氏(第7回世界子どもの日映像スピーチコンテスト最優秀賞)
現在留学中の為、時差の関係でイベントに参加することが難しくビデオメッセージで挨拶させていただきます。私は、小学4年生の時に、所属するNPOで子どもの権利条約を知ってから、条約を母子手帳に載せる活動を始めました。
子どもの権利条約を母子手帳に載せることで、子どもが生まれる前に条約を知り、暴力を振るわなくなるのではないかと考えました。こうした親から教育を受ければ、子ども自身にも権利があることを知り、周りの人々に伝えていくことができると思います。
小学6年生の時には、世田谷区の区長に直接子どもの権利条約を母子手帳に掲載することを頼み、2019年度の4月から掲載が実現しました! 現在はこの活動を全国に広げていくために、たくさんの方の協力を得ながら厚生労働省に提言活動を行っています。
現在は外国に留学をしており、子どもに対する価値観の違いや子どもの権利条約の認知度の違いを感じています。日本を対象に活動をしていますが、いずれは世界に母子手帳と子どもの権利条約を広げ、そして、子どもの権利条約を知っていて、守ることが当たり前の世界を作りたいと思っています!
■若者世代から見る海外と日本の違い
ディスカッション参加者:
小野りりあん氏:世界中の人々がどのように気候変動に立ち向かっているのかを学ぶ旅を始める。2021年に友人と共に、気候変動に関する4日間のハンガーストライキを起こす。
山本和奈氏:一般社団法人Voice Up Japanの代表理事。その他には、モビリティー業界のイノベーションやスタートアップ支援の事業を行っている。
ウィリアム・リー氏:Stand with HK@JPNに所属。2019年6月から香港のデモが発生した際、日本から香港のデモを応援する活動を行い、現在は香港に関する情報を発信している。
元山仁士郎氏:2019年2月に辺野古の米軍基地建設のための、埋め立ての賛否を問う県民投票を実施。渋谷で香港のデモや沖縄でBlack Lives Matterの集会等を行っていた。
森百合花氏:HRN主催第一回子どもの権利スピーチコンテスト受賞者。
ピエ・リアン・アウン氏:日本在住のミャンマー人サッカー選手。
社会を変える意識はどのようにして醸成され、アクションまでいたるのか?
山本:(山本氏は現在チリ在住)チリでは1900年代に独裁者政権があり、その時代に生きてきた年配の人々は独裁者政権から離れようとする意識が強いです。また、チリには非常に大きな格差があり、2019年の歴史上最大のデモがきっかけで格差や社会問題に人々が関心を持つようになったと言われています。
格差の背景には独裁者政権時代に構築された憲法が、あまり変わっていないことが挙げられ、国民投票により憲法改正がされることになったそうです。
格差が目に見えている状況から、人々がこのままじゃいけない、声を上げないと前に戻ってしまうといった意識、独裁者政権の名残があることから、若者も上の世代も、社会を変えないといけないという気持ちが強いことが表れています。
小野:市民運動に関して海外と日本の違いはそうした運動のノウハウが受け継がれているか否かがあると思います。そもそも日本で60〜70年代に発生した学生運動や市民運動をしていた人々に話を聞くと、運動の戦略や知識があまりない状態で取り組みをしていたと伺いました。そのなかで、戦略を立てて広角的に人が参加しやすいように市民運動を作り、みんなで育てていくことで日本の市民運動がより大きな効果が得られるのではないかと期待しています。
気候変動に関してイギリスでは、実は若者よりも大人が中心になっています。人々に影響を与えるようなデモをすることで、注目せざるを得ない状況を作ることでメッセージを発信していますね。日本では、まだまだそうしたアクションはないかなと思います。日本で今行動しなければならない必要性を、いかに国民に啓発できるかが重要だと思いますし、楽しくアクションを起こせるような工夫も必要です。
また、ロンドンでは運動を起こす時のトレーニングがあることに感心しました。運動を起こす時、さまざまなプレイヤーが必要になり、プレイヤーになってみたいと思った人が「どうしたらその役になれるのか」をきちんとトレーニングできる人が準備されています。運動のノウハウを伝授する方法が用意されているので、持続させていくことができるのではないでしょうか。
元山:2014年に自身で同世代の学生と共に運動をし始めた頃、インターネットでどういう風にデモをするのかを私も調べましたね。香港・台湾のデモやアメリカのデモも参考にしていたが、運動の仕組みを組織だって学べる場所は確かに見かけないです。口頭・口述で運動のやり方を伝えて継続させても、先細りになってしまうところがあるのかなと思いますね。
また、イギリスと日本とでは、おかしいと思ったことをどうやって他の人と共に声を届けるのか、問題を共有したらいいのかに対する行動が違いますよね。
ウィリアム:香港の最近のデモは、主導者がいない状況で自分がやりたい方向や体制で活動していく体制が多いです。2014年にようやく民主化に向けた大きな動きがありましたが、早い段階で終わってしまいました。その理由として、主導者が市民の望まない方向に運動を持っていってしまったからです。
誰かに従うことで間違った方向に行ってしまうのであれば、自分自身で考えて、自分自身が正しいと思う行動を取ることを香港のみなさんが考えだしました。結果として、2019年のデモでは200万人を動員できました。また、2020年7月頃のデモもあくまで香港人の各個人が主体的になって行動に移していました。
今の日本の若者世代だけではなく、一般社会的に個人が主体的になにか活動を立ち上げる動きが少ないのが少し残念ですね。なので、香港の例を鑑みて、日本の皆さんにも民主主義をうまく活用して自身の投票権や、自分の社会や自治体にある問題に関わっていただきたいと思っています。
ピエ:日本は生まれた時から自由な国で、私たちは戦って民主主義を獲得しようとしています。日本は政府批判もできますし、自身が思っていることを発言することができる。私たちの国は政府に反対する人は全て捕まり、政府を支持する人は保護される状況にあります。日本は、自由で民主的な国ですよね。
「このままではいけない」 切迫感をどう共有していくか。
最後に第二部の発表者の皆さまから「このままではいけないという切迫感をどう共有していくのか、今後どのように活動していくのか」についてそれぞれ一言いただきました。
小野:気候変動などはいますぐに行動しないと手遅れになってしまう。その切迫感を伝えるために、共に勉強や実践を起こす場所を作りたいです。
ウィリアム:まだまだ届いていない人権問題を知ってもらえるように、日本のローカルな面でも繋がりを持っていくことが大切。また情報を伝えるには言語の壁もあるので、日本語がわかる外国人にも、日本人と関わりを深めてもらえるよう努力していきます。
山本:声を上げることはやはり難しいけど、大切なのは連帯を示すこと。声をあげることだけにフォーカスするのではなく、自分ができる小さなことや、貢献できることを示していくことも重要なのだと、より多くの人に伝えていきたいです。
森:若者がデモに対してどのようなイメージを持っているか考えると、まだまだ当事者意識を持つ人は少ない気がします。日本でデモと聞くと、感情的な部分が原動力となって起こっているように見受けられがち。しかし、デモの仕方やトレーニングなどのノウハウを取り入れ、より知的に、論理的にデモを起こすことができたら良いなと思います。
元山:どのような発信をしたら届くのか、どんな価値観を大事にしていかなければならないのかを一緒に考えていきたいですね。また、アクションを起こす若者を利用しようと考える大人たちの価値観をアップデートし、若者一人ひとりの声に耳を傾けて欲しいと思います。
第3部 「世界の人権と平和のために私たちは何をすべきか」
コーデネーター:津田大介氏
発言者:阿古智子氏、小川隆太郎氏、佐藤暁子氏、鈴木賢氏、高橋済氏、雪田樹理氏(五十音順)
ディスカッション参加者:
佐藤暁子氏:ビジネスと人権プロジェクトリーダー
阿古智子氏:中国プロジェクトリーダー
雪田樹理氏:女性の権利プロジェクトリーダー
鈴木賢氏:ヒューマンライツ・ナウアドバイザー
高橋済氏:HRN事務局次長
小川隆太郎氏:HRN事務局長
ウクライナ侵攻を受け、私たちはどのようにコミットしていくべきか
小川:国連のアドボカシーの観点から、ウクライナ侵攻を受けて国連の機能不全が提起されるようになったという声はよく聞きます。しかし、国連が機能不全になっているとしても国連に代わる機関はないので、人権はやはり国際人権基準に基づいた定義のもと保護されるべきです。その大切さを、いま一度世代を超えて伝えていかなければいけないと感じています。
高橋:ウクライナに限らず、今まで世界中から難民として逃げてくる方がいままでもたくさんいます。今回ウクライナの人を助けること事態は良いことだと考えていますが、ミャンマーやアフガニスタン、シリア、イエメンに対してはどのような態度を取ってきたでしょうか。そのことを、振り返るきっかけにしなければならないですよね。「難民の選別は、命の選別」だと思います。いままで難民の選別をして、それを無関心に容認してきたことが私たちの社会の問題だと思います。
ウクライナの人々が命の危機に瀕していることから、自治体でも受け入れなどに関する活動があることは肯定的に見ているが、それが他の国籍の人に対しても「助けるべきだ」という意識が醸成するきっかけにできれば良いですね。
鈴木:ウクライナ侵攻を見てわかることは、民主主義が機能していない権威主義国家だからこそ起きてしまったと思います。しかし、翻って日本の状況を見てもあまり楽観視はできないです。日本も権力に忖度したり、長い物には巻かれたり、権力を批判すること自体を避ける傾向にありますよね。
また、日本人のデモに対するネガティブな考え方は、デモさせないようにしているという意味では、権威主義国家的な色合いが非常に強い国ではないでしょうか。さらには、投票権があるにも関わらず半数以上が棄権しています。このような状況は、日本自体が権威主義国家化している危険を感じます。改めて、日本の民主主義の健全化が急務だと言えます。
雪田:ウクライナの問題に限らず、戦時・紛争下では、女性や子どもに対する性暴力が、平時よりもさらに深刻な形で行われていることは、これまでの経験上明らかなことです。日本でも紛争下の性暴力ということについて、正しい認識を持っていない部分もあり、私たちの歴史にも繋がることです。今回のウクライナでの混乱を教訓にするのと同時に、紛争下で性暴力の被害に合っている人に、短期の支援ではなく長期的な視点で、なにができるのか、考えていくのかを個人的に思っています。
阿古:中国プロジェクトとしての視点でお話しをしますが、複雑な要素が絡み合ったなかでウクライナの問題が生じているので、中国ははっきりした姿勢を示すことができずにいます。そのなかで、日本は政治と経済を切り離し、経済を重視する対応をとってきましたが、(日中の国交において)この情勢下でまだそんなことを言えますか?と言わざるを得ないですよね。
中国は、ウイグルなどの民族を迫害する動きもありますし、一国二制度といった国際的な約束を無視するような形で国家安全維持法を作りました。そうした脅威が目の前で起こっているからこそ、日本がどういう国でありたいのか、どういった姿勢で中国と向き合いたいのか示し、その中でアジアの戦略や立ち位置を考えて、国際社会と協調していくことが大事だと考えています。
佐藤:ウクライナ侵攻によって、日本企業は、制裁的意味合いでロシアからの撤退の意思表示をしました。しかし、ミャンマーにおける日本企業の撤退はかなり時間がかかりましたし、撤退の意味合いもかなり違うと思います。日本の企業が、ある国の権威主義体制に加担している事例は、まだまだたくさんあります。
侵攻を受けて浮き彫りになったのは、企業として民主主義へどう貢献し、一緒に取り組んでいくのかという視点がまだまだ弱いのではないでしょうか。
一人ひとりのアクションが、企業というものを民主主義の中でしっかりと意義のある活動していくアクターを育てることになると思っています。
日本の人権状況は進んでいるのか
最後に第三部の発表者の皆さまから「日本の人権状況は進んでいるのか、後退しているのか」「今後の展望」についてそれぞれ一言いただきました。
佐藤:今まで人権NGOと企業は対立関係に見られていた。
しかし、ビジネスと人権のテーマでは、最近ではさまざまな企業から呼びかけをいただいていることから、企業との対話を通じて、さらにその先の脆弱な人々の人権の保護の実現を目指していきます。
阿古:人権は普遍的に捉えるべきで、入管の問題やヘイトスピーチ、歴史問題など、ダブルスタンダードにならないように自分たちの足元をしっかり固めた上で、海外の人々とも繋がり、人権意識の醸成をヒューマンライツ・ナウのプラットフォームを活用して行っていきたいです。
雪田:女性の権利の分野でいうと人権状況は、少しずつだが着実にプラスに動いてきています。刑法改正に取り組んでいますが、5年前と比較すると、今の社会はかなり耳を傾けてくれます。今後、人権団体としてどのように考えを発信して、社会を変えていくような活動をするのかが大事になると考えています。
鈴木:LGBTの権利についてはほとんど進んでいないが、唯一救いとなるのが若い人の関心が非常に高いことですね。同性婚については、若い世代は圧倒的に指示しています。若者にとっては、なぜ同性愛者の婚姻を否定するのか意味が分からないという人が多い。こうした問題は世代間の対立であって、“おじさん政治”が変わればすぐに解決します。しかし、若者は選挙に行かないので手放しに楽観的になれないところもあります。LGBTの人権問題については、成果が出る直前のところまできているのではないかと思って期待しています。ウクライナの問題を通じて、日本に逃げてきている人々の裁判にも良い影響を与えるのではないかと期待しています。
高橋:難民政策に関しては、日本の現状は0点。救いなのは、入管法廃案運動で若い方々が声を上げてくださったということと、ウクライナ問題から社会に広く影響が及んだ場合は、変化が見られると思うことが期待しています。また、収容についても現状の制度や運用は0点です。人権外交というからには、改善が必須でしょう。入管に関しても、人権の面から誇れるような運用と制度を持って、世界に示していくようになって欲しいです。
小川:国連から定期的に日本の人権状況について審査を受けているが、そこで出されている勧告はずっと変わっていないんですよね。そういう意味では、そこまで変わっているとは言えないかもしれません。一方で日本国内の人権運動を見てみると、分野にもよるが前進しているのではないでしょうか。進んでいる分野はさらに推し進め、進んでいない分野は、進んでいる分野とうまく連携して引っ張っていきたいです。ヒューマンライツ・ナウとしては、人権状況を見える化して社会に示していきたいです。
おわりに
支援者のみなさまのお陰で、ヒューマンライツ・ナウは設立から15周年を迎えることができました。改めてこの場をお借りして、お礼を申し上げます。
また15周年を機に、ヒューマンライツ・ナウは事務局体制を刷新し、より人権状況の改善や人権意識醸成に取り組んで参ります。新しくなったヒューマンライツ・ナウをぜひ応援してください!事務局体制の刷新を機に、新たなマンスリーサポーターを募集します! 目標は20名です!
ぜひこの機会に、ヒューマンライツ・ナウとの長期的なお付き合いをご検討いただければ嬉しいです。
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